弘中・高野弁護士への懲戒請求はおかしい

 ゴーン氏逃亡に関連して、弁護人を務めていた弘中弁護士と高野弁護士に対する懲戒請求が都民からだされたと報道されている。しかし、これはいくらなんでも、おかしな話だ。弁護士は、被告人の弁護を引き受ける人であって、被告人の監視をする人ではない。保釈条件が、弁護士からだされたから、それが守られなかったのは条件をだした弁護士の責任であり、懲戒に値するという理由のようだ。
 しかし、基本的に証拠固めが終わったら、保釈するのが、「当然」なのであって、その保釈を認めようとしない検察が批判されるべきなのである。なかなか認めないから、条件を弁護士の側からだしただけであって、しかも、その条件を守らなかったわけではないだろう。ゴーン氏が家を出た映像は、監視カメラに写っていたのだから、監視カメラはきちんとつけていて、条件を守っていたことになる。監視カメラを外してしまって、そのために外出がわからなかったというのならば、外した人間に責任があるだろうが。
 むしろ、GPSで追跡できるような提案をしたにもかかわらず、そして、ゴーン氏がそれを受け入れていたにもかかわらず、裁判所が却下したことのほうがよほど問題である。なぜ、裁判所の裁判官への懲戒請求をださないのだろうか。もし、追跡ツールをつけさせていたら、逃亡できなかったはずだ。
 パスポートがどのように扱われたのか、不明な点があるが、報道によれば、ひとつだけパスポートをゴーン氏に鍵をつけてであるが、返したとされ、それが入国に使われたらしいのだが、返却に関しても、裁判所が許可しているとされている。
 だから、弁護士がやるべきことを怠ったとか、やるべきでないことをしたというようなことはないはずである。少なくとも、報道されている限りでは。それを、不当に弁護士の役割を拡大解釈して、懲戒請求するなどということは、弁護士会としては認めるべきではない。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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