文科省が、部活動について新たな方針を提示して、話題になっている。部活動の在り方が、現在の学校教育の大きな問題であることは、多くの人によって論じられている。しかし、議論の方向性や基本的立場は、相当な違いがある。しかも、根本的な相違を含んでいる。部活動を学校教育のなかに位置づける人と、学校教育から外すべきであるという人の違いは、まったく異なった考え方である。指導者については、外部指導をどうするかという点があった。
とりあえず、最近の動きを見ておこう。従来、部活は、学校教育の構成要素ではないが、構成要素であるかのように運用されてきた。最近まで、部活の顧問を引き受けるのは、教師の義務であるかのように扱われていたが、現在では、正規の学校教育の構成要素ではないことが確認されており、顧問の引き受けは、教師にとって義務ではないことが、文科省によっても明らかにされている。これについても賛否両論あるが、この確認によって、校長が、顧問を確保することが困難になっていることと、そもそも、顧問としての活動が、教師のブラック的過重労働の大きな要因となっていること、そして、教師の顧問は、必ずしも部活内容の指導能力を備えているわけではないこと等の理由から、外部指導員という制度が導入された。顧問が、部活内容に則した指導ができないときに、代わりに指導を引き受ける学校の教職員ではない人のことである。しかし、これは、あくまでも、部活の技術的な指導をするだけで、顧問が解放されるのは、外部指導員がいる場合の指導だけで、引率等、その他の顧問の役割から解放されるものではなかった。そこで、2017年3月に「部活動指導員」という制度を導入したわけである。これは、顧問がもっている権限・責任を完全に引き受けることができる制度で、かなり広範囲な研修が必要であることが決められていた。合わせて、文科省は、運動部に休養日を中学は週2、高校は週1設定することを指導内容とした。文科省によって規定された研修は以下の通りである。
1.学校設置者による研修
部活動指導員制度の概要(身分、職務、勤務形態、報酬・費用弁償、災害補償等)
学校教育及び学習指導要領
部活動の意義及び位置付け
服務(校長の監督を受けること、生徒の人格を傷つける言動や体罰が禁止されている
こと、保護者等の信頼を損なうような行為の禁止等)
生徒の発達段階に応じた科学的な指導
顧問や部活動を担当する教諭等との情報共有
安全・障害予防に関する知識・技能の指導
学校外での活動(大会・練習試合等)の引率
生徒指導に係る対応
事故が発生した場合の現場対応
女子生徒や障害のある生徒などへの配慮
保護者等への対応
部活動の管理運営(会計管理等)
2.学校による研修
学校、各部の活動の目標や方針(各部の練習時間や休養日の徹底も含む)
学校、各部が抱える課題
学校、各部における用具・施設の点検・管理
こうした研修を受けた資格保有者は、実際には極めて少ないために、活用は進んでいないのが実態である。文科省が実施した調査では、部活動指導員が配置されているのは、公立中学64校中23校、公立高校17校中8校である。配置といっても、実際に存在する部活に対して、どの程度配置されているかは不明である。おそらく、配置されている部活はかなり限定されているのではないだろうか。そういうなかで、今年9月に、休日の部活動は、部活指導員に任せるという方針をうちだして、そのための実証実験をするための概算要求を申請したというものである。だから、ごく一部の学校が選択されて、その学校の部活は、休日に部活指導員が行うというものである。あわせて、文科省は、将来的には、平日もそうしたいという意向を示したという。
さて、ここで、将来の在り方について、いくつかの考えがわかれてくることになる。
第一が、文科省の現在の方針と思われるもので、部活の指導は、部活指導員に任せるというものである。
第二が、外部指導員を主体とする見解である。
第三が、学校教育から部活を完全に引き離すという考えである。
ただし、これは、私が勝手に「論理的」に分けただけであって、実際の現場では、あいまいな考えをもっている人が多いように思われる。例えば、毎日新聞の9月1日付け記事「休日の部活動の地域移管 教員、教委ら戸惑い 中途半端」というなかで、「今回の案は中途半端な印象もある。移すなら全部移したほうがいいし、教員がやるならその教員の授業時数を減らすことも考えるべきだ」という意見を紹介している。この意見は、そもそもどちらを支持しているのかわからない。だが、その方向性は全く逆である。
そこで、問題を明確にするために、ここでは第一と第三の比較検討をすることにする。第二は、実際には現在の部活の問題を解決することは、非常に難しいし、だからこそ、文科省は新たな部活指導員という制度を作ったわけである。