横断歩道を渡ろうとした中学生が、車にはねられて死亡するという痛ましい事故が起こった。信号が青だったので渡ったということだから、中学生にはまったく非がないし、運転手はぼうっとしていたという。しかも、かなりスピードを出していたということだから、過失としても、重過失だろう。
そういうことを確認した上で、事故にあわないために必要なことを考えたい。
私は車を運転するし、歩行者でもあるので、双方のことを考える。ただし、運転手と歩行者とでは、立場がまったく違う。どんなに運転手に非があろうとも、事故が起きれば、歩行者側が被害を受ける。だから、私がまず気をつけているのは、歩行者として信号を渡るときだ。私は、信号がある横断歩道でも、信号が青に変わったからすぐに歩き始めるということは、絶対にしない。双方向の車が止まったこと、あるいは、とまるべくスピードを明らかに緩めていることを確認してから、渡り始めることにしている。理由は単純で、信号が赤に変わったからといって、車が必ず停車するとは限らないからである。これは、私自身が運転しているときにも起こることだ。双方向に横断歩道の信号がある場合には、かなり遠くからでも歩行者用の信号が黄色になれば、車の信号もやがて黄色、そして、赤に変わることがわかるので、スピードを信号のかなり前から落とすことができるが、そうした歩行者用信号がないと、黄色に変わるタイミングがわからず、直前で黄色に変わると、そのまま止まれず急いで抜けることになる。そして、抜けきらない間に赤になってしまうことが、たまにあるわけだ。急ブレーキを無理にかけて止まるとかえって危険なことがあるから、これは、緊急避難的な方法として教習所で習ったことだ。ただ、いつも感じていることだが、黄色の時間が短すぎるのではないかと思うのだ。黄色がもう少し長ければ、減速できずに交差点に入ってしまっても、抜ける時間に余裕がある。
あるいは、私がヨーロッパのいくつかの国で経験した黄色が2度でる方式だと、危険度が低下するように思う。つまり、一方が「青→黄色→赤→黄色→青」となり、他方は「赤→黄色→青→黄色→赤」となる。これだと、歩行者が、赤から青に変わると、すぐに歩き始めたくなるが、間に黄色が挟まると、車が減速しているか、あるいは止まったかを確認する時間的余裕ができるので、私には安全度が高いと思われるのだ。
そうした技術的なことはさておき、むしろ、今回のように、運転しているときに考えごとをしたりしていると、赤に気づかない人が皆無ではない。また明らかに、かなり無理をして渡ってしまおうとする運転手もたまにいる。そのことを充分に自覚していれば、青になったから渡るのではなく、青になって、車が止まってから渡るというように心がければ、被害にあう確率は格段に低くすることができるのである。
私自身、渡ろうとして、スピードを落とさずに近づいてくる車やバイクをみていると、赤になってある程度時間がたっているのに、まったく止まる素振りも見せずに高速で通過していく車を、何度も目の前でみている。横断歩道といっても、信号がない場合には、ほとんどの人は、実際に車が止まってから渡るのではないだろうか。車を運転していて、車の状況を確認せずに、横断歩道だから渡っていいのだ、という感じで渡ろうとしている歩行者をみかけたことはない。しかし、信号があると、青だから渡れると思い込んで、車の確認などまったくせずに渡っている人は、たくさんいるのだ。もちろん、ルール上は正しいのだが、ルールを守らない人もいることは、絶えず意識しておく必要がある。
多額の賠償金が支払われ、運転手は罰せられるだろうけど、失われた命が戻るわけではない。命を守るためには、特に交通事故にあわないためには、ルールを守らない人がいることを充分に意識しながら行動する必要があることを強調しておきたいし、子どもにはそのように教えておくべきだ。