学術会議は抵抗しないのか

 国会の論議が始まり、当然であるが、学術会議の任命拒否が野党によって質問された。しかし、菅首相の答弁は、予想されたもので、問題の本質を逸らしたものだった。
 学術会議に批判的であるひとたちからも、ほぼ共通して疑問としてだされているのは、拒否した理由はいうべきだということだ。安倍元首相もそうだったが、「人事のことだから、詳細はいえない」というのは、勝手な理屈だし、現代の社会的認識では妥当ではない。確かに、以前は人事は上が決めて、その理由などは、いわなかったのかも知れない。しかし、いまでは、たとえば、入学試験の合否でも、不合格になった人は、合否の元になった判定を知ることができる。教員採用試験でも同様だ。
 教員の評定についても、本人の自己評価が予め提出され、重要なことがあれば、結果の理由が示されるのが普通であると聞いている。民間企業などでは、いろいろあるだろうが、学術会議のような人選については、通常のルートで選ばれたのに、任命権者がそれを拒否した場合には、理由を示すのが当たり前のことである。しかも、学術会議は、独立機関であり、会員は、内閣総理大臣の部下ではないのだ。
 理由を言わないのは、いえないからであるというのは、明確だろう。つまり、政治的な批判者だから、拒否したから、理由がいえないわけである。

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ソ連映画「戦争と平和」を見て

 久しぶりにソ連製映画『戦争と平和』をみなおした。とにかく長い。4部まであって、全部で7時間以上かかる。国家の総力をあげて作成した映画という感じの作品で、とにかく、動員した物量、人員に圧倒される。しかし、映画としては、どう考えても駄作としか考えられない。アマゾンのレビューをみると、半分が絶賛だが、厳しい見解も多数ある。大分前に見たときには、けっこう感激したのだが、今回見直したときには、むしろ、何のために作った映画なのかが、疑問に思えてきた。1812年の戦争を、第二次大戦の祖国大防衛戦争になぞらえ、アメリカとの冷戦に負けない姿勢を誇示しようとしたのか、と思いたくなるような作り方を感じるのは、私だけではないだろう。そういう部分は辟易する感じだ。
 もちろん、国家的威信をかけて制作したほどだから、素晴らしい点が多数ある。 “ソ連映画「戦争と平和」を見て” の続きを読む

「のぼうの城」と忍城

 すっかりステイホームの生活が身についてしまったので、それではいけないと、ときどき妻とドライブに出かける。1月ほど前に、埼玉の観光案内で見て、忍城に行った。ところが、途中渋滞に巻き込まれ、着いたときには既に入館時間を過ぎていた。我が家からはかなり遠いのだ。しかし、コンクリート建てだが、なかなか素晴らしい三層の建物があってよかったので、ぜひもう一度と思っていた。それで昨日、再び忍城(埼玉県行田市)を訪れ、今回はじっくりと博物館を見学した。忍城はなんといっても、石田三成の水攻めで有名だが、江戸時代を通じて、親藩・譜代の代表的大名が居城としていたとたろで、特に戦国時代から、江戸初期には、名城のひとつだったそうだ。近くに、埼玉古墳群があり、そこも去年見に行ったので、なかなか歴史好きには魅力的なところだ。

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学校でのICT活用に欠けている論点 キーボード

 コロナは教育にも大きな影響を与えたし、また今後も影響は拡大していくだろうが、その焦点のひとつがICT活用にあることはあきらかだ。3カ月以上の授業の空白を、オンライン教育で埋めることができたところと、まったくできなかったところでは、大きな差が生じたといえる。もともと、GIGA構想なる、すべての子どもに一台という政策が公表されていたが、コロナでその動きが加速されそうだ。しかし、そこには、大きな疑問もある。実際に活用能力がないところに、機器だけもたせても、どれだけ効果があるのか。本当に教育現場での活用が十分に検討されたなかで、出てきた構想なのか、等々。人によっては、いろいろな疑問があるだろう。私が、構想の文章を読んだときに、最初に感じたのは、ああこれは、国内のコンピューター企業へのてこ入れ、助成が目的なのかということだった。

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大学蔵書の廃棄 場所がないときはどうすればいいのか?

 朝日新聞2020.3.17に、「『大学蔵書を大量廃棄』梅光学院に作家ら106人抗議」という記事がでている。山口県下関にある梅光学院大学が、図書館の蔵書を廃棄していることに、作家たちが抗議しているという記事だ。
 記事によれば、大学は、36万冊の蔵書があるが、7年前から25000冊減っているという。「梅光学院大学図書館を守る会」という団体が、抗議しているわけだが、おそらくその団体の話だろうと思うが、
・大学の研究論文や調査報告書を掲載した紀要7-8万冊がすべて廃棄されている。
・資料価値のある新聞縮刷版や辞書辞典類、図録、江戸後期の和古書などの廃棄を確認。
ということのようだ。そして、記者会見で、「本は大学だけのものではない。日本の歴史が詰まっている。電子書籍もあるが図書館という根本のところで紙で所蔵しないのは問題だ」と指摘したという。そして、中原館長自身が、「図書館は未来の読者への責任を負っており、無秩序な廃棄はやめるべきだ」と述べたという。
 さて、この記事をみて、みなさんはどう思うだろうか。 “大学蔵書の廃棄 場所がないときはどうすればいいのか?” の続きを読む

芸術に対する公的補助

 「芸術に公金、広がる波紋=市劇場専属の舞踊団―首長交代で一時存続危機・新潟」という時事通信の記事がでている。(2020.1.19)公共劇場の専属舞踊団Noismへの補助金の打ち切りが検討されているというものだ。一端打ち切りの方向になったようだが、条件付きの活動の継続7が決まっている。それは当面のことで、今後はどうなるかわからない。
 Noismは、2004年に公共劇場「りゅーとぴあ」の専属舞踊団とてり、13人のダンサーを抱え、生活費と練習場所が保障されている。前市長の意向だったようだが、市長が変わることで、状況が変わったということだ。日本ではよくあることで、私が所属している市民オケにおいても、まったく規模が違うが、市長交代で状況変化が起きるという経験をしている。
 地域貢献をすることで、22年8月までの継続が決まったということだが、おそらく、継続はかなり難しいのではないだろうか。記事には、次のような説明が付されている。
 「公共劇場の専属芸術集団は欧米では一般的だが、日本では「多大な予算が掛かる」と敬遠され、ほとんど例がない。
 新潟国際情報大の越智敏夫教授(政治学)は「文化事業は価値を数字で測りにくく、予算削減の対象になりやすい。一回やめると復活は難しい」と話し、行政による文化・芸術活動の支援の難しさを訴えた。」
 芸術活動に対する公的補助の問題は、愛知トリエンナーレでも大きな対立を生んだが、非常に難しい論点を多く含んでいる。
 まず、欧米では、公共劇場に専属芸術集団が属しているのが一般的だと書かれているが、私はそうは思わない。 “芸術に対する公的補助” の続きを読む

アイデア盗用なのか 新作寅さん、横尾氏の抗議を考える

 寅さんシリーズは、前半はとても面白いと感じ、よく映画館にも見に行っていたが、後半になると、なんとなくつまらなくなり、全然見ないようになってしまった。DVDなどでも見ていない。山田洋次監督が関与している「釣りバカ」シリーズも一度見て、「何だこれ」と呆れて見る気力が失せた。「釣りバカ」に関しては、原作のもつ社会批判、企業文化批判がかなり薄められて、スーさんの恋愛ドタバタのような感じがしたので、がっかりしたのだ。もちろん、その一回が特にそうだったのかも知れないが、最初の印象はやはり抜きがたいものがある。
 寅さんシリーズは、当初は、寅さん自身が恋をして、実らずにまた旅に出ていくというコンセプトだったのが、次第に、恋愛指南的になっていって、いかにも不自然さを感じてしまうようになった。一般的には、人気は高く、渥美清さんが演じられなくなるまで続いたわけだし、またその後、渥美清という存在ぬきに寅さんを撮ることはできないということで、打ち切りになっていた。それが、サバイバル映画が作られ、話題になっているが、思わぬ騒動が起きているようだ。 “アイデア盗用なのか 新作寅さん、横尾氏の抗議を考える” の続きを読む