検察ネタは終わりのつもりが、麻雀事件が

 表題のように、検察庁法改正が、とりあえず今国会では成立しないことになったので、昨日の文章で終わりにしようと思っていたところ、突然、麻雀報道が起り、急展開になってしまった。昨日の文章の最後に、そろそろ黒川氏の延長された期限も近づいてきたと書き、その頃に新しい動きがあるだろうと予想したのだが、本当にびっくりした。しかし、これは、わからない事件だ。そこで、あくまでも空想だが、いろいろな可能性を考えてみたい。
 まずは、黒川氏の個人的な意思によって行われたという可能性はどうか。もともと麻雀やカジノ好きだといわれていたので、そういうギャンブル依存症的なところから来る、個人的な出来事かどうか。その場合には、賭麻雀という犯罪でもあるし、時期的に自粛しなければならないときに、批判されるような行為をしてしまうのは、やはり、依存症なのかと考えられる余地はあるだろう。「わかっちゃいるけど止められない、でも、普段の付き合いあるジャーナリストとやるのだから、まさかばれることはないだろう」という感じだった。
 しかし、この可能性は、常識的に非常に低いように思われる。いくらギャンブル好きだといっても、検事総長になるかも知れない、あるいは、そういう意思をもっている人物が、このような時期に夜、隠れてやるだろうか。そこまで自制心がないとは、とうてい思えない。
 ただし、個人的な意思としても、別の可能性がある。政権よりだとか、いろいろ言われて、ただ立場上、調整役として一生懸命やってきただけなのに、こんな風に言われるのは心外だ。これで検事総長になったとしても、社会的非難はますます強くなるだけだ。稲田現総長が、官邸の要請によって、自分の定年前に辞めてくれれば、すんなりと自分が検事総長になれたのに、要請を突っぱねたために、定年延長などという禁じ手を使って、こうした非難が降りかかってきた。そこまでしてやりたくない、かといって、やりたくないなどといって、今から辞退することも難しい。ならいっそ、不祥事を起こして、辞任してしまおう。こういう筋書きを作って、麻雀友達のジャーナリストを巻き込んで実行した。多少荒っぽいことをやらなければ、辞任はできないから、賭博麻雀くらいやっておこう。懲戒免職などになるはずはないから、多少の非難を我慢すればよい。
 こういう可能性はどうだろうか。黒川氏をまったく知らないので、判断などできないが、可能性としてありえないわけではないだろう。今の延長上で検事総長にすんなりなれるわけないし、たとえなったとしても、権力争いの醜い部分をもろにかぶってしまう。それなら、辞めても仕事はいくらでもできるのだから、こまることはないし。総長になって、政治的争いに巻き込まれつつ、大きな非難を浴びるのよりは、個人的な批判を受けて辞任するほうが、精神的には楽だ。
 まあ、おそらくこの可能性は、あるとしても、極めて小さいだろう。誰の目からみても、恥ずべき行為をあえて自分からするというのは、検察のトップにならんとするような人物が選択するとは、考えにくい。
 ということで、個人的な意思によって、あえてやったという可能性は低いとすると、誰かが貶めるこめに、はめたということになる。それは、どういう立場からなされたのか。
 多くの人が驚いたと思うが、一緒に麻雀をやったのが、朝日と産経の新聞記者だったということだ。そもそも新聞記者が、検察のナンバーツーと夜中に賭け事をするというのが、とんでもないジャーナリストだが、それが朝日と産経となれば、ますますあきれてしまうわけだ。そして、報道によれば、密告したのが産経のほうだというのだから、一般的には不思議に思われるところだ。
 昨日書いたことは、先週までは、安倍首相は、「法務省からの要請を受けて、官邸はそれを承認した案にすぎない」というストーリーで、検察庁法の改正を乗り切ろうとしていた。しかし、今週月曜日18日になって、世間の反対があまりに強いので、とりあえず今国会の成立は諦めたということになっている。
 だが、この麻雀事件が明るみにでると、さすがにまずいと感じたので、やめる決意をしたという考えをする人もでている。しかし、週刊文春は、21日発売で、ネット版が20日の掲載だ。もちろん、官邸は、事前に内容を知ることができるが、18日の段階で、すくなくとも完成版に近い印刷物を入手していただろうか。ただ、取材をしていたわけだから、印刷物になる前でも、産経から官邸に事前に報告されていた可能性は高い。この場合、やはり、現在の政治状況のなかで、法案を強行採決し、黒川検事総長を強引に実現しても、世間の反発が激烈になり、公明党も連立離脱をして、内閣が倒れる危険もある。ここは、思い止まらせる必要があるが、安倍首相は、強行突破の構えだ。なら、黒川氏のギャンブル好きを利用して、麻雀に誘い、文春に取材させて、安倍首相に思い止まらせよう。これなら、傷も小さい。そういう安倍守れ勢力のしかけた罠だった。この可能性はあると思う。
 しかし、仕掛け人が逆の立場ということもある。あまりに政権寄りになっている黒川検事総長が実現したら、検察としてもっとも腕を振るう場である、政権にも切り込める検察という、やはりとっておきたい立場が崩れてしまう。この際、やはり、法案を潰し、黒川総長も潰す必要がある。ここは、朝日に協力してもらおう。ただ、この策略がばれるとまずいので、産経を抱き込み、彼らが主に動くように仕向けて、安倍陣営からでたミスという形にする必要がある。検察の独立性を守るためには、必要なことだ。この可能性はどうだろうか。
 他にも可能性はあるだろう。私自身は、黒川氏の個人的な意思によって起きた事件ではなく、やはり、彼のギャンブル好きを利用した、権力闘争だったのだと思う。そして、一番ありそうだと思うのは、検察内部からでてきた「独立派」が仕組んだということだ。あくまで個人的な感じ方だが。まあ、どうあれ、法案が成立しなかったこと、黒川氏が総長にならないことは、結果としては歓迎である。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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