笑ってしまうが、深刻な話だ 中学でアベノマスクの強要

 記事を読んだときには、思わず「えっ」と声をあげ、あと笑ってしまった。埼玉県の公立中学で、休校開けで学校が再開されるにあたって、さまざまな指示を書いたプリントのなかに、アベノマスクを着用するか、携帯することを明記してあったということだ。ネットにそのプリントが掲載されているので、間違いないだろう。忘れた者は生徒指導の対象になるようなことまで書かれている。
 ここまでは、滑稽な話だ。そもそも、アベノマスクという言葉は、あまりにくだらない政策だと揶揄する表現である。ああ、いいマスクを配布してくれた、などという人たちは、使わない言葉だ。それを、必要と知らせる立場で使っているのだから、よほど言語感覚が鈍い人たちなのだろう。こんな言語感覚の人たちに教わる子どもたちは、かわいそうだ。
 しかし、本当に深刻なのは次だ。
 このようにマスクを、しかも政府が配布したマスクをつけること、あるいは携帯することを強要したことを、批判的に指摘されたとき、「誤解を招くような表現だった」と言い訳し、「もっていない人は、代わりのマスクを配布するという意味だった」とごまかしていることである。プリントを読む限り、「誤解の余地はない」。つまり、必ずアベノマスクをしてくるように、しない場合でももってくるようにと書かれている。いいわけのような意味ならば、「マスクをしてきてください。ない人は学校で配布します。」と書けばよい。
 その地域では、完全に配布が終了しているのかどうかわからないが、我が家にはまだきていない。幸い、老夫婦家庭だから、たとえ地域の中学がそうしても、被害は受けないが、その地域で、まだ配達されていないとしたら、どうするのか。また、一世帯に2つだから、3人子どもがいる場合はどうするのか。まったく、教育者としての配慮が欠けていて、とんでもない発想をする人たちだ。
 教育者である以上、「誤解を生む表現」などとごまかすのではなく、ちゃんと「間違った認識をもってしまった」と謝罪するべきである。もちろん、こんな教育者は例外だろうと信じる。
 こうして批判されて、本当に間違いの根源を反省して気づくのだろうか。それとも鬱屈した感情が残るのだろうか。
 笑ってしまうが、実は深刻な事件、黒川検事長賭麻雀事件に引き続いて起きた。

 

(追補)
上記文章をアップしてから、おそらく市として、生徒たちにマスク1枚ずつを配布していたことがわかった。従って、マスクがない子どもはいないということで、このような指示が出たということは理解した。訂正しようと思っていたところ、すぐにそのことを指摘するコメントがあったので、訂正したい。
 ただし、コメントの返答にも書いたように、学校の配布したパンフの表現は、多いに問題があるし、あのような文章を書いた「気持ち」が理解できないのは、いまでも同様である。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

「笑ってしまうが、深刻な話だ 中学でアベノマスクの強要」への2件のフィードバック

  1. 太田先生お久しぶりです。
    文教大学人間科学部人間科学科を2009年に卒業したものです。現在は埼玉県の北部で中学校の教員をしております。
    最近になって太田先生のブログを見つけ、勉強させてもらっています。
    今回の深谷市のアベノマスクの件ですが、実際のところはわからないものの、学校ならではの『古い考え』が悪い方に出たように思えます。ただ私の市町村では、学校に国からのマスクが届き、それを生徒一人一人に配布しました。よって、今回の深谷市も家に届いたものではなく、学校で配布したものの利用を基本としていたと考えられます。
    どちらにしても、学校の校則は問題が多いので、しっかりと〝不易流行〟を見極めていくべきなのだと思います。
    今後もブログの方、拝見させていただきます。それでは、失礼します。

  2. コメントありがとうございます。マスクについて、政府から届けられたものは別として、学校で生徒一人ずつに配布していることは、このブログを書いたあとに確認しました。訂正しようかとも思っていましたが、ただ、それにしても、「マスクをしてくるように、ない人、忘れた人には、配布するので、申し出るように」というような内容にすべきでしょうね。今後ともいろいろ書いてください。

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