皇族の結婚 毎日新聞が識者の見解を掲載しているが

 真子内親王と小室圭氏の結婚問題は、昨年、秋篠宮が親として結婚を認める発言をして、更に、真子内親王が、結婚は生きるために必要なことだというような趣旨の文章を発表することによって、進むかと思われたが、宮内庁の長官が、小室氏に説明責任を求める発言をして、またまた停滞感が漂っているように見える。久しぶりだと思うが、毎日新聞が識者なるひとたちの見解を並べて掲載した。
 山猫総合研究所代表取締役の三浦瑠麗氏
 大阪大学客員教授の津田大介氏
 政治史研究者の君塚直隆氏の3人である。
 少しずつ論点が異なっており、三浦氏が、基本的に本人の自由で、外野がとやかくいうようなことではないというのが趣旨だ。小室氏が、金銭や名誉欲で結婚しようとしているという、「男性が女性を養って当然」というような価値観からの批判だと、それに対して違和感を呈している。皇族との結婚によって、プライバシーがある程度さらされることはやむをえないが、基本的には、他人の結婚には干渉すべきではないと述べている。

 津田氏は、この結婚に対する主な批判者は、SNSでの「オンライン排外主義者」であり、全体の6~7%程度のひとたちだとする。一時金という問題はあるにせよ、自由に育てる家風なのだから、尊重すべきだ。天皇や皇族という立場と生身の人間の間にある問題をもっと考えるべきだというのが、津田氏の見解である。
 君塚氏は、週刊誌などが報道しているわりには、国民の多くは関心をもっておらず、それには宮内庁の情報発信が少ないためだとして、ノルウェーやイギリスの例を紹介している。最後に、女性皇族の結婚で皇籍離脱が続くと皇室の維持が困難になるが、皇室をどのように社会のなかに位置づけるのか、政府は議論を提起すべきであるとする。
 どれだけ、語った部分が、正確に紹介されているかはわからないが、大新聞の記事らしく、問題にはっきりと切り込むことが、ほとんどない内容である。君塚氏のように、「皇室をどのように位置づけるのか」という問題を提起するならば、それに関する自説を述べるべきであって、「政府に議論を提起せよ」などということで済ますのでは、「識者」として失格ではなかろうか。それに、このひとたちは、インターネット上で熱く語られている、この結婚に対する批判の文章を、本当に読んでいるのだろうかとも思う。7%程度の反対など、問題外だと言わんばかりの津田氏は、インターネットユーザー協会代表理事なのだそうだが、ずいぶんと、インターネット上の意見を軽視しているように見える。私は、もちろん、インターネットで拡散している見解に、必ずしも賛成ではないが、例えば、ヤフオクなどに書き込まれた意見の、ほぼ100%が、この結婚に反対を表明する見解であり、擁護する見解などは、ほとんどみたことがないという事実は、無視することはできないと思う。
 結婚は自由だろうという三浦氏の見解は、論外ともいうべきだろう。皇室の生活は、すべて国民の税金によって賄われており、中心である天皇は、日本国民の総意に基づくと憲法に規定されている。女性皇族は結婚によって、民間人になるといっても、実は、単純にそういう風に進んでいるわけではない。例えば、結婚を延ばしていって、女性宮家が創設されたら、宮家としておさまることを意図しているというような見解もある。そうでなくても、結婚後、「皇女」なる制度を創設して、真子内親王を「皇女」として、公務をすることでもって、生活を支えるという計画も語られている。つまり、この結婚は、個人の自由な意志に基づく結婚などとは、ほど遠いという現実がある。それを無視して、部外者がとやかくいうな、というのは、なんという「政治学者」だろうか。
 実際に、強い関心をもっている人は、少数だという津田氏や君塚氏の見解はどうなのか。おそらく、それは事実だろう。しかし、少数なら無視、あるいは軽視してもいいというのだろうか。問題を鋭く把握する人は、どんなときでもごく少数なのではないだろうか。
 現在の皇室は、かなり危機的な状況にある。多くの人は、天皇の後継者が現在二人であり、悠仁親王に男子が生まれなければ、皇統が絶えてしまうとされている。しかし、いま生じている皇室の危機は、皇統が移ることになる秋篠宮家は、そもそも皇族としての資格がないと断定するひとたちが、存在していることである。それは、根拠のないことではない。大嘗祭の費用の公費支出や額に異論を公然と唱える一方、自身の住居の改修に莫大な費用をかけることなどが批判されており、また、この結婚に際しても、当初祝福していたのに、諸事実が明らかになると否定的になり、かつ長期間放置して、何らか解決できない等、多くの尊敬される皇族らしからぬ面を見せてしまっている。宮内庁長官は、小室氏に対して説明責任を求めたが、むしろ、秋篠宮のほうにこそ、説明責任があるというべきなのである。
 かつて、皇室メンバーとして、大きな批判に曝された人がいた。現天皇が皇太子だったときである。皇太子夫妻に対する大きなバッシングがあり、皇太子は、皇室離脱して、秋篠宮に譲るべきである、とはっきりと主張する「皇室主義者」たちが少なくなかった。そのなかの代表的な論客だった西尾幹二氏は、いまどう考えているのだろうか。ネットで検索したところ、西尾氏がブログで次のように書いているのがわかった。
 
