杉田水脈氏は「発言」を認めたが

 自民党のお騒がせ議員である杉田水脈氏が、また物議を醸した。性的被害者の相談窓口を設けるための施策を議論する場所で、「女は平気で嘘をつく」と発言したということが、漏れてきて、非難轟々となったわけだ。これまでの話題に欠かない人だから驚きはしないが、その後の対応も相変わらずというところだろう。
 一応非公開の会合ということなので、詳細はわからないが、相談窓口に民間の施設をあてるということだったことに対して、民間でやっているだけでは、「女は平気で嘘をつく」から、もっと厳格に取り調べをする警察がやるべきだというのが、彼女のいいたいことだったようだ。また、これには、全く別の推測をする人もいて、それによると、民間の施設であれば、当然それを後押しする議員がいるわけで、一種の利権が絡んでいる。だから、利権派が、民間施設という利権を守るために、杉田氏の発言をリークしたというのである。真相はわからないが、いずれにせよ、そこに、一部の真相があるとしても、発言そのものの不当性は変わらない。

 水田氏の特徴は、こうした完全に超保守的な男性社会の感覚に応ずる発言をすることであり、かつ、度々物議を醸すわけだが、その真意を問うための記者会見等には、まず応じない。今回も、記者に囲まれたが、ブログで説明するといって、逃げていた。では、ブログではどう説明しているのだろうかと見てみた。
 この話題については、まず9月26日付けのブログで触れている。
 
「一部報道における私の発言について」
昨日、一部で私の発言についての報道がございましたので、ご説明いたします。
まず、報道にありましたような女性を蔑視する趣旨の発言(「女性はいくらでも嘘をつく」)はしていないということを強く申し上げておきたいと存じます。(略)
かねてより申し上げているように、私は女性への暴力はあってはならず、許されない犯罪だと考えており、暴力を振るった加害者はきちんと罰せられることで再発を防ぐべきであり、その為には警察の関与と連携は不可欠であると考えています。
被害者が民間の相談所に相談をして「気が晴れました」で終わっては、根本的な解決にはなりません。
警察の中に相談所を作り、女性警察官を配置することで敷居を下げ、相談しやすくすることができるのではないか、また、それが警察における女性活躍にも繋がるのではないかということを申し上げました。
また、慰安婦問題と女性に対する暴力は全くの別問題ではありますが、一方で民間団体の関与という点においては、韓国の挺対協が「聖域」になってしまって、長年誰も切り込めなかった期間の公金の不正利用などの問題が次々と発覚していることもあり、日本でも同じ問題が起こる可能性を懸念する声もあります。(以下略)
 
 明確に、自分は報道されているような発言はしていないと強弁している。しかも、民間の相談所の問題なのに、韓国の挺対協を持ち出すという、関係のないところでの弁明である。そして、この後、自民党の政調会長に呼び出され、丁寧な説明をするようにと注意を受けていて、再度ブログでの弁明をする。(10月1日)
 
 「9月26日に投稿いたしましたブログ記事「一部報道における私の発言について」につきまして、一部訂正を致します。
件の内閣第一部会・内閣第二部会合同会議において私は大変長い発言をしており、ご指摘のような発言は行っていないという認識でおり、「報道にありましたような女性を蔑視する趣旨の発言(「女性はいくらでも嘘をつく」)はしていない」旨を投稿いたしました。
しかし、今回改めて関係者から当時の私の発言を精査致しましたところ、最近報じられている慰安婦関係の民間団体の女性代表者の資金流用問題の例をあげて、なにごとも聖域視することなく議論すべきだと述べる中で、ご指摘の発言があったことを確認しましたので、先のブログの記載を訂正します。事実と違っていたことをお詫びいたします。」
 こう書いて、結局は、これまではなかったと強弁していたが、「精査」した結果、その発言があったと認めたわけである。「精査」とは何かわからないが、たぶん録音などを聞かされたのだろう。これでグーの音もでなくなったということに違いない。しかし、自分の発言をそうした「精査」をしなければ、思い出せないとは、まことに頼りない頭脳だ。しかし、その発言をしたことを認めただけで、女性を蔑視する意図はなかったと、これまた強弁している。
 
 「私の発言の趣旨は、民間委託の拡充だけではなく、警察組織の女性の活用なども含めて暴力対策を行なっていく議論が必要だということであり、女性を蔑視する意図はまったくございません。
ただ、民間団体の女性代表者の例を念頭に置いた話の中で、嘘をつくのは性別に限らないことなのに、ご指摘の発言で女性のみが嘘をつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった方にはお詫び申し上げます。
あわせて自由闊達な議論を旨とする自民党政調会の同僚議員の皆さまにもご心配をおかけし申し訳ございませんでした。
もとより、女性であろうと男性であろうと、暴力や性犯罪は、人間の尊厳を踏みにじる許されない犯罪であり、私自身もひとりの人間として、啓発、相談や警察・司法の関与など、様々な方法で撲滅していくべきだと考えております。」
 
 「女性はいくらでも嘘をつく」という発言は、どんなに弁明しても、女性蔑視であり、「性犯罪は、人間の尊厳を踏みにじる許されない犯罪である」と後付けで弁解しても、この発言は、性犯罪を告発する行為を、「嘘をつく」ような存在からの告発は、もっと国家権力を使って、嘘じゃないかを厳密に調べろといっていると解釈せざるをえないわけで、この発言こそ、人間の尊厳を踏みにじるものだろう。
 たしかに、痴漢の冤罪はけっこうあるといわれており、その場合、女性は嘘をついているわけだが、痴漢の犯罪の数(ほとんどは泣き寝入り)、正当に訴えたものと、冤罪として虚偽の訴えの数を比較すれば、明らかに前者のほうが多く、その対応を基本にして、付加的に、冤罪の問題を主張すべきだろう。(冤罪を素通りしてよいとは、思わない。)
 また9月26日のブログでは、民間相談所ではなだめだ、というニュアンスなのが、10月1日には、民間だけではだめだ、という言い方に変化させている。いういう見え透いた変更は、品がないということだ。
 結局、杉田氏の弁明には、まったく説得力がないということだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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