読売新聞(2021.3.12)によると、試験に欠席した受験生に合格通知が届き、出席して合格点をとっていた受験生は不合格になっていたという。そうしたミスが生じたのは、合格点をとっていた受験生が、間違った席に座ったために、その席の受験生が合格になり、合格の受験生は、自分の席に座らなかったから、欠席扱いになって不合格になったのだろう。大学としては、合否をただし、それぞれの受験生に謝罪したという。北九州市立大学文学部比較文学科でのできごとということで、大学は、「大学全体の信頼を損ねるもので、深く反省している」とした。そして、試験監督の確認が不十分で、ミスに気づかなかったということが、原因とされている。
しかし、昨年まで大学に勤め、何度も入試監督に付き合ってきた者としては、どうも大学の謝罪の内容は、腑に落ちないのである。これだと、その教室の監督をしていた教員が、ミスをしたことになるから、何らかの処分でもされるのだろうか。処分はさておき、私自身の経験から、違う席に座っていた受験生を、本人が正しいとしているのに、監督の教員が気づくのは、なかなか難しいのではないかと思うのだ。
通常、机には、受験番号票が貼ってあり、その番号と自分の受験番号を照合させて、受験生は自分の席につくわけだ。そして、試験監督は、何度か、自分の席に座っているかを確認してほしいと注意をする。その注意をこの受験生はきかなかったことになる。もちろん、試験監督は、試験中に、机の番号と、受験生がもっている受験票の番号を確認するが、見にくい位置に置いてある者もいるし、そういう場合、試験中だから、声をかけて、わざわざ受験票の位置を置き換えさせることは、躊躇しがちである。また、見える位置になっても、小さな文字で書いてあるから、高齢者の多い大学の教師には、見えづらいことも少なくない。結局、受験生を信じるのが基本になる。私が監督した会場で、自分と違う番号に座っている受験生は、一度も経験したことがない。それくらい座り間違いなどはないものだし、受験生が、確認せよと言われて、確認したあと、動かなければ信用するのが普通だ。
それより、不可解なのは、答案用紙には、必ず受験番号と氏名を書く欄がある。そこに、まさか、受験票の番号ではなく、違う席の番号を記入するとは思えない。受験番号がきちんと書かれていれば、何も問題は起きないはずだ。記述式問題で、手採点は当然として、マークシート方式でも、問題なく処理されるはずである。マークシートの採点では、答案用紙の順番が違っていても、問題ではなく、正しい番号の順番で処理されるはずである。
もちろん、入試のときには、出欠を厳密に記録するから、出欠の記録と、答案の番号が異なることになり、採点段階でどちらかが間違っていることがわかるはずである。そのときに、きちんと処理されないはずがないのだ。
だから、どうもミスが起きた原因が、公表された内容ではおかしいと思わざるをえない。
それから、ミスがわかったのは、おそらく欠席したのに合格通知を受け取った受験生が、良心的に大学に届けたからだろうが、もし、おかしなこともあるものだとは思いつつ、放置していたら、合格していたはずの受験生が、そのまま合格になっていたわけで、それが恐ろしい。