西村宮内庁長官から要請があった「説明責任」に応じる文書が、長文の弁明書としてだされた。ホームページで一般公開されているので、読んでみた。とにかく長いだけではなく、大量の注がついており、いかにも読みにくい。弁護士になるための勉強をしている雰囲気がよく出ているのかも知れない。宮内庁長官は自分の要請に応えてもらったためなのかはわからないが、えらく高く評価しているという報道がなされている。しかし、小室問題に関心をもってきた国民が、これを読んで、「納得した」という人は、ほとんどでないのではないかと思う。国民は、納税者として、天皇(当然皇室も相当する)は、憲法的に「国民の総意」に基づくとされる存在として、この問題に関心をもたざるをえないのだが、そういう立場からすると、小室氏がここで詳細に記述している「借金・贈与」は、問題のひとつに過ぎず、むしろ、今や小さな問題ですらあるということが、まったく理解されていないようで、「失望」を増幅せざるをえないものだったというのが、率直な感想だ。
まず、詳細に弁明がなされている「借金・贈与」問題についても、説得力はあまり感じない。一読した限りだが、彼の主張の要点を整理すると
・報道が出たとき、複数の弁護士に相談したら、何もしないほうがよいと言われた。
・解決金を渡して、解決した方がよいと一時は考えたが、お金を渡してしまえば、借金であるとされてしまうと考えた。これは名誉の問題だから譲れない。
・母と婚約者の婚約が解消されたときに、お金の件を話し合ったが、そのとき「返してもらうつもりはなかった」と元婚約者がいったが、それは録音してある。しかし、11カ月後に突然返してほしいという手紙を受け取ったが、その後は何もなかったので、解決したと判断していた。
・借金ではないのなら贈与税を払うべきだということもあったので、贈与税は納付してある。
・元婚約者は、母と直接話したいといっていたが、論点整理ができないので、弁護士との話し合いになった。元婚約者の代理人として、記者がでてきたが、弁護士法に違反すると考えたが、受け入れた。
・これまで「借金」であることは否定したが、「贈与だ」と主張したことはない。
・一連の報道は、母に対する報道は、プライバシーの侵害の可能性がある。
「借金」が名誉にかかわるというのは、感覚的に理解できないが、元婚約者の感覚は、小室氏の文書からも、想像できる。近く結婚するのだから、できるだけ必要な費用は「おっと、ちちおや」としてだしてあげよう。しかし、どうも、かなりの出費があるということで、無理になり、いかなる理由かはわからないが、結婚は無理だと思って解消し、そのうち、自分の経済状況が芳しくなくなってきた。以前は、返す必要がないと思っていたが、今となっては、多少とも返してほしい、そんな気持ちだろう。別に不思議な点はない。もし、小室家側に、まともな人間性があれば、全額ではなくても、可能な限り返済するだろう。しかし、話し合ったときに、将来の証拠にするつもりだったのか、録音までしている。そういうやりかたに、多くの人は、違和感を感じるものだ。
そして、週刊誌によって問題が、公表されてしまった時点で、小室家側はすぐに弁護士を依頼して、弁護士をとおしての話に固執している。経済的に苦しくなった元婚約者としては、弁護士をたてる費用などないし、個人として、相手の弁護士に渡り合うのは、かなり不安である。だから、母親と直接話したいというが、どうも弁護士が前面に出てくる。仕方ないから、取材にきている週刊誌の記者に仲介を頼んだら、弁護士法違反だ、などと対応をとられる。最終的には受け入れたとされるが。
こうした一連の流れをみれば、人間同士として解決しようという姿勢を、ほとんど感じられず、何か、法律論で説明できれば、それこそが問題の解決だというように感じる。そういうやりかたは、私の感覚では、多くの日本人にはなじまないと思う。だから、結婚に反対する人が多いのだろう。
そして、もっとも強い疑問を感じるのは、国民の多くが、この結婚に反対する理由は、借金問題だけではなく、むしろ、この2,3年の間にとった「姿勢」そのものと、小室家に起きた遺産相続の際の、元反社会的とされる人物に仲介を頼んだとされること、そして、小室氏の父親、祖父母の自殺という事態の不可解さについてである。これについては、確かにプライバシーかも知れないが、報道されている以上、そして、「公人」に準ずる立場になる以上、国民にとっては注目せざるをえないことであろう。それに対して、まったく言及することがないことは、不信感を強めることにならざるをえない。
さて、現在、皇位継承問題について、政府任命の会議での審議がはじまっているようだ。もっとも、論点整理をする程度らしいので、明確な結論などでないのだろうが、(つまり、放置する結果になるという可能性が高い。本当に皇位継承者がいなくなるなどというのは、数十年後のことなのだから、危ないことに手を出したくないというのが、今の政治家たちの本音かも知れない。)とにかく、皇女制度などをつくることはやめてほしいし、宮家が創設されて、小室氏が宮家の一員になるなどということもやめてほしい。唯一適切な改革は、小泉政権で合意された内容の復活である。男女平等の長子相続である。
小室氏と真子内親王の結婚は、私事であるから、したければどうぞという以上のものではない。1億5千万円ともいわれる準備金には、不快感を禁じ得ないか法律上決まっていることなら、国民が反対しても、支払われることになるのは、仕方ないだろう。ずるずると延ばして、宮家などになるのではなく、早く結婚して皇室を離脱してほしいと願っている。