新型コロナウィルスは怖い病気なのか? 指定感染症を外すべきなのか否か?

 新型コロナウィルスによって起きる病気に関して、まったく逆の見解が相変わらず併存している。
 一方は、重篤化すると死に至り、また治癒しても様々な後遺症が残る恐ろしい病気であるとする。他方では、単なる風邪で、インフルエンザなどよりも、ずっと死亡率も低く、「新しい生活様式」をきちんと守っていれば、感染リスクも避けられ、それほど恐ろしい病気ではなく、今のようにメディアが騒ぐこと自体おかしいとする。しかし、恐ろしい病気であるという主張は、これだけ感染者数が存在しているのに、特に東アジア地域では死者が少ないという点を説明できていないし、逆に、単なる風邪だという説は、欧米における膨大な死者数を説明できない。

 これは直ちに、欧米での新型コロナウィルスと東アジアでのそれとが、同じなのか違うのかという点にも関わってくる。東アジアで死者が少なく、欧米で多いのは、そもそも、ウィルスの型が違うからなのか、あるいは、住んでいる人たちの体質や習慣なのか。その点でも、意見はふたつに分かれているように思う。遺伝子構造などの分析によれば、種類が異なることは明らかだろうが、その毒性が違うのかどうかは、これまで明らかにされているようには思われない。3月くらいに、ヨーロッパに旅行した人たちが、感染して帰国した例がいくもあった。そして、その感染者が感染を拡大したことは、間違いない。その欧米型による死者と、それまでの東アジア型による死者との割合は、出されているのだろうか。4月以降、日本でも死者数がかなり増大したので、それは、欧米型によるものなのか、そうではないのか。それがはっきりしないと、コロナの型による死者数の相違なのか、あるいは、日本人の体質、生活様式による相違なのかが、実はわからないような気がする。BCG説もあるが、かならずしも現実とあわない部分もある。
 この二点については、専門家の見解も分かれているので、どちらが正しいかは不明のまま次に進んでみる。対策についても、対立がある。
 いまだに対立しているのが、PCR検査の拡大である。これについては何度も書いたが、結局、最も徹底してこの点を追求している羽鳥のモーニングショーも突っ込み不足で、PCR検査を拡大しない理由を調査して、結局偽陽性を理由とする訴訟を恐れているのだという結論をだしたが、(それが正しいと断定したわけではないが)別の見解としては、感染研がコントロールしたいために、民間や大学に任せたくないのだという見方もある。上氏や舛添氏が主張している。そして、さすがに、検査など不要という見解は最近はあまりないが、ただ、実務的に「必要な人」に限定している点では、制限論が実際を支配している。(世田谷の保坂区長の大胆な政策も表明されているのは、例外)
 ただし、この点については、羽鳥モーニングショーの主張も、あいまいな点があり、「誰でも、何度も、無料で」検査をすべきと主張し、ニューヨークではそれで感染抑制に成功したというのだが、陽性者をどう扱ったのかは、実はあまりはっきりしないのだ。私は、モーニングショーにその旨明確にしてほしいと、意見をだしたのだが、その後もはっきりとはしていない。岡田教授は、大きな体育館などに、たくさんのベットを並べて収容するのでもいいのだ、と意見を述べており、それが唯一の明確な対策の意見だと思う。ただ、その場合に、陽性者ばかりいるから、感染の心配はないというが、無症状で実際に発症しない可能性の高い人が、ウィルスの感染濃度が高まって、発症しやすくなるという危険性がないのかが、明らかにされていない。わずかなウィルスでは発症しないが、何度も感染すれば発症するという可能性は、素人には十分ありそうだと思われるのだ。もし、そういう危険性があるなら、体育館に大勢という選択はできなくなる。そうすると、個室の確保になるが、「誰でも、何度でも、無料で」検査が実施されれば、当然陽性数は格段に拡大するわけだから、本当に個室の確保が可能になるかという問題に直面する。
 こうした考えとまったく逆の見解もあり、経済活動保障派の人たちは、多くが次のような立場だろう。
 ほとんどの感染者にとっては、発症しないし、してもごく軽症ですむ。だから、そういう人は放置してもよい。気をつけなければならないのは、発症した場合の対応、重症者治療の施設の確保、そして、高齢者に感染させないための措置をしておけばよく、何らかの症状が出た人への対応をしっかりすれば、無症状の人のPCR検査などは不要である。高齢者がいなければ、陽性でも自宅療養でよい。無駄な医療資源を使わずに、重症者対策を重点にすればよい。様子をみて、指定感染症から外すべきだ。
 指定感染症は、それまでなかった未知の感染症が現われたときに指定されることになっているようだ。未知だから、もちろん治療法も未知である。だから、万一の場合に備えて、感染者は原則全員、強制的に入院させ、その費用は公費で賄う。だから、PCR検査も、保健所の指示で実施すれば、無料だが、民間の検査会社に私的に依頼すれば、数万かかってしまう。
 指定感染症を解除すれば、PCR検査は、おそらく保険適用によるものになり、当然患者の一部負担によって行われるようになるし、入院費用や隔離費用も、一部私費負担になる。そうした検査や入院は、当然何らかの症状が現われた段階で始まることになるから、新型コロナウィルスは発症の少し前がもっとも感染力が高いという話が本当であれば、感染は知らない間に増えていくことになるだろう。しかし、発症しない限りは問題ないのだし、発症した段階での治療が確保されていればよいという程度の病気であれば、それでも問題はなさそうでもある。指定感染症は、原則一年の指定で(二年延長もあり)、その後は感染力や症状の重さで、類型に分類されて、それに応じた対応がとられるということだから、当然半年以内に、指定から外すか、延長すべきかという議論がなされることになる。
 医療関係者によるきちんとした議論と検証を期待するが、まったく素人だが、インフルエンザと同レベルの類型指定でよいのではないか、という気持ちになりつつある。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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