首里城火災でなんとなくすっきりしないこと

 私自身沖縄を訪れたことがないので、他のひとほどの入れ込みがないのだが、完成して間もなく消失というのは、なんとも残念なことだ。また、ごく最近完成した建築物なのに、これほど簡単に焼失してしまうのが不思議だ。火災後、既にさまざまな動きがある。それがどうもすっきりしないのだ。
 まず、火災が起きて、なんとも早い時期に、沖縄知事が官邸を訪問して、協力を要請し、官房長官が最大限の協力を約束した。そして、間もなく再建に関わる援助をする旨の閣議決定までされた。
 他方、こうしたことに敏感に反応するyahooニュースの書き込み、例によって大量だが、納得できる書き込みもあるが、そうでないものも多い。だいたい次のような内容がほとんどである。
・管理が国から県に移った直後に起きたのだから、県の責任であり、県が再建するにせよ負担すべきである。
・県がイベントなどを許可したことが、背景にある。
・洪水などの災害のほうが問題で、自然災害への援助に予算を使うべきで、再建などする必要がない。 
 大体このような意見が圧倒的であった。しかし、フェイク的要素もある。イベントは、県に管理が移管する前から行われていたので、県の管理になったことが原因ではなく、しかも、イベントを行っている業者は、かなり電気などに気をつけているという指摘もある。窪田順生氏によれば、火災の真の原因は、入場料が低く抑えられているために、防災などに充分な費用をかけられないことにある。海外ではこうした重要な観光施設では、入場料が日本の3倍程度であり、そのために充分な防災設備が設置されているという。今回問題になった、スプリンクラーが設置されていなかったというのも、木造だから無理だというのは間違いで、木造でも可能だと窪田氏は主張している。確かに、何故あのような建築物に絶対必要なスプリンクラーが設置されていなかったのか疑問であるが、これは、当初からの設計上の問題だから、おそらく、入場料の多少によるものとも思われない。しかし、こうした原因に関する議論は、今後、今回の火災原因の究明と合わせて、しっかり議論していくべきものだろう。

 私がすっきりしないのは、民間の意見では、かならずしも再建が必要という方向に傾いているわけでもないのに、政治的に再建を当然視し、政府は調査であろうが、予算をつける意思決定までしていることである。玉城知事が自分で出向いたのだろうか、それとも、官邸が呼んだのだろうか。報道をみている限り、どちらなのかわからない。どちらにしても、普段基地問題であれだけ対立しているのだから、あの迅速な対応が不自然だと感じざるをえないのだ。原因がまだわからないし、民意もわからない状況のなかで、普段対立している県知事が、官邸に援助のお願いにいくというのは、私には可能性が少なく、官邸が呼んだのではないかと想像する。もちろん、間違っているかも知れないが。官邸が、援助について話し合うということで呼んだのだとすれば、当然辺野古への反対運動を弱めるためだろう。政治的な思惑で、文化財の不幸を利用するというのも、(あくまで想像だが)なんともえげつないが、それが政治というものなのだろうか。 
 過去何度も焼失しており、近年は災害による被害が多大であることを考えれば、直ちに再建というよりは、多少の時間をかけて、再建すべきかどうかの議論が必要であるように、私には思われる。燃えた建築も再建されたものであり、しかも、再建の関係から、1年も経過していない時期である以上、議論は不可欠ではないだろうか。それが、再建ありきで、政治的に話が進んでいるのは、どうしても、裏取引が進んでいるのではないかと危惧される。もちろん、こう書くのは、辺野古が唯一の解決策だとはまったく思っていないからだが。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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