核廃棄物処理問題 野党は政策を提示すべき

 コロナの影でニュースの扱いは小さいが、原発関連の重要な展開があった。7月に、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場の、福島原発事故以後の基準で審査に合格したということ。もうひとつは、北海道壽都町の町長が、核廃棄物処理場の候補地となる「調査」受け入れに、名乗りを上げたということである。前者は、審査に合格したが、実際の稼働は、2年後を予定しており、それも実際に可能になるかはわからない。実際に、再処理工場の建設が始まってから27年が経過しており、その間何度も不都合が起きて、延期が繰り返されてきた経過があるからだ。そして、再処理されたプルトニウムを、実際に原発でどのように使用するかの計画は、きちんとたっておらず、しかも、既に外国に再処理を依頼して、蓄積された燃料が50トンもあるのだそうだ。この再処理計画は、止めるという政策も、理論的には可能だが、一旦始めたことは引き返すことはできない、という対中戦争から太平洋戦争に至る経過とよく似ているという人もいるような様相を呈している。これだけの資源を投じて継続してきた国家的事業を止めるというのは、確かに、命をかけるくらいの首相の決断が必要なのだろう。原発だって、止めることは可能だ。実際に福島原発事故のあと、数年間は、原発なしに電力が供給されてきた。当初は節電が叫ばれたが、少なくとも原発再稼働前に、節電も叫ばれなくなった。電力供給の企業間の調整が機能しだしたからだそうだ。

 第一の問題は、しかし、中止することはできない。原発を止めたとしても、核廃棄物は残り、安全な形で処理しなければならない。フィンランドがやっているのは、地下500メートルに広大な空間を堀り、そこに10万年閉じ込めるという計画だ。日本でも、300メートル地下に埋めるという計画になっているが、どこにするかが決まらないまま、現在に至っている。原発を始めれば必ず生じる問題であることは、最初から分かっていたことだが、現在まで先送りしてきたわけだ。如何にその選定が困難かは、その土地が適格であるかを調査することに応じるだけで、年間20億円の補助金が出るということでもわかる。選定され、工事が始まったら補助金が出るというのは、理解できるが、調査は適格とでても、断ることはできるわけだ。壽都町長は、財政的な問題を考慮して、調査の受け入れを表明したようだが、それでも、直ちに住民の反対運動が起きた。
 私は、原発を止めるべきだという立場だが、もちろん、核廃棄物の処理施設を「国内」につくらなければならないことは、認識している。これを外国につくることはできないのだ。以前、ドキュメントで、ロシアのシベリアでヨーロッパの核廃棄物を保管している映像を見たことがあるが、日本でも利用しているのかは、私はわからない。現時点で核廃棄物は、各原発の施設で保管しているのだろう。
 自民党は、政権党ということもあるだろうが、とにかく、全国の自治体に呼びかけて、施設を受け入れるように呼びかけている。そのための莫大な補助金も用意している。では、野党はどうなのだろう。
 まずは、立憲民主党の政策をホームページで確認した。すると、以下のようになっていた。
 
立憲民主党の政策
原発ゼロを一日も早く実現するため、原発ゼロ基本法を制定します。
原発の新増設(建設中、計画中を含む)は中止します。
原発の40年廃炉原則を徹底し、急迫かつ真の必要性が認められず、国の責任ある避難計画が策定されないままの原発再稼働は認めません。
 
 原発を止める方向を示しているが、核廃棄物の処理については、まったく言及されていない。もっと詳細な政策が他にあるのかも知れないが、党のホームページでリンクされている限りは、これだけである。立憲民主党は、福島原発事故が起きたときの政権党だったのだから、当然、原発に関する詳細なデータをもっているはずであり、何が必要かを十分に認識しているはずであるが、このページの貧弱さはどうなっているのだろうか。
 共産党はどうだろう。
 
日本共産党の政策
 「原発ゼロ」を実現した後も、原発の廃炉、使用済み核燃料の管理・処理など原発関連の「負の遺産」の後始末を安全に実施しなければなりません。政府は、核のゴミの最終処分場について国土の65%が「好ましい」特性を持つとする「科学的特性マップ」を公表し、「国が前面に立って」立地調査を自治体に押し付けようとしています。しかし、地殻変動の活発な日本で「万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界がある」と日本学術会議は警告しています(2012年9月)。使用済み核燃料の処分の手段・方法については、既定路線にとらわれず、専門家の英知を結集して研究・開発をすすめる必要があります。その結論が出るまでは、政府の責任で厳重な管理をおこないます。こうした事業に取り組むためにも、原子力に関する基礎研究とこの仕事を担う専門家の確保・育成をすすめます。
 原発の廃炉にいたるプロセスの管理、使用済み核燃料の管理などを目的とし、従来の原発推進勢力から独立し、強力な権限をもった規制機関を確立します。2017.10 https://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/10/2017-genpatsu-mondai.html
 
 要するに、まだ確定的な処理法が見つからないので、それを見つけてからにすべきだということのようだ。フィンランドなどで実際に走り出している計画、そして、日本でも同様な方法をとろうとしていることとは異なる方法があるということなのだろうか。
 このように、原発をめぐっては、原発そのものを継続するか止めるか、核燃料を再処理してプルサーマル発電として利用する計画を発展されるか止めるか、そして、核廃棄物をどう処理するかという3つの大きな課題があるわけだが、様々な文献を読めば読むほど、迷路に入り込む気がする。そして、この問題がなかなか進まない大きな理由が、原子力関係会社や専門家への不信感である。原発事故が起きたとき、毎日たくさんの原子力専門家がテレビにでて解説していたが、その説明は、あとでほとんどが嘘であることが判明した。もちろん、安全神話を振りまいたことも、不信感の原因になっている。
 これを打開するためには、やはり、野党こそが、この問題に真剣に取り組んで、まずは選択肢のない「核廃棄物処理」について、具体的な方法を提案する必要があると感じた。
 私も、心して勉強しなければ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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