安倍首相が、検察庁法改正を断念したと報道されている。ただ、報道をいくら読んでも、国家公務員法はどうなったのか、検察庁法改正の定年延長部分がどうなったのかが、正確に書かれていない。要するに、まとめて成立させようとしたが、無理なので、まとめて断念なのか。問題になっている特例措置の撤回なのか、正確にはわからないのだ。たぶん、まとめて諦めたということなのだろうとは思うが。毎日新聞の速報記事を読んでも、そこらがきちんと書かれていない。毎日新聞の速報の見出しは「検察庁法、今国会での改正断念、世論の反発強く首相近く最終判断」というもので、国家公務員法は触れていないのだ。
というのは、別のある記事では、実は本命が国家公務員法の改正で、コロナ騒ぎで、失業者が多く出そうな状況のなかで、国家公務員の定年を延長するというのは、それこそ国民の反感を買うものだが、それをたくみに逸らすために、検察庁法の改正と抱き合わせにし、しかも、世間が騒ぐ「特例措置」をいれて、議論をそちらに誘導しようとしたのだ。そちらで議論が沸騰しても、結局強行採決してしまえばよいので、本命の国家公務員法の改正、つまり、定年延長をすんなり通すことができると踏んだのだ、という報道記事もあるのだ。それが本当であるとすれば、私も「目くらまし」に気づかなかったのであるが、ただ、冷静に考えてみて、国家公務員の定年を65歳にすること自体には反対しない。しかし、そのためには、役職や給与などの問題をもっと議論する必要があるとは思う。給与の高い高齢者が増えるのは、実力とエネルギーが伴えば、問題ないが、そうでない人たちも少なくないとすれば、人件費負担と労働生産性を考えなければならないという条件付きでの賛成ということになる。
率直にいって、とにかく、問題は検察庁法改正案の特例措置だから、今国会での断念をしたことは、運動の大きな成果だろう。私が運動したわけではないが、ただ、このブログでは、かなり早い時期から、何度も書いていた。
世論調査では、改正に反対が90%にもなっていたそうだ。政府の法案に対して、反対が90%というのは、異例中の異例だろう。それだけ酷い内容ということだ。また、安倍首相の答弁も、本当に国民を馬鹿にしたものだった。「政府が、疑惑をもたれるような人事をすることはないと断言できる」と答弁したようだが、疑惑以外の何物でもない人事を、実際に行ったわけだから、体罰教師が、「教師やっている人が、体罰を振るうなんてことがあるはずない」と述べているようなものだ。官僚や自民党、そして、肝心の検察にも反対者が少なからずいたということも、断念の力になっている。
政治を変えることができる、ということを示したという点でも、大きな意味があったと思う。