感染症対策として、全国を対象とした外出自粛などという、少なくとも現在生きている人たちにとってはまったく未経験のことが進行しており、いろいろなことが起き、かつ、見解の対立が起きている。対立がないにしても気になることが出てくる。
まずは、感染を知りながら、そして、外出しないように要請されながら、高速バスにのって、実家から東京に移動した女性の件。羽鳥モーニングショーでは、罰するような規定を作るべきだなどという意見もみられた。これは、欧米のような罰則付きのロックダウンを可能にすべきという見解にもつながる。田原総一郎が安倍首相に会いに行って意見交換をした際、なぜ緊急事態宣言が遅れたのかに関して、安倍首相は、多くの人がロックダウンを主張したのだが、そういう私権の制限は現憲法ではできないと説得するのに時間がかかったというようなことをいっていたそうだ。本当かなと多少疑問に思うところもあるが、真偽にかかわらず、ロックダウンの権限を政府にもたせることは反対である。従って、この女性を刑事的に罰するようなことをすべきではない。ペットが心配という理由は、ペットなる存在が好きではない私には、到底理解できないが、個人にはそれぞれの価値付けがある。パチンコ問題もそうだが、自粛要請で、かつ、自粛したとしても充分な補償をしないのだから、強制することはできないし、また、できるとする法的規定を設けるべきではない。充分な補償をすることで命令できるならばよいともいえるが、もし補償をしっかりするならば、要請だけで充分な効果があるはずである。
しかし、確かにかの女性は大いに問題とすべきであろう。もし、彼女の乗車によって、バスの運転手が感染したならば、運転手とバス会社は損失を被ることになるから、民事訴訟を起こすことができる。その際、検査主体の外出自粛要請があったことが確かであるならば、バス会社の求めに応じて、検査主体に対して、個人情報の開示を求めることも可能と解釈できるのではないか。ネット上で個人情報を含めた非難などをすることは、許されないと思うが、被害者が損害賠償を求める権利はあると思う。感染を知らずにというのであれば、故意ではないから仕方ないと思うが、感染症を知り、自粛要請されているにもかかわらず、あえて公共交通機関を使うことについては、その結果他人に損害を与えた場合には、賠償する責任があると思う。パチンコ店についても、もしそうした被害が起きた場合には、なんらかの民事的措置をとることは、宣言できるのではないか。
次は、ごみ収集についてである。
現在でも、地域のごみ収集は予定通り行われていて、本当に大変だろうと思う。ごみがウィルスに汚染されていない保証はないわけで、確かに収集する人たちは、恐怖だろう。しかし、今回の件が起きる以前から、日本のごみ収集の方式については、あまりに非人間的だと思っていた。ヨーロッパ、少なくとも、私が住んだことがあるオランダやしばしば訪れたドイツでは、人が直接ゴミの袋に触れて、収集車に投げ入れるなどという行為は必要なかった。ゴミは大きな頑丈なボックスに入れて、指定の日時に指定の場所に置いておくことになっている。ボックスには小さな車と運ぶために便利な把手がついており、収集の人は、ボックスを収集車にあうような位置に置くと、車自体がその把手を掴んで、大きな車の収集容器のなかにごみを入れてしまうようになっている。その際作業員は、ボックスの把手に触るだけで、ごみ自体にはまったく触れることがない。また、自分が力をだす必要もない。日本の収集方式では、烏などが袋を食いちぎることがあるし、けっこう思いごみ袋をどんどん放り投げる必要があるので、非常にしんどい労働である。まして、ここに感染症の問題を加わるなどということになっているので、本当に厳しい仕事になっている。これを機会に、こうした収集方式を、もっと作業員にやさしい方式に変革すべきではないだろうか。