またまた、菅首相が話題作りに協力した感じだ。こともあろうに、広島の原爆投下の日に開催される平和記念式典で挨拶したおり、一ページ分を飛ばし、更に別の部分も読まなかったというのだ。私はテレビを見ていなかったので、記事によって知るしかないが、飛ばした部分と読まなかった部分を、両方掲載している記事がなかなかないので、以下のふたつの記事を引用しておく。比較的詳しく解説しているのが、次の記事である。
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【広島平和記念式典】菅首相が読み飛ばしか。NHKの字幕は「核兵器のない世界の実現」と表示も首相は話さず
菅首相は「非核三原則を堅持しつつ」と日本の立場を説明する場面で、核軍縮の進め方をめぐる各国の立場の違いへと話を変えてしまい、意味が通らなくなった。
* 安藤健二
原爆投下から76年目の8月6日、広島市の平和記念式典に出席した菅義偉首相のあいさつで意味が通らない部分があったと話題になっている。
■意味が通らない部分は?
菅首相は「非核三原則を堅持しつつ」と日本の立場を説明する場面で、核軍縮の進め方をめぐる各国の立場の違いへと話を変えてしまい、意味が通らなくなった。地元紙・中国新聞のオンライン版は「用意していた原稿を読み飛ばしたとみられる」と速報で報じた。
あいさつの該当部分は以下の通り。
「広島および長崎への原爆投下から75年を迎えた昨年、私の総理就任から間もなく開催された国連総会の場で、ヒロシマ・ナガサキが繰り返されてはならない。この決意を胸に日本は非核三原則を堅持しつつ、核兵器のない核軍縮の進め方をめぐっては各国の立場に隔たりがあります。このような状況のもとで核軍縮を進めていくには……」
■NHKの字幕では「核兵器のない世界の実現」という文章が表示されていた
NHKの中継映像では、首相の発言と字幕が異なっていた。字幕では「核兵器のない世界の実現に向けて力を尽くします」と世界に発信するという内容になっていたが首相は話さなかった。
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この記事は、読みとばしてしまったために、意味がわからなくなった部分の解説である。これは1ページ飛ばしたということだから、紙をめくるときに、2ページ一緒にめくってしまったと考えるのが、合理的だろう。そういうことは、まあ、たまにおきることだ。意図的に飛ばしたという可能性もあるが、暑いし、疲れているから、ミスだったとして、そこは問わないことにしよう。しかし、報道では、実際にある文言を読まなかった部分があるとしている。それを解説した記事の一部を引用する。
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首相はほかに「『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要です」とのくだりも読まなかった。https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2021/08/06/kiji/20210806s00041000208000c.html
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ここは、読まなかったというのだから、明らかに意図的であり、故意と考えざるをえない。もちろん、こういう文章を菅首相が自ら執筆するわけがないので、官僚かあるいはスピーチライターが書いたものだろう。当然、通常は彼らが書いた文章を、実際に菅首相が読んで、チェックするはずである。しかし、私の推測では、菅首相は、そうしたチェックをあまり厳密にしないのではないだろうか。そもそも、広島の平和記念式典は、いやいや出席しているに違いない。原爆被害や平和の問題など、あまり興味がないはずだ。彼の普段の言動をみればわかる。本当に平和主義者であれば、IR推進者などにはならない。そのように断言できる。
だが、事前のチェックはおろそかにしたとしても、広島に向かう車中とか、あるいは、自分が挨拶する順番を待つ間に、原稿を黙読していただろう。そこで、自分が、「核兵器のない」世界の実現に向けた努力を着実に積み重ねる、などということを、言うのはまずいと思ったに違いない。だから、ここは、はっきりと、明確な意志をもって、飛ばしたのであって、忘れたのではないし、またミスでもない。むしろ、核兵器の必要性を考えている菅首相としては、後々こんな発言をしてはまずいと思ったのだろう。もし、本当にこの文章のように思っていたとしたら、核兵器禁止条約等にもっと前向きに対応するはずである。それにしても、菅義偉という人物は、自分の「演説」をどのように考えているのだろう。歴史に残るような名演説をするなどということは、まったく考えていないのか、とにかく、棒読みする官僚の作文も、味気ないものばかりだ。
なお、実際に行った挨拶の全文は、以下のところに掲載されている。