マイナンバーカードを使って、オンラインで給付金を申請できるシステムが、逆に人手を使ったチェック作業のために、膨大な事務的な負担が生じて、中止する自治体が多かったようだ。それにこりて、もっと能率よくできるようにという理由で、銀行口座に紐つけしようという案が浮上している。私は素人なので、詳細はわからないが、むしろ素人として納得できるかどうかが重要であると思う。基本は、素人でも理解できることが大事だ。
まず、マイナンバーシステム自体が、私にはとても不可解である。私はまだマイナンバーカードをもっていない。しかし、マイナンバーはもちろんある。申請したわけではなく、勝手に付与されたものだ。それは紙に書かれた状態だ。しかし、この紙とカードの違いが、私にはさっぱり分からない。番号が必要なときには、この紙をコピーして送ったり、あるいは実際に窓口で見せたりする。その場合には、カードは不要のようだ。いったいカードはどういうときに必要で、どういう風に便利なのか、ときどき話題にはなるが、要するに不可解なのだ。これまでカードがないから、手続きができなかったことはないのだから、不可欠というわけではないらしい。より便利だということで、オンライン申請を設定したら、大混乱になってしまった。確認のために、紙の書類と突き合わせてチェックするなどということは、カードレベルでのチェック機能が、機械化されていないということだろう。何のためのカードなのだろう。
今回の10万円申請で一番驚いたことは、「世帯主」が申請して、世帯主の口座に一括して振り込むという方式だ。もちろん、振込手数料を考慮してのことだろうが、マイナンバーというのは、国民の「個人」につけたものではないのか。そもそも、こうした個人番号は、国民を「個人」として把握し、管理・運用するためのものだ。にもかかわらず、世帯主に限定しておいて、なおかつマイナンバーカードを使わせるというのは、そもそものシステムの趣旨とは異なるものである。
私自身は、安倍首相はマイナンバーカードなどは、あまり重視していないと思っている。彼は、個人管理という、近代的な考えではなく、家族管理という旧来の意識をもった人物だと考えるからだ。自民党が、国民管理の理念としては、旧来型の政党だ。だから、これまで、いろいろなナンバーが付与されてきたが、どれもみな中途半端になっている。
もうひとつ、安倍首相が消極的な理由は、こうした国民総背番号のシステムは、政治的透明性に向かうし、また、透明性がないと機能しないのだが、安倍内閣は、歴代内閣のなかでも、際立って不透明な内閣だという点にある。説明はまともにしないし、あるはずの文書が「ない」とか、「破棄した」とか平気で嘘をつく。隠しきれずに出してくると、ほとんど黒塗り状態のものを出す。
安倍首相が、国会で問題になった事項に対して、まともに説明したことがあるだろうか。説明しないということは、説明できない事情があるということだ。さすがに、いまでは国民の多くがこのことを認識するようになった。
私は、国民総背番号制度には、原則的に賛成である。しかし、これまで日本が採用してきた、類似の番号は、スウェーデンやデンマークなどで実施されているシステムとは、似て非なるものだ。スウェーデンなどの背番号は、一種類であるし、日常的な買い物などは別だろうが、大きな買い物や、給与支払い等々は、番号を伴って行われる。だから、基本的な資金は背番号によって管理されている。だから、脱税などはできない仕組みになっているわけだ。それでも脱税する人は皆無ではないだろうが。他方では、政治家や裕福な人たちの資産も、透明になるということだ。国家財政も、使途不明金などは生じにくいシステムになっている。だから、国民は高い税金を受け入れている。税金を払っても、それが国民の福祉のために使われるならば、払うことに不満はあまりでない。
日本では、税金の使われ方に、大きな疑念がある。アベノマスクにしても、466億円も予算が組まれたというが、実際に業者に支払われた金額は、正確には公表されておらず、3分の1程度だとも言われている。では、残りの予算はどうなったのか、明らかにされていない。このような「不明」が数えきれないほどある。こういう状況では、国民として、背番号の実施など賛成できないし、また、政府としても、きちんとした形での実行などは考えないだろう。それでも紐付けすれば、国民の監視意識はより強固になるはずであるし、そうすれば、内閣の不正な資金の使用が、もっと明るみに出てくるはずだからである。
だから、「紐付け」なる方法は、中途半端にやって、政府のごまかしは明らかにならないようなシステムを作ろうということなのではないかと、私は疑っている。いずれにせよ、これまで散々指摘されてきた不正な資金運用(森友・桜)など、必要な文書を開示して、国民を納得させなければ、作っても機能しないだろう。マイナンバーカードのように。もちろん、今の状態では反対だ。