ゼレンスキーが今日来日して、明日のG7の会議に出席するというニュースは、本当に驚いた。最近は、ヨーロッパのあちこちにでかけているので、現在は支援の継続を訴えることに注力しているのだろうが、まさかわざわざ日本にまでやってくるとは思っていなかった。やはり、そうとうな危機感をもっているに違いない。
ゼレンスキーは、これまでにもG7の首脳とはほとんどあっているのだから、そのメンバーにあうことが主な目的ではなく、私はインドの説得にあると思っている。G7といっても、メンバーではない国で招待されてやってくる国はけっこうある。そのなかにインドが入っているわけだ。周知のように、インドはロシアと現在でも密接な関係をもっていて、石油を輸入している、というより、前よりずっとたくさんの石油を買っているわけだ。本当かどうかはわからないが、インドは、その安く輸入した石油をマージンをつけて、他国に転売しているという。そして、そのなかにはEUの国も入っているというのだ。だから、EUは、先日インドからの転売を輸入しないように措置することを確認したようだ。
インドは独立以後から、ロシア、当時はソ連と密接な関係を維持しており、武器を主にロシアから調達しているとされている。その延長で、安い石油を大量に輸入して、自国の利益を図っているということだが、これは、やはり批判せざるをえないことだ。そして、それだけではなく、ロシア製の武器の弱点が露になったことで、そして、ロシアでの武器の清算そのものが滞っていることもあり、今後ロシア製の武器購入は、減らさざるをえなくなるだろう。実際に注文品が入ってこないようでもあるし。
そして、石油の転売については、少なくともEU側は、遮断せざるをえないし、その分インドは輸入量を減らさざるをえなくなるだろう。いかに安く購入したとしても、ロシアにその分支払い分が生じるわけであり、ロシア経済を助けることになる。
インドが招待されて、G7の会議にでるということは、当然、こうしたロシア支援の側面を批判されることは自覚しているのだろう。
筑波大名誉教授の中村氏は、ゼレンスキーは、インドのモディ首相と握手するためにくるのだ、といっているが、友好的な握手が可能かどうかは、まだ当日になってみないとわからないのではないだろうか。ゼレンスキーは、当然、実質的なロシア支援をやめるように要求するだろうし、それに替わってウクライナを支援するように要請するだろう。もちろん、これまでインドはウクライナに敵対的に対応してきたわけではない。岸田首相が、インドからウクライナに飛んだときには、インドが協力したとされている。少しでもまともな政治感覚があれば、現在のロシア、プーチンを全面的に支持することなどできるはずがない。プーチンの盟友ルカシェンコですら、なんとか理屈をつけて、プーチンへの全面的な協力はさぼっている。ほとんど無条件に協力する姿勢を示しているのは、北朝鮮くらいだろう。ロシアが、ウクライナでいかに非道なことをしているかを、直接訴えれば、G7という場で、方向転換を示さないわけにはいかないように、私には思われるが、ゼレンスキーの説得力いかんであろうか。ぜひ握手が実現して、インドがロシアとの関係を希薄化させることを期待したいものだ。
さて、ロシアがどうして独裁的な国家にならざるをえないのか。そのひとつの重要な理由として、国があまりに大きすぎることがある。ロシアにしても、中国にしても、また、広大な領土を抱えていたオスマントルコにしても、すべて独裁国家であった。中国に民主的な政府が生まれたことはなかった。やはり、あれだけ大きな国家では、これまでの民主主義理論では、統治できないのだろう。そもそも民主主義の理論は、都市国家ギリシャで生まれ、島国のイギリスで発達したものだ。わずかに、アメリカという大国があるが、アメリカは、州にかなり強い権限がある連邦国家である点が、独裁下を抑制しているが、それでも、現在のアメリカは、かなり反民主主義的な要素がでている。
やはり国家には、適正規模があるように思うのである。北欧の国家は、地方自治体のサイズについても、適正規模という概念があり、その規模に応じて、人口流入を調整しているといわれている。それは、地方政府が住民サービスを適切に行うためには、どの程度の人口と地域の面積が適正かということでわりだした歴史的経験に基づく基準だが、私がデンマークに滞在していたときには、5万人だといっていた。そして、そうした基本的な生活サービスの自治体を基礎に、より広範囲な国家が成立しているのが、民主主義にとっては必要なのだろう。そして、その自治体の合計した数や広さについても、やはり限界値がある。
そう考えれば、ウクライナ戦争を契機に、ロシアは分裂するのが、そこに住む人びとにとっても、長期的にみれば、暮らしやすい国家を実現する上で必要なことなのではないかと思うのである。