読書ノート『レコードはまっすぐに』ジョン・カルショー

 かつてのレコード会社デッカの伝説的な名プロデューサーのジョン・カルショーの自伝『レコードはまっすぐに』を大急ぎで読んだ。レコード会社内の複雑な人間関係や、制作をめぐる経営者との駆け引きなどが、生々しく書かれているが、そういう点にはあまり興味がないので、私のように音楽に興味をもって読む人間には、同じようなドタバタが繰り返されているような印象しか残らない。興味をもって読んだのは、有名な音楽家のレコーディングの様子やそこでの「事件」だった。特に、印象的なものを記しておきたい。
 今は比較的注目されていれば、国際的に有名ではなくても、CD録音されて市販されるが、LPレコードのころまでは、やはり、相当な知名度がないとレコーディングの機会はなかった。だから、1970年代くらいまでに録音され、かつ今でも現役のCDとして市場に出ているような音楽家は、本当に優れたひとたちだったといえる。そして、そういうひとたちの録音にかける意気込みは、非常に厳しいものがあると、まず感じる。もちろん、カルショーはそれを常に積極的に評価しているわけではなく、かなり皮肉を込めて書いている場面もある。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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