安倍首相が全国の学校休校を要請 逆効果の可能性はないのか

 安倍首相が、来週月曜日(3月2日)から、全国の小中高や特別支援学校の休校を要請したと報道されている。春休みまでということだから、事実上、今年度の授業は終わりということになる。極めて突然のことであり、またまた、繰り返されたやり方という感じがする。そして、本当に効果があるかどうかわからない。しっかり検討された結果という感じが全くない。
 繰り返されたというのは、徴用工への賠償命令の判決がでたあとの対応に似ているのだ。韓国はあの時期、次々に日本に対する不当な行為をやっていた。反韓ではない私でも、そう感じている。あのような事態があれば、ひとつひとつきちんと対応して、抗議だけではなく、有効な対抗措置をとる必要があるのに、かなりの間、単なる抗議の伝達で済ませていたように、国民には見えていた。もちろん、非公開のルートでの交渉はあったろうが、対抗措置はとられなかった。それが、あるとき、堪忍袋の緒が切れたかのように、輸出規制に踏み切ったわけである。しかも、当初、徴用工判決への対抗措置であると明言していたにもかかわらず、途中から、無関係で安全保障上の問題だなどと説明を変えている。つまり、当初から適切な措置をきちんととる必要があるのに、それをやらず、あるとき、爆発したように、大きな対応策をうちだして、かえって混乱させてしまうという手法である。これは、起きている事態に向き合わず、当初は無視しているのであるが、だんだん相手はつけ込んでくるわけで、ことが大きくなる。そうすると、対応策への批判が強くなってくるから、どかんと大きな対応策をとって、「やっている」姿勢を示すのである。
 今回の新型コロナウィルス対策についても、安倍首相は、ほとんど動かないままであったことは、いろいろと報道されている。加藤厚労相に丸投げしていると自民党内でも批判が強まっているという。
 最初から、対策には、大きな問題があった。クルーズ対策はその最たるものだ。日本国内でも、クルーズ船内でも、やがて感染拡大が起きることは、早くから言われていた。そして、何度も首を傾げざるをえないやり方がとられて、どんどん拡大してしまった。いちいち列挙する必要はないだろう。
 そうして、いきなり、全国の学校の休校要請だ。誰もが驚くだろう。
 率直にいって、それこそが大きな混乱をもたらすだろうし、また、効果的なやり方とは思えない。
 圧倒的多数の子どもたちは感染しているわけではない。彼らが一月も学校が休みになったら、どのように過ごすだろうか。不要不急の件以外は外出しないように、などといって、それを子どもが守るわけがない。外出はかならずするだろう。しかも、親の目の行き届かないところで。しっかりと検査をして、感染可能性のある子どもを、確実に休ませるほうが、感染していない子どもだけが学校にいるという点で、安全な可能性も高い。これは、可能であるにもかかわらず、検査は無理なのだという説明をして、検査体制をとらずにきたことのつけともいえる。
 保育園は、開くのだそうだ。幼稚園や子ども園はどうなのか。学童保育はどうか。学校を休みにしても、学童保育を開いたら、理屈上は効果半減ではないか。
 少しでも検査が必要なときには、検査が可能にすること(外国で開発された検査キットもどんどん活用すべきだ)、そして、陰性の結果がでるまでは学校を休むこと、こういう措置をとることで、休校にしなくても、危険を回避できる地区のほうが多いはずだ。
 地域や学校で、きちんと状況判断して、休校にすべきかどうかを決めてほしいものだ。一月学校を休みにするということは、その間の学習が不十分なものになるということなのだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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