 「今日の秋篠宮家の話は秋篠宮殿下に訴えたいですよね。「どうなさったのですか」と・・・。「ご自分の娘さんのことだけなんですか、お考えになるのは、国民のことはお考えにならないのですか。」陛下にも言いたいですね。「畏れながら、どうなさったのですかと、お孫さんのことだけでおよろしいのですか。ずうっと進歩的と称されていたい天皇なんですか」と・・。そうお尋ね申し上げたいですね。しかしこの思いを実際には具体的にどこへ向けたらいいのでしょう。」嗚呼。https://ssl.nishiokanji.jp/blog/?p=2232
 
 かつて、皇統を秋篠宮家に移すべき、と主張して、当時の皇太子に向かって言い放った西尾氏ですら、こうして秋篠宮に対する失望感を示しているのである。この記事は、2017年の10月に書かれている。つまり、小室氏の父や祖父の自殺や「よからぬ集団との係わり」などを知って、このようなブログの文章になった。週刊誌で借金問題が報じられるのは12月だから、2カ月早いことになるが、これは皇族関係者から聞いたとブログには書かれている。つまり、9月の婚約発表会見から、比較的すぐに、皇族関係者には、あとで知られるスキャンダルは知られていたことになる。西尾氏はかなりのショックを受けたようだ。この記事を最後に秋篠宮家に関しては、ブログで書かれていない。したがって、かつての皇太子批判の誤りを認めたのかどうかは、不明である。責任感のある論者とも思えないので、触れたくないのたろう。
 ネットの意見はもっと厳しい。秋篠宮家は皇室離脱すべきであるという書き込みは多数あるし、また、秋篠宮が天皇になったら、皇室制度そのものが崩壊するなどと書く人も少なくない。たとえ、7%のひとたちであったとしても、無視できないのではないだろうか。
 この3人の識者には、こうしたことは見えていないのか、あるいは、見えない振りをしているのか、あるいは、知っていても、何をいっていいかわからないのか。
 少なくとも、国民のなかには、「天皇は日本国民の総意に基づく」という憲法の規定を、文字通りそうだと思い、総意として認めるかどうか、判断をする思考が形成されている。これは、民主主義の基本といえる。現在、日本の皇室制度は、本当に危機にあるのだと思う。私は、基本的には共和制主義なので、皇室が崩壊することをそれほど憂えてはいないが、ただ、現時点では、皇室が日本社会の安定に寄与しており、天皇一家が国民の尊敬を受けていることから、廃止せよと主張するつもりもない。しかし、タイ王室のようにならないとも限らないのである。
 3人の見解を、はっきりしないと書いたので、私の見解を明確にしておきたい。
 本人たちが強く結婚したいという意志をもっているならば、それは誰にもとめられないだろう。1億5千万円とも言われる公費支出は、好ましいとは思わないが、制度として決められている以上、認めざるをえないだろう。しかし、その後は、税金を小室夫妻には、一切使うべきではなない。皇女制度などは不要である。そもそも、現在の皇室による「公務」なるのものは、多すぎると考えているので、削減すれば、皇女制度などはいらない。
 皇室典範を、小泉内閣が準備した内容で改定し、長子の世襲制度に移行すべきである。
 
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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