自転車巻き込み事故は、いつも車の責任か 自転車免許制度は必要だ

 トラックと自転車の事故は、最悪の事態になる場合が少なくない。先日、18歳の女子高生が自転車を運転していて、左折トラックに巻き込まれ死亡する事故があった。トラック運転手が逮捕されたとニュースで報じられていたが、どのような状況で事故になったのかは、説明がなかった。車を運転していると、とにかく、自転車にはひやりとさせられることがある。私も、人身事故一歩手前になったことが2,3回ある。いずれも、スピードをだしていなかったために、事故にならなかったが、自転車がいたら、とにかく注意するようにしている。
 しかし、上のような事故報道に接したとき、本当に運転手が悪いのか、いつも気になる。もちろん、そういうこともあるだろうが、車を運転するには、試験があるし、また、事故が起きたら大変だから、ほとんどの人は注意しながら運転している。他方、自転車の場合、まるで交通法規など知らないというような、乱暴な運転をする者が少なくない。統計によると、車と自転車の衝突事故では、自転車側に、違法な運転があったとされるケースが60%以上あるのだそうだ。
 私自身、一番注意をしなければならないと感じるのは、左折のときだ。
 信号が青でも、左折する車は徐行するのが普通だ。歩行者がいれば、もちろん、止まる。しかし、渡るだろうと予想される歩行者が、まだ、交差点に達するには距離がある場合には、そのまま左折する場合もある。そこは、運転手の状況判断だろう。歩行者の場合には、通常歩道を歩いているから、車から見えるし、歩いている距離と速度の関係で、左折できるかどうかの判断に迷うことはあまりない。迷ったら止まる。
 ところが、自転車の場合には、車のほうで左折可能だと判断して曲がろうとしているのに、スピードをだして、交差点に入ってくる場合がある。自転車はスピードを出し、車は徐行しているから、自転車が通過し、事故すれすれになるが、おそらくこのケースでは回避されるだろう。また、この場合には、車側から自転車の動きを察知することが可能だ。
 おそらく、上の事故のケースは、自転車が車道を走っていた場合ではないだろうか。自転車は、軽車両だから、車道のひとつのレーンのなかで、他の車と並走してはいけないはずだ。しかし、平気で並走する自転車も少なくない。自転車が、トラックと並走せず、トラックの後ろを走っていれば、左折するトラックに巻き込まれる可能性は、まずないといえる。しかし、自転車のなかには、車と並走するものがある。この場合、その位置によっては、車の運転手から自転車が見えないことがある。私自身が、まだ若いころ、自転車を運転していて、完全に横で並走していたわけではないのだが、多少重なっていたときに、車がさっと左に寄ってきたことがある。非常に怖かった。そのときは、横に自転車がいるのに、何故そんなことをするのかわからなかった。まだ車の免許をとっておらず、運転をしたことがなかったのだ。運転するようになって、運転手からは、私が見えなかったのだということがわかった。
 見えなければ、左折するときに車は徐行したとしても、止まらずに左折するだろう。少なくとも、歩行者がいなければ。こういうときに、巻き込み事故が起きるのではないだろうか。
 トラックが走っている横を、自転車が並走するのは、違反走行だろう。もちろん、自転車が先に走っていて、車が追いこしをかけることなく、並走状態にはいったら、車が違反している。しかし、そういう場合には、車の運転手は、横に自転車がいることが分かっているから、左折のときには、充分注意するだろう。
 こうして、考えてくると、左折時のトラックのような大きな車が自転車を巻き込む事故は、自転車側に違反があることが多いのではないかと思われるのだ。
 車を運転する人は、自転車の危険な走行にどきりとした経験をほぼもっているだろう。そうして感じるのは、あまりに交通ルールを無視した運転をする自転車が多いことだ。いまは、自転車側には、義務的な免許制度はない。講習の延長のような免許付与する自治体はあるが、別になくても自転車に乗ることは可能だ。だから、教育的に行っているといえる。
 義務的な自転車の免許制度については、賛否両論あるという。私は賛成派だ。
 反対派の意見は、
● 専用道路などの自転車の環境整備が先
● 教育すれば良いことで免許の必要は無い
● 免許制度導入のコスト
● 効果があるとは思えない
● 取り締まりを強化すれば良い
ということのようだ。
 自転車専用道路は、私はオランダに暮らしたことがあるので、切実に感じるが、しかし、日本の現状では不可能だろう。少なくとも、日本全国に設置するのは無理だ。しかも、日本は坂が多い国なので、交通手段としての自転車には、限界がある。教育だけで効果があるとも思えないし、コストがかかることがいけないから、社会の免許制度自体が不要になってしまう。必要なことには、コストがかかっても仕方ない。
 やはり論点は、効果と取締の問題だろう。
 私は、効果はあると思う。免許制度を前提にしてこそ、取締の効果があるし、免許を前提としてない取締は、単なる注意になってしまう。
 免許制度があれば、罰則・罰金などの措置が可能になる。また、事故のときの責任も分担することになる。
 もし、免許制度が効果がないと主張するならば、免許制度すらないときには、もっと違反運転が多くなるはずである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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