8時に投票が締め切られた途端に、山中竹春氏の当選が確実になった。大規模な選挙、総選挙や参院選挙などでは、開票時間と同時の当確がでることはあるが、これだけ乱戦になった首長戦では珍しいのではないか。それだけ、山中氏の人気が高かったのではなく、菅首相の不人気が際立っていたということだろう。
8時22分に公表されたNHKのニュース記事では、既に山中氏が、小此木氏を倍以上離している。圧倒的な差がついたということだ。
私は横浜に住んだこともないし、学校や職場に通ったこともないので、よく分からないが、横浜の事実上の市長といわれる菅首相のお膝元で、しかも、長年の盟友である小此木氏が、大差で敗れるというのは、やはり、今後自民党における総裁選に影響せざるをえないだろう。
それにしても、今回の横浜市長選は、奇々怪々な様相を呈していた。
・現職の閣僚が辞職して、市長選に立候補したこと。国会議員が出馬した例はあるが、さすがに閣僚はなかったのではないか。
・しかも、小此木氏は、自民党が推進し、その推進の中心的リーダーであった菅氏のIR政策を反対の立場で立候補したこと。
・IR推進の現職林市長との間で、自民党の分裂が生じたこと。しかも、首相のお膝元でだ。
・他にも、知事経験者の立候補があったこと。
・市長選の争点が、市政に関するものより、菅首相への信任投票のようになってしまったこと。
しかし、混乱は自民党内だけではなかった。山中氏に対しても、本来ならば支持する立場になるはずのひとたちから、強い疑問がだされた。代表は弁護士の郷原氏で、山中氏を落選させる運動を展開した。それは、コロナ専門家という肩書が、まやかしであるということと、大学教授時代におけるパワハラ疑惑である。郷原氏は、そのパワハラ場面の録音をネットに公開するまでに至っている。郷原氏や他の人も、推薦政党である立憲民主党や共産党に、質問状をだしたようだが、まっとうな回答はなかったという。郷原氏の文書を怪文書扱いした立憲民主党の議員もいたとされる。
コロナ専門家はともにかく、パワハラ疑惑は、当選後に、喉元の刺のような役割を果たすかも知れない。
郷原氏がネットにアップした文章かしたパワハラ場面と、その元の音声を一部聞いたが、私の立場としては、パワハラと認定されるべきだろうと思う。もっとも、パワハラというのは、日本では、極めて認定が難しい。理由は、いくつもある。
・おそらく、日本の組織では、パワハラは、特別な人が例外的に行う行為ではなく、管理職が部下を指導する場合、特に成果があまりあがらないときには、ごく普通に行われているので、多くの人が、慣れてしまっていること。
・パワハラの訴えをすると、多くの組織では、ハラスメント委員会に付託して、調査するのだろうが、多くの場合、実際に調査をする委員は、比較的若手が多く、訴えられた人よりも、職位が低い場合が多い。したがって、上司を不利にするような認定をなかなかしにくい。
山中氏は、教授だったわけであり、しかも医学部という、統制的な色彩の強いことが多い学部だから、自分で意図していなくても、パワハラ的な行動をとっていた可能性はある。そうしたことが、蒸し返される危険があることを、忘れるべきではないだろう。かつての職場で、パワハラ体質であったとすれば、市長として似たような振る舞いをしないとも限らない。そういうことで、市長としての職責を果たせなくなることがないように、と願いたいものだ。
ちなみに、IRを横浜が誘致することがなくなったのは、いいことだろう。更に、誘致自治体がなくなれば、もっとよい。いかに取り繕っても、日本の観光業としての健康な発展をもたらすものでは、絶対にないと思う。
オリンピックや万博のような、大規模な催し物で観光客を呼び込むのも、麻薬のようなものだし、カジノは、麻薬そのものだろう。京都は、何もなくても、観光客が訪れる。そうした観光こそめざすべきなのだ。