次々に出てくるセブン-イレブンの問題

 セブン-イレブンの問題が今年はずいぶんと出てきた。他のコンビニも同様なのかはわからないが、セブンのやり方には、特に以前から疑問をもっていた。最初は、娘が大学に入ったときに、近くのセブンにバイトの申し込みに行ったときのことだ。もうずいぶん前のことだ。
 面談から帰った娘は、セブンでのバイトはしないと即座に言った。それは、途中でやめた場合には、解約金を支払う義務があるということを聞いたからだ。期間と、その額は忘れてしまったが、たぶん、1年以内で2~3万くらいだったと思う。大学に入ったばかりで、バイト経験などはなかったのでびっくりしたろうし、私たち親も驚いた。期間と額については多いに疑問だが、直ぐにやめられては困るという事情はわかる。というのは、コンビニのレジは、かなり大変な作業で、レジ打ちも単に金額を打って、レジの計算にまかせているわけではなく、客層の判断などもあるし、また、配列されているさまざまな商品を、かなり正確に頭にいれておく必要がある。とくに大変なのが、煙草の銘柄を憶えることだそうだ。煙草を買いに来た客に、またせずにすばやく注文の煙草をとってくるというのだけでも、かなり大変のようだ。もたもたしていれば、怒鳴られるだすろう。そういう作業をしっかりと教える必要があり、憶えてもらうまでには、それなりの時間とコストがかかるのだろう。だから、そうそう簡単にやめられてはこまるのも確かだ。
 しかし、いきなりそういうことをいって、しかも、長期間継続しなければならない、というのは、言い方にもよるが、店の高圧的な姿勢を感じてしまうのも仕方ない。教育期間といっても、付きっ切りで説明する時期などは、それほど長くはないはずで、全体をバイト一人に任せるはずもないのだから、まだ憶えていない部分はベテランがさっとやり、そのうちに慣れさせるようなやり方をとっていると思われる。~以内にやめたら**円の解約金だというのは、いかにも、雇用主側だけの都合を押しつけている。そして、そういう姿勢が、随所に現われているのがセブンだ。この場合は「店」だが、それも本部の姿勢の反映だろう。
 最大のものが、食品の賞味期限前後の扱いだ。スーバーなどは、生鮮品などは夕方になると値下げする。利益が減っても、売ることに全力をあげる。しかし、コンビニでは、セブンに限らず、廃棄させる。コンビニには防犯カメラがいつも作動しているが、あるカメラは、客による犯罪を防ぐのももちろん目的になっているが、それ以上に、店員が、こうした廃棄処分を守らずに、売ったり、あるいは廃棄するのだから、自分で持って帰ろうとするのを監視するためのだと聞いたことがある。実際にバイトをしていた人から聞いたので、間違いないだろう。少しでも、怪しげな動作をすると、(つまり、廃棄せずに、自分で食べたり、持ち帰ろうとするようなこと)直ぐに本部?の監視担当から連絡が来るそうだ。問題は、そうした杓子定規な押しつけの形態だけではなく、そうした食料品の代金は、仕入れとして店が本部に支払っているという点である。店が代金を支払っている以上、店側の物なのだから、店の判断で、廃棄するなり、値下げして売るなり選択をしてもよい、というのが、社会常識ではないか。そうした当然の選択権を奪って、「契約条項」として、そのようなやり方を強制しているのは、本部側の一方的で、かつ大きな利益がそれによって生じるからだ。セブンは、常に賞味期限内の物を売っているという評判をたてることができる、賞味期限を厳格に、かつ短く設定しておけば、どんどん消化される。つまり、本部にとっては、廃棄されるのも、売れるのも、同じことだ。店側にとっては、廃棄するのと、売れるのとでは、100%違う。廃棄は損失であり、売れるのは利益なのだから。しかも、店におく品は、本部が決めるのであって、店が個別に決める余地は極めて少ない。これだけとってみても、本部がいかに横暴かわかる。
 そして、今年になって問題になった24時間営業問題である。そもそも、すべてのコンビニが24時間営業しているなどというのは、実に経済的損失である。日本の生産性が低いことは、世界的に有名になってしまったが、コンビニの24時間営業も、その生産性低下に多いに貢献していることは疑いない。利用客にとって、いつでも開いていることは、もちろん便利だが、それだけで本部が24時間を強制してきたわけではない。本部が決めた品物を、本部にとって最も効率的な配達をするためには、すべての店が常に開いていることが都合よいということだ。もし、開いている時間にばらつきがあったら、それを考慮して、配達スケジュールを決めなければならない。それは確かに、面倒だろう。今問題になっている、残業代未払い問題などは、言語道断というべきだ。
 こうして、セブンで働くひとたちに、大きな時間的、肉体的、経済的負担が押しつけられているのだが、他方、消費者にとっては、非常に都合がいいシステムを保障していることになる。食料は、消費期限をこえているものが売られていることはないし、いつも開いているから、買いたいときに、いつでも買える。日常生活に必要なものは、種類は少ないが、ほとんど揃っている。だから、多くの人がコンビニを利用するし、コンビニが栄えているように見えている。しかし、それは、店を犠牲にしていることに変わりはない。
 近年、「持続可能性」が重視されているが、こうしたコンビニのあり方が、「持続可能」であるとはとうてい思えないのである。持続可能でなければ、いつか破綻して、結局、それまでえていた便利さが低下するはずなのだ。経済活動というのは、一方だけが、大きな利益をあげて、他方が損失ばかりしていたり、あるいは極めてわずかな利益しかないとすれば、それは、やがて、利益をあげている方にも、打撃的な事態が起きる。既に、そうした無理は現われているというべきだろう。以前はあまりなかったと思うが、食料品の棚に品がほとんどない、というような事態に、時々ぶつかることがある。
 セブンが本当に長期的なコンビニの王者でありつづけることを望むならば、「店」(オーナー)の意向をもっとずっと尊重するように、方針転換すべきである。仕入れの品の構成、廃棄か値下げか、営業時間等々、実際に販売作業をしている人の意向を無視したやり方が、長く続くはずがないし、いろいろ問題が明るみに出れば、それだけセブンの評判やイメージが悪化していくことは避けられない。私自身は、弁当が常に賞味期限内のものであるよりも、多少過ぎたものが値下げされて売られているほうがよいし、深夜開いていることを望んでいない。もちろん、いろいろな人がいるわけだから、店の立地条件やオーナーの意向を考慮して、オーナーの裁量の範囲を拡大することのほうが、ずっとイメージがよくなるだろう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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