森元東京オリンピック組織委員会会長の女性差別発言以来、日本の女性差別が酷いことが度々問題にされるようになってきた。そして、大学入試が終わり、進学年度が開始されたからだろうか、大学という世界における女性の比率が低いことが話題になっている。そしてその極端な例として、東大では、教員の9割、学生の8割が男性であることが議論となっている。東大としても、とくに管理職などで女性を積極的に登用する動きが顕著になっているようで、それはそれでいいことだろう。
ただし、教師や学生を、意図的に増やすということにまで進むと、むしろ逆の問題を生じさせる可能性がある。現在でも、助教を女性に限って募集されるようなことがけっこうある。研究職だから、当然実力がある人を雇うべきであり、募集そのものを女性に限るというのは、あまり賛成できない。しかし、広範囲に行われているわけではなく、限られたポストでのことだから、女性研究者にインセンティブを与えるという意味では、効果があるかも知れない。
しかし、入学定員を男女別に決めるという意見もあるようで、それについては、かなり問題である。というのは、歴史をみればわかるように、男女別定員を廃止してきた事実があり、それこそが民主主義的で平等だという考えに支えられていたことを、重視する必要があるからである。
戦前は、義務教育の小学校のみが男女共学で、中等教育以上は原則男女別学であり、しかも、高等女学校は、男子の中等学校よりも年限が短い、一段下位の教育機関だった。そして、官立の大学には、女性は極めて例外的な場合を除いて、入学することはできなかった。私立大学は途中から女子の入学を認めるところが多かった。
戦後は国立大学も、男女共学になったが、公立の高等学校は、地域によって異なる対応がなされた。これは、占領軍の担当者の考えが違っていたためだと言われているが、関東以北では、男女別学の県立高校となり、(中等学校と高等女学校がそのまま男女別学の高校になった)関東以西では、男女共学の高等学校となった。ただし、注意すべきは、多くの男女共学の高校でも、定員が男女別に決められていたのである。私が応募していた高校は、男女比が3対1だった。しかし、戦後かなり経過してからだと思うが、この男女別定員が廃止され、男女に関わりなく、上位から合格させる制度になった。共学の大学は、当初から男女別定員は設定していなかったはずである。
つまり、男女別の枠は、平等に反するこということで、撤廃されてきた歴史を見過ごすことはできないのである。実際に、進学率をみれば、男女差は、それほどないことがわかる。
平成30年(%)
高校進学率 女 96.8 男 96.1
4大進学率 女 49.1 男 55.9
短大進学率 女 25.9 男 19.1
大学院 女 8.6 男 14.9
つまり、全体的な進学率は、それほど差はないのだ。東大に女子学生が少ないのは、何故か。それは、おそらく、東大に進むインセンティブが低いからだろう。そして、そのことの要因は、浪人までして東大にいく必要はない、東大を卒業したことでえられる社会的地位をそれほど望んでいるわけではない、等々。理由は様々だろう。ただ、明確なのは、東大側で、女子の入学を制限したり、あるいは、入試で女子を不利に扱っているということは考えられないことだ。
したがって、これは大学の入試システムの改革ではなく、社会の側の受け入れ側の改善や、高校での進学指導などによる改善によって、変えていくことなのではないだろうか。