9月入学にすると半年分過密になるというが

 9月入学に対する世論調査で、賛成が50%を越えており、反対は30%程度なのだという。私は、制度として9月入学が、あらゆる点で合理的であると思っているので、新型コロナウィルス災難をプラスに変える柱の一つとして、ぜひ実現させてほしいと思っている。
 ところが、かなり困難があるという記事が出ている。「9月入学で発生する大混乱 「1学年の人数が増える」問題とは」と題する週刊ポスト5.22.29号の抜粋記事である。名古屋大学の内田良氏が指摘していることだが、9月入学にすると、要するに、4月から8月までに生まれた人たちが、9月から翌年の8月までの人たちと一緒の学年になるために、その一学年分は、人数が1.5倍になるから教師も教室も足りなくなるというのである。
 確かに、そういう問題が起きる。しかし、現在の少子化事情を踏まえれば、乗り越えられない不利とは思えないのである。
 ごく稀に、若年人口が増えて、学校が過密になっている地域があるが、ほとんどの地域では、子どもの人数は非常に減っており、学校施設はかなり余っているのが実情である。また、教師も担任をもたない教師が少なくない。また、年金の問題もあって、定年後も嘱託として雇用し続けているのが実情であり、東京などは、希望すれば、65歳を越えても働き続けることができるという。つまり、教師も実は余っているのだ。もちろん、余っているから労働が緩いという意味ではまったくない。学校がブラック職場であることは間違いないないが、それは人手が足りないからではなく、余分な仕事、教師としてやる必要があるわけではないことが、あまりに多いからである。今回の休校措置で、学校で本当に必要なことを吟味すれば、不要なことは大分削ることができるはずであり、また、空き教室を利用したり、あるいは、学校選択を広げて、過密学校を解消することで、充分に半年分の増加を、乗り切ることは可能だと私は思っている。もちろん、正確なところは、文科省が計算していることだろうが、内田氏がいっているように、2カ月分ずつずらしていくなどという方法をとらなくても可能だと、私には思われる。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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