子どもの貧困について -夏休みに行ったことー

夏休みにやったこと

また、日本の子どもの貧困問題が改善してこない大きな原因に国全体での教育への公費負担が少ないことが挙げられると考える。日本の未来を背負っていく子どもたちに将来の出費として十分なお金を用意してあげなければならないにも関わらず、日本にはほかにも高齢化という重大な課題もある。高齢者の社会保障にかかるお金が増大しているからこそ国はそちらにも十分なお金を振り分けなければならないが、教育への出費をこのまま削減し続けてしまったら大切な子どもたちが育つ環境すら奪ってしまうことになると考える。現在の日本の公費の歳入・歳出について詳しく調べてみると、以下のような配分になっている。

歳入

・国民からの税収入 6割

・公債金      4割

歳出

・社会保障費(年金・介護・医療など)、国債費、地方交付税交付金  7割

・公共事業、教育、防衛   3割

高齢化の影響により、日本の社会保障費は年々増加している。近年の消費税5%から8%への増税分もすべて社会保障に充てられている。

 

ここまでに教育に充てられる公費が少ないことが分かったが、日本の教育は私費負担で賄われている部分が多いと考えられる。公費では児童手当や児童扶養手当、保育所の運営費などの児童福祉サービス費、高校までの授業費などが主であり、衣食住にかかわる経費や医療費の一部は私費負担になっている。さらに、児童手当や児童扶養手当を受けるにもさまざまな条件を通過していることが不可欠であり、教育への国からの援助というのは期待できないと考えてしまう。例えば、児童手当を受けたいと考えている子供が3人いる家庭は、所得制限が年収ベースで960万円以下であることが基準とされる。ただ、この額が本当に安定した生活を行える額としては足りないのではないかと感じる。日本のように貧困率が改善しない国では、各家庭での所得から税金や社会保険料を引いて必要に応じて手当を与えるのでは国民が得られるお金が当初よりも低くなるという特徴がある。日本は少子高齢化が急速に進み社会保障は国民にとっても手厚い対策が望まれているが、若い世代の教育への支出がどんどん削減されてしまうことは見直されるべきであると考える。

 

また、私は支援を行う立場として地元で民生委員を務める方へのインタビューを行った。民生委員になるのはほとんどが仕事を退職された公務員や教育に携わっていた人であり、インタビューを行ったAさんも退職後に自治会長から依頼を受けて引き受けていた。活動の内容は民生委員の中でも主任児童委員と呼ばれる人が子どもや子育てに関する支援を行っているということであった。

以下インタビュー内容まとめ

・現在の相談状況は?

全国調査では高齢者に関することが55.6%で一番多いが、次いで子どもに関することが20.4%で多くなっている。

・大体何人くらいで活動しているのか?

地区の大きさにもよるが2~4人で相談を受けている。

・活動内容には相談支援以外に研修があるようだが、どのようなことを行っているのか?

人権に関わる講演会に参加したり、児童施設への訪問を行ったりしている。

・子どもに関わる相談であればどういった機関に連携を求めるのか?

やはり子ども自身が通っている学校、他には役所の児童家庭課や子ども課などに相談を行うと思う。

インタビューをして民生委員の方のように身近に相談できる人がいることは、なかなか周りへ相談をしにくく孤立しやすいひとり親にとっても心強いはずである。ただ、民生委員・児童委員への認知度は決して高いとは言えないので、Aさんもビラを作成して定期的に高齢者宅や子どもがいる家庭を訪問していると話していた。

夏休みに子どもの貧困に関する本を読んだり、関連する記事を調べたりして、子どもの貧困の実態をいろいろ知ることが出来た。子どもの貧困問題は研究していくうえで親の所得と子どもの学力が関連していることなどは分かってきてもどうすれば改善することが出来るのかなかなか調査が進まないでいた。夏休みに新たに調べてみて、国や各自治体の単位で貧困を解決するための政策が作られていてもうまくそれが機能していないのではないかと感じた。今後は学校の先生にもインタビューを行い、学校・家庭・地域が連携して子どもの貧困を改善していくための方法を探っていこうと思っている。特に経済的な困窮に陥りやすい母子家庭は子どもの健康・学習、親の就労、地域との交流など様々な点で問題を持っている。自分が教師になったらどのようにして貧困家庭の子どもの存在にいち早く気づき、生活や学習・進学への支援を行い、地域の協力を求めながら子どもの居場所を作ることができるかをさらに考えていきたい。

 

参考

http://www.shimotsuke.co.jp/special/poverty

山野良一 『子どもの最貧国・日本 学力・心身・社会におよぶ諸影響』(2008) 光文社

 

秋学期に行うこと

・子どもの貧困問題に積極的に取り組む地域・団体(例えばあらかわシステム)などをもう少し本やインタビューによって詳しく調べる。

・今までに調べたことを通して、貧困家庭の子どもに対してどのような対応を学校・家庭・地域の立場からできるのかを一