コロナでの入院を重症患者を原則にするという政府の決定に関して、既に問題山積している。
まず、分科会の尾身会長に連絡がいってなかったことが明らかになった。菅首相は、何か困ると、必ず専門家を引き合いにだす。GOTOキャンペーンのときにも、専門家によれは、GOTOとコロナ感染の関連を示すエビデンスはないと、専門家を楯に、GOTOを強行した。しかし、その結果第二波の大きな感染が起きてしまった。当時、尾見氏らですらも、GOTOの危険性を指摘していたにもかかわらず、である。
しかし、今回の大きな方針転換、というよりは、対策放棄というべきだが、コロナ対応について議論する専門家の分科会に、まったく諮ることなくことなく、ごくわずかな人間で決めたらしい。一月万冊に主演していた佐藤章氏の情報によれは、厚労相の医務技官のトップの二人で案をつくり、それを菅首相と田村厚労相が了承して決めたというのである。しかも、その理由が、感染爆発で、各地の保健所が機能不全になり、批判に晒されたることを恐れたというのである。現在のような入院調整に手間どり、入院する必要があっても、入院できない患者が激増したら、保健所が非難される。しかし、重症に入院を限定しておけば、入院調整ができずに、放置されているという「形」にはならず、保健所が批判されないというわけだ。そして、重症化しているか、あるいはその恐れがあるかは、血液中の酸素濃度95%を基準にするという。つまり、こういう単純な基準にしておけば、入院させるかどうか、などという面倒な調査か不要になる。
では何故、保健所が非難されるとこまるのか。保健所は削減の対象となっていて、非難によって更に削減が進行するとこまる、なぜか、それは、厚労省医系技官の天下り先だから。
これが、佐藤章氏の取材結果である。本当かどうかは、今後に待つしかないが、尾見氏にすら、まったく連絡せずに、唐突に決めたという経緯を考えると、ありそうなことに思われる。
次に、この方針転換は、まったく矛盾した内容をもっており、実現不可能であることが明白である。入院制限をするが、軽症、中等症に対しては、在宅看護や訪問医療などで対応するから大丈夫だというのが、菅氏の説明である。確かに、現在はかなりの治療薬が確認されており、そのために、重症化や死亡がかなり抑制されているといえる。
(コロナ治療薬のまとめサイトhttps://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/ 参照)
しかし、これらの治療薬は、入院治療で使われているのであって、外来の開業医などでは、使うことが、現時点では認められていないのである。それを、医師たちは、外来の医療機関でも使えるように認可し、かつ、治療薬をまわしてほしいと嘆願している。そうしないことに対して、コロナ治療に献身し、テレビによく出演する倉持医師は憤っていた。そうした状況なのだから、往診する街の医師が、自宅療養している患者に、そうした治療薬を投与することは、現在ではほとんど不可能なのである。もちろん、それを緩和することは考えられるが、そのためには、ルールの改定だけではなく、薬品は配布なども、かなり計画をしなければならない。ワクチンで大混乱が生じているが、同じようなことかおきるに違いない。
更に、日本の医療状況では、往診する医師は、極めて少ないのが現状だ。近くに往診してくれる医師がいたら、かなり幸運というべきだろう。しかし、その医師がコロナ患者の往診をしてくれるかどうかは、まったく別問題である。テレビで報道される、コロナ患者病棟の医師や看護婦は、完全防備の服装で対応している。そうしないと治療しているひとたちが感染してしまうからだ。この暑さのなかで、あのような完全防備が可能なのは、冷房が効いているからだろう。しかし、往診となるとそうはいかない。あのような服装で車に乗り込むことはできないだろうし、また患者の家についたあと、着替えるなどということは、とうてい無理だろう。ということは、もし、本当に往診する医師がいるとすれば、感染の危険が大ということになる。患者の家に何か届ける場合でも、ドアの外に置いて帰るのが通常で、直接手渡しなどしないのだ。つまり、往診によって、コロナ患者の治療をすることは、ほとんど空想的なことだ、と素人ながら考えざるをえない。
さらに、重症者に限定することは、コロナ治療対策として間違っているというのが、多くの医師によって主張されている。
それは、例えば、「抗体カクテル療法」は、軽症あるいは中等症の軽い段階で使うことで、有効性を発揮し、それで重症化を防ぐことを考えれば、軽症段階で入院させて、こうした治療をすれば、むしろ、問題が深刻になる前に、全体的な対策をとることができるというのだ。犯罪だって、軽い段階での更生は可能性が高いが、重大犯罪を犯すようになってからでは、更生がむずかしいと同じである。
ここまで午前中に書いて、他のことをやっていて、アップのために再度報道をチェックしたら、事実上、方針を変更したという。つまり、田村厚労省は、中等症も入院とするようにというのだ。
(「中等症も原則入院対象と明確化 政府、療養方針の資料を修正」産経新聞8.5 )
これは、前と同じだ。それで、変更ではない、などと強弁しているようだが、何をか況んやだろう。もちろん、事実上撤回したとすれば、それはいいことだ。しかし、だからといって、医療の改善のために、一年以上いわれ続けてきたことをやろうという方向に転換したわけではない。中等症も入院だといっても、実際には入院できないほど、患者があふれてしまって、入院調整中が1万人をこえているのだ。調整中とは、入院が必要だが、受け入れ可能な病床がないので待っているということだ。様々な方法があるだろうが、少しでも入院可能な状況を作ることが政府がやることであるのに、それをせずに、入院させてない対応をしようとしたのが、今回の方針転換だった。やることが逆である。