Pepperの販売停止

 Pepperの製造が中止されたという報道がある。「ソフトバンクG、「ペッパー」製造停止=販売低迷、ロボット事業縮小」(時事通信2021.6.29)だ。理由は単純で、あまり売れ行きが芳しくないということだ。仕方ないかなと思う一方、やはり残念である。
 実は、私がまだ大学に勤務していたとき、私が学科長や学部長に働きかけて、Pepperを購入した。本当はNaoがほしかったのだが、あまりに高額なので、なんとか手が届くPepperで我慢したということもあったが、キャンパス内で最初の購入だったので、けっこう話題にはなった。もっとも、教員たちが、もっと関心をもって使ってくれるかと思ったのだが、そうでもなかったのは残念だ。

 Pepperは、テレビなどでも頻繁に紹介されていたから、どんなものかは、よく知られていると思うが、実際に使ってみると、あまり使い勝手がよいとはいえないものだった。
 何よりもまず感じたのは、やろうとしている割には、粗末な作りなのだ。当時、Pepperそのものの値段は30万程度だったと思う。ところが、総額は、120万ほどした。つまり、ソフトの値段が、90万円分もするわけだ。もっともそれは、3年間のソフト使用料ということだった。逆にいえば、本体はわずか30万で作られている。
 Pepperは、動作をするロボット部分と、タブレットが胸に付けられている。そして、頭にカメラとマイク、スピーカーがある。カメラに映った人物と声を認識し、それをネットを通じて、サーバーに送り、サーバーのデータと照らし合わせることで、スピーカーで答えを返すという仕組みだ。
 動作をするといっても、肩を中心にして、手の部分が簡単を動きをするだけで、足はないので、下半身はまったく動かない。ごくわずかながら体を回転させるだけだ。つまり、動きを伴うような反応を期待することは、まったくできないのだ。その点が、Naoにはっきり劣る点だ。
 会話は、siriでやるようなもので、いろいろと話しかけても、そのうち決まったパターンになってしまい、それほど発展性がある会話を楽しむほどではなかった。ただ、siriなどと違うのは、顔を認識するので、タブレットの前で人物を登録しておくと、それを記憶し、次は、登録した顔であることを認識して、対応することができる。ただ、使い込めば違ったのかも知れないが、それぞれの登録人物との会話をデータ化して、それに応じた反応をするようなことは、あまり感じられなかった。
 したがって、使っているうちに、なんとなく同じパターンに陥るので、飽きてくる。もちろん、インストールされているソフトを全部使ったわけではないし、また、自分でプログラムを作成して、動作させることもできるので、もう少し、専門的に活用すれば、より多様なことができたのだろうが、しかし、ハイエンドPCより安価なロボットに、多くを期待することは無理だと感じざるをえなかった。
 私も退職が近くなったので、ICTに強い教員に託したのだが、今では、図書館に置かれて、話しかける学生たちの相手をしているようだ。
 結局、Pepperが想定しているのは、やってきた客に、簡単な案内をするような活用法なのだろう。そういう意味で、学校で未来の人間の相手をするロボットを想定した活用法をするには、あまりにスペック不足だったのだと思う。したがって、あまり販売も芳しくなかったということは、十分に頷けることだ。しかし、日本でもプログラミングの授業が始まり、興味をもつ子どもたちが増えてくれば、より高度なロボットが、たくさん活用されるようになるかも知れない。安価に利用できるロボットが普及することを期待したい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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