違法な措置でなった検事総長が、違法行為を裁けるのか

 毎日新聞(2020.2.23)によると、岸田文雄自民党政調会長が、NHKの番組に出演して、黒川東京高検検事長の定年延長問題に関して、政府の説明が変化しているところがあり、検察への信頼を取り戻すために、しっかりと説明をする必要があるという趣旨のことを述べたという。説明の変化は、国会で議論されている中で、森法務大臣の説明が混乱していることをさしているのだろう。しかし、はっきりいって、「しっかりした説明」など不可能だろう。何故なら、いくら言い繕っても、違法行為に間違いないのだから。森法務大臣は、弁護士である。弁護士であるならば、黒川氏の定年延長を決めた閣議決定が、違法行為であるこは、充分にわかっているはずである。最も、カルロス・ゴーンの逃亡に際しての記者会見で、とんでもない間違いをしてしまったことを考えれば、本当に分かっていないという可能性もないではないが、常識的には、分かっているが故の、説明の揺れだろう。あるいは、下手な答弁をすることで、閣議決定に抵抗しているのかも知れない。皮肉ではあるが。
 そして、AERA.dotによると、2月19日に開かれた、全国の法務・検察幹部が集まる「検察長官合同」で、神村検事正が、かなり明確な批判を行ったという。(https://www.msn.com/ja-jp/news/national/東京高検の黒川検事長の定年延長問題-検事正の乱「国民からの信頼が損なわれる」/ar-BB10j67T?ocid=spartandhp)
 当の黒川氏もいたということで、会場は凍りついた雰囲気になったそうだが、実際には、少なくない人が、心の奥では同感であったろう。検察の仕事がやりにくくなることは、間違いない。表題にしたように、もし、黒川氏が、稲田検事総長の退任に伴って、時期検事総長になったとしたら、違法な措置で検事総長になったトップがいて、その下で、犯罪者を裁く、犯罪を非難することが、できるのかということだ。
 検察は、過去国民の批判を強く受けたことがある。記憶に新しいのは、当時厚労省の役人だった村木氏を逮捕した事件が、実は検察官の証拠偽造によるものだったことが明らかになった件である。(大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件)このことによって、検察への非難が強く起り、その後検察は厳しい目に晒された。その後、信頼が回復したのかどうか、フォローしているわけではないので、自信をもっていうことはできないが、私個人としては、検察への信頼は低下したままだ。東京電力の福島原発事故への東電幹部への扱い、森友問題での財務省の不始末への扱いなど、権力や権力に近い大企業に対して、あまりに甘い対応等、本来行うべき検察としての責務を果たしているようには見えないことがある。
 もちろん、まだ黒川氏が検事総長になったわけではない。これまでは、三権分立の理念のコロラリーとして、検察人事は、検察の内部的決定を、そのまま閣議でも承認してきたとされている。だから、現在の稲田総長が、これまで通りの慣例にしたがって、本来なるはずのない黒川氏を外した人事を決めて、それを承認するように、内閣に提示すれば、その結果、安倍内閣が結果として、それを退け、黒川氏を検事総長に任命したとしても、検察全体への信頼は、まだ大きく損なわれることはないかも知れない。しかし、この会議決定が、明らかに、黒川検事総長を生むためのステップであることは明らかだから、それに屈する形で、黒川氏を時期総長に内定して申請するとしたら、やはり、検察は政府の追従機関に過ぎないという印象にならざるをえない。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です