我がオーケストラの演奏会

 今日は、私が所属する市民オケ、松戸シティフィルハーモニーのファミリー・コンサートだった。ということで、いつものようなブログを書く時間がないので、演奏会のことを書きたい。
 曲目は、ウェーバー作曲「舞踏への勧誘」、ビゼー作曲「組曲ローマ」、そして、ブラームスの交響曲2番だった。
 クラシック音楽は、作曲家が創作した楽譜通りに演奏するのが、大原則なので、編曲は滅多に演奏されない。モーツァルトがヘンデルのメサイアを編曲したバージョンがあるが、CD1、2しかでていないし、実際の舞台で演奏されることは、現在ではほとんどないに違いない。モーツァルトが編曲しても、こうなのだから、やはり、編曲ものは異端として扱われる。ところが、2曲だけ、むしろ原曲よりも有名で、頻繁に演奏されるのが、この「舞踏への勧誘」と、ムソルグスキー作曲、ラベル編曲の「展覧会の絵」だ。ともに原曲がピアノ曲、編曲者が有名な作曲家であり、かつすぐれたオーケストレーションの名人である点が共通している。「舞踏への勧誘」は、ベルリオーズの編曲だ。いかにもロマン派の曲らしく、舞踏会で男性が女性を踊りに誘い、若干のやりとりのあと、おどりだす、そして、最後に挨拶して終わるというものだ。男性がチェロに割り当てられ、我がオーケストラには、チェロの名手がいるので、ここは実に、後ろで聴いていてもほれぼれした。

 
 2曲目の「ローマ」は、実際に演奏するまで、まったく存在すら知らない曲だった。私だけではなく、楽団員でも知らない人が多かった。フランスの若手作曲家にとっての大きな賞である「ローマ賞」をビゼーは獲得して、イタリア留学をしている。そのときの印象を描いたといわれているが、再三改訂をしており、楽譜も出版されているので、埋もれてしまった曲ではない。ビゼーは交響曲として作曲したらしいが、当時交響曲は、古い形式と思われていたためか、出版社の意向で「組曲」にされてしまった。しかし、形は、明らかに交響曲である。ところが、ビゼーの交響曲というと、1番が有名で、他にはないとされている。そして、この1番は学生時代の作品で、ビゼー自身があまり重視していなかったらしく、こちらは長い間埋もれてしまった。ところが、20世紀になって発見されて、すぐに人気曲になっている。こちらは、ビゼーらしく美しいメロディーにあふれているが、いかにも、学生が古典的な形式に則って作ったという感じの曲で、極めて魅力的だが、大傑作というわけにはいかない。やはり、ビゼー自身が、ローマのほうを大きな交響曲と考えていたのに、組曲になってしまったために、逆にあまり省みられない状態になってしまったのかも知れない。しかし、この曲を演奏していると、ビゼーというのは、ほんとうに天性のメロディー・メーカーだったのだなと感じる。もっとも長生きしてほしかった作曲家だ。youtubeに全曲演奏があるので、ぜひ多くの人に聴いてほしい曲だ。
 
 最後のブラームス2番は、一般的に明るい、軽やかな曲だという印象がある。カルロス・クライバーがシカゴ交響楽団に客演して、この曲を演奏したとき、オーケストラがブラームス特有の渋さと重厚さののりで演奏したので、クライバーが、この曲は、もっと明るい曲なんですよ、と説明して、そのように演奏させたという。
 ところが、今回の演奏会のプログラム解説で、実は、この曲は、暗い色調が優勢であって、けっして軽やかな明るい曲ではない、という説明をしていた。最近の我がオケの演奏会プログラムは、ファゴット奏者の人がずっと書いており、これがとても面白いのだ。そして、一般的にいわれていることを解説しつつも、一味違う観点から論じているのが、参考になる。だから、今日も昼食のときに、ちょっと解説に関して話をした。どこが暗いかというと、下降音形が頻出し、そこに重きが置かれているというのだ。もちろん、音楽は下降ばかりはしていられないわけで、下降すれば上向もするのだが、音楽的にどちらが主要かというと、確かにこのブラームスの2番は、下降音形が目立つ。チェロ弾きとしては、とても珍しい、チェロによって長々と主題が演奏されるのが、2楽章だが、これも、はっきりと下降音形から始まる。そういう意味では、どうしても重厚に弾きがちなのだが、やってきた指揮者は、いずれも、もっと軽く、涼やかに演奏してほしいというのだが、どちらが、曲にふさわしい解釈なのだろうかと、考えてしまった。
 確かに一番などと比較すると、オーケストラの響きも薄めに作られているし、軽い曲なのかも知れないのだが。
 
 次回の演奏会は、ベルリオーズ「ローマの謝肉祭」、ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」、シベリウス「交響曲2番」だ。シベリウスは強烈に速い部分があるので、猛練習が必要なようだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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