現在の日本プロ野球界における屈指の名投手である田中将大が、楽天から自ら身を引く形で自由契約選手となり、新天地で活躍したいという希望を表明しながら、いまだに田中を獲得しようという球団が現われないという、たいへん注目される事態になっている。田中がなぜ、自由契約を望んだのか、なぜこれほどの実力ある投手を、どの球団もとろうとしないのか、その他さまざまなことが、実に多くの人によって意見表明されている。そういう中で、楽天球団で起った安楽選手のハラスメント問題が尾をひいているという見方が、多数だされていることにたいしてだろうと思われるが、田中が法的措置をとるかも知れないと宣言したように報道されている。
多くの人が指摘しているように、田中が楽天を退団した際、そしてその後の行動については、田中をとりたいと思っていても、それを躊躇しかねないような行為のように思われている。「自分が必要とされていないと感じた」とか、ニューヨーク・ヤンキースから楽天に移籍したときに、「もっといい条件を提示してくれた球団もあったが」などという発言などは、やはり、私が聞いても、言い方が適切ではないように感じられる。ただ、私の感覚では、やはり「法的措置」発言が、もっとも言ってはならないものだったと思うのである。まさか、実際に提訴したりはしないだろうが、そういう発言をすること自体の悪影響を考えなかったとしたら、少々未熟さを感じてしまう。
詳しいことは私も知らないが、安楽が、後輩選手たちにハラスメントをしたということで、退団せざるをえなくなったわけだが、その際、田中がそのハラスメントを黙認していた、あるいは煽っていた、さらには、自身もかかわっていたというようなことが、ネットでいわれていたわけである。私自身、そうした書き込みを少なからず読んだ。そして、私自身はみていないのだが、そういう書き込みには、安楽のやっているハラスメント行為を映した動画があり、そこでは田中が笑ってみていた姿が映っているという。それを「みた」という複数の書き込みがあったから、おそらく間違いないのだろう。田中自身のいいたいことは、自分は安楽のハラスメントにはまったく関わっていないということだろう、だから、そうした書き込みは誹謗中傷であり、名誉毀損であるということなのだが、そうした動画があれば、法的措置をとっても、田中の主張が通る可能性は低いと思われる。
それよりも、法的措置をとる、などという発言をしてしまうことが、抑圧的姿勢を感じさせてしまう。スポーツの世界では、しごきなどのハラスメント的行為は、とくに以前は日常茶飯事だったし、いまでもそうした体質がある団体も少なくないだろう。そうした背景を考えれば、田中の法的措置発言は、ハラスメント的体質を田中がもっていると感じさせてしまうのではなかろうか。ほんとうにないのであれば、田中はyoutubeをやっているようだし、また記者会見をすることも可能なのだから、そういう手段をもちいて、真実はこうだった、と公表すればよいのである。松本人志がそうであるように、みずから世間に説明せず、法的措置をとると言うことは、(松本は実際に提訴したわけだが)むしろ逆効果、つまり、ほんとうはそういうことがあったのではないか、という受取りをされがちなのである。
球界に居場所を見つけるのは、多くの人が指摘しているように、ネガティブな対応ではなく、自分の努力によるのではなかろうか。