石原氏の「上級国民」問題と、東京の感染減少を疑う

 石原伸晃氏が、濃厚接触の疑いからすぐにPCR検査を受け、陽性だったために即入院した。そのことが、少なくない非難をあびている。この点については、私は、あまり非難する気持ちはない。確かに、不公平感が強く出てきても当然だろう。一般国民は症状があっても、PCR検査を受けることがかなり困難になっており、しかたなく、自宅待機を余儀なくされる人が多数存在する。それなのに症状がない段階でPCR検査を受けられ、しかも、陽性とはいえ症状がない段階での入院が可能になっている。おかしいではないか。
 その気持ちはわかる。しかし、それが、石原氏が検査を受けること字体を批判したり、また、病院が入院させたことを批判するのは、方向性が違うと思うのである。むしろ、もっと容易にPCR検査を誰でも受けられるようにすべきであり、また、隔離施設をきちんと用意すべきなのである。隔離施設になる可能性がある施設は、たくさんあると言われている。ホテルばかりではない。公的な各種研修施設はたくさんあるし、(しかも、今はほとんど研修はされていないはずである。研修が必要でもオンラインで可能なのだ。)選手村だって利用可能だろう。そういう施設は、ちゃんと食事をつくる施設もあるのだ。PCR検査は、明らかに今でも公的な何かの力が制限している。そこに問題があるのだ。

 それから、上級国民云々については、やはり、国会議員というのは、国政を担っており、健康を維持してもらわねばならない存在である。石原氏個人がどうのこうのというよりは、国会議員や閣僚、そして、官僚のトップクラスの人たちは、健康保障に対して、特別な配慮が必要であることは当然のことだ。そういう人たちが、発病して入院したら、国政が滞る可能性がある。そういうことは、きちんと認識すべきではないだろうか。(石原氏がどれだけ国政に寄与しているかは、また別の問題として検討する必要はあるが。)
 
 むしろ気になるのは、ここ2,3日、東京の感染数が減少している点についてである。東京都は、22日に、濃厚接触者に対するPCR検査を縮小することを、各保健所に通知しているのである。とすると、これまで、行ってきたPCR検査が縮小されるのだから、感染者数が減少することは、当然である。つまり、昨日の感染者数が減少したからといって、また、今後減少していくといっても、実は、従来は必要とされてきたPCR検査の減少によるものだという可能性が消えないのである。今日、羽鳥のモーニングショーをみていても、(最後までみていたわけではないが)このことには、触れていなかった。ただ単に、減少してきましたね、などという話に終始していた。
 保健所は、濃厚接触者をつきとめて、最大限PCR検査を受けさせるという、これまでのクラスター対策をやめることについては、私はそうするのがよい考えている。しかし、その代わり、PCR検査を自由に受けられる機会を拡大し、民間が行っている検査も集約して、数値として換算すべきである。そして、そこでの陽性者に対しては、保健所が行った検査と同様の通知と措置をすべきなのである。その結果、自宅待機者が増えたとしても、それは仕方ないだろう。隔離施設を拡張する努力がなされている限りは。
 
 何故今、濃厚接触者のPCR検査を制限したのだろうか。もちろん、保健所の業務に支障がでているという点は間違いない。PCR検査の体制強化とともに行うのであれば、本当はもっと早く濃厚接触者ということで検査は、制限してもよかったのだ。しかし、今になってそれをしたということは、しかも、PCR検査の拡充はともなっていないのは、やはり、オリンピック開催をなんとかしたいということと、そのためには、早期に非常事態宣言を解除したいということだと、考えてしまう。それは邪推かも知れないとしても。
 本当は感染が拡大しているのに、検査を制限したために、数字上は減少して、オリンピックに突き進むというシナリオは、日本を本当の危機に陥らせることは、明白だ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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