「100万円プレミア五輪チケットがセレブ向けに『大売出し』の怪」という記事が目についた。NEWSポストセブン(2021.6.18)の記事である。豪華お食事付きのチケットは、既にかなり売られているらしいが、キャンセルできなくてこまっているという内容から始まり、新たにそうしたチケットが売られているというのだ。今売られているものの値段はわからないが、かつて売られていたこの手のチケットの最高額は、635万円だそうだ。チケット販売の窓口に確認したところ、売り出していることは間違いないとのこと。
感染症の専門家たちが、やることに反対し、しかし、どうしてもやるなら無観客でといっていたことを考えれば、こうした豪華食事、パーティ的もてなし付きのチケットを、今現在実際に売り出しているというのは、まったく驚きだ。私は、そのうち、海外の客もやはり、例外的に認めようといいだすのではないかとさえ疑っている。
とにかく、この東京オリンピックは、嘘にまみれているのだ。招致活動の際に、福島の原発事故は完全にコントロールされているとか、復興五輪だなどというのが、まったくのでたらめであることは、冷静に考えているひとたちにとっては、最初から驚きだった。よくもこんな嘘を付けるものだと。
今年にはいっても、オリンピック選手に優先的にワクチンを接種することは考えていないし、今後検討することもない、とオリンピック担当大臣が明言したことは、覚えている人も多いだろう。しかし、現在では、オリンピック選手だけではなく、大会関係者、一部のボランティアにも、優先接種をすることになっている。実際に一部始まっているだろう。もちろん、どうしてもオリンピックを開催するのならば、少なくとも選手や大会を運営するひとたちが、ワクチンを接種していなければ、外国からくる選手たちから抗議がだされて、対戦拒否される可能性だってあるし、とくにボランティアなどは、ほとんど暑さ対策も、また、コロナ対策もなされないという計画だったから、ワクチンを接種することに、反対する国民はいないだろう。しかし、だからといって、嘘をついていいわけではない。オリンピック運営者たちの体質を考えてみれば、「検討すらしない」などといっているときに、既にこれが嘘であることは、ばればれだった。
観客も、当初は、組織委員会は無観客で行う意向をつよく感じさせていたが、今では、観客ありが「当然」のごとくにいっているし、しかも、上限を少しずつあげている。
これほど、日本だけではなく、世界的にもコロナに苦しんでいる状態で、オリンピックを中止するように、強く迫られた菅首相は、自分には決定権はなく、決定はIOCになるから、重要な決定はできないといいつつ、無観客を当然視していた社会の雰囲気に対して、率先して観客をいれる検討を指示して、そうした方向に強く誘導しているのは、菅首相であると言われている。そして、できるだけ拡大した数値、あるいは、あいまいなままでの有観客の線で、オリンピック・パラリンピックの五者会談なるもので、決めるようにリードするのだろう。菅首相の嘘は、サミットでオリンピック開催に支持を得たと大げさに発表していることも見逃せない。そもそも、協調国の話し合いで、オリンピック担当国家の首相が、ぜひやりたいといえば、反対するはずがない。それにもかかわらず、バイデンはかなりの注文をつけたし、メルケルは、話をしなかったと言われている。極めて消極的な同意であることは、オリンピックに通常は多数の首脳がやってきて、首脳外交を繰り広げるのが常だが、現在来日を予定しているのは、フランス大統領のマクロンただ一人である。マクロンは次回開催地の首脳だから、閉会式にはいなければかっこうがつかないから来るのだろう。
嘘は、そのいいわけのために、どんどん大きな嘘をつかざるをえないというのが、よくあるパターンだ。森友問題の推移をみれば、それが実によくわかる。
では、今後どんどん大きくなる可能性のあるオリンピックの、これまでの約束の反故はなんだろう。予想されることをいくつかあげておきたい。もちろん、そうしたことが起きなければ、かえってよいのだが。
・観客数の1万人制限を撤廃。どこまで人数を増やすからわからないが、とにかく、もっといれるようにするに違いない。
・ワクチン接種を条件に、海外の観客もいれる可能性がある。おそらく、まだ購入チケットの代金を返金していないはずであるから、チケットは有功になっている。
どうしてそうなると考えるのか。それは、人数増を促す要因があるからだ。もっとも単純には、それによって、少しでも収益をあげようということがあるが、それだけではない。まず、スポンサー招待客の存在である。スポンサーには、割り当てられたチケット分がある。それは、なんらかの形で、配布されている。いわばスポンサーとしての特権である。この数がどのくらいかわからないが、多くは無料配布されていると考えられる。そして、その分を無効にすることは、かなり難しい。スポンサー契約のなかに、おそらく盛り込まれているはずだからである。すると、無料で配布されたスポンサーチケット所有者が、オリンピックを観戦できるのに、高いお金をだして購入した人を断れば、かなりのクレームが寄せられることは、当然予想される。訴訟でも起こされたらこまる。
それから、80万枚と言われる子どもたちの観戦である。これは、最初希望をとり、また、延期になって以降、再度希望の確認がなされている。その時点で断った学校も少なくないようだが、断っていな学校もまだたくさんある。2度の希望をとって、希望をだしたのに、そして、観客をいれることになっているのに、この分を無効にすることは、これまで散々オリンピック教育をやってきた手前、子どもたちを裏切ることになる。これらは、一般販売とは別枠だし、マイナーなスポーツへの割り当てやパラリンピックの観戦希望が多いはずである。
そして、スポンサー招待分は、海外分もあるはずである。コカコーラが、日本人だけを招待しているはずがない。とすれば、そこで海外の客を容認することになる。それが伝われば、まだ返金すらされていない海外のチケット所有者が、認めろという強い要求をだす可能性がある。日本人よりも、もっと訴訟の可能性が高いだろう。
こうして、観客はどんどん制限を弱くしていくに違いない。そうすれば、それだけコロナ拡大の可能性は高くなるのは明らかだ。
・選手や大会関係者、メディア関係者の行動規制の事実上の放棄。
コロナ拡大の防止に、水際作戦が必須であることは、世界の常識である。日本のような島国は、水際作戦がやりやすいにもかかわらず、ルールがザルであることは、つとに指摘されている。徹底してホテルに隔離することをせず、行動計画をださせ、アプリで居場所が追跡できるようにするシステムをとっているというが、アプリで追跡できない人が多数でていることが報道されている。当たり前だろう。スマホの電源を切ってしまえば、追跡不可能だし、スマホをふたつもてば、実際には、外出して自由に観光していても、ホテルにずっといるように見せかけることは、簡単にできる。もともと、実施不可能なルールによって規制しようとしている。オリンピックに関連しても、同じことが起きることは確実である。しっかり管理して、安心・安全を図るなどというのは、もともと不可能なのだから、事実上、規制ルールが事実上消滅していくし、見苦しいいいわけが、橋本会長あたりから、だされるだろう。
既に指摘されているように、飲食店が、酒類をだすことに大きな制限を課しているのに、選手村では酒類の持ち込みが可能になっているとか、大量のコンドームが無料配布されるとか、国民を呆れさせることが明るみにでている。おそらく、このことが撤回されることはないだろう。そもそも、選手は選手村に入ることを義務づけることは可能なのだろうか。オリンピックに出場するトッププロたちは、選手村として容易されているような条件のホテルには宿泊しないだろう。オリンピックのときだけ、我慢するとは思えない。ホテルに泊まることを許さないなら出場しないというプロ選手たちが、たくさん出てくるに違いない。トッププロが参加拒否したら、盛り上がらないから、では、ワクチン接種証明で許可しよう、などということになりかねない。
とにかく、プレイブックなるルールは、厳しくなる傾向があるようだが、実際の運用は緩やかになることは、疑いない。しかも、そのような厳しいルールなど、守らせようがないのだ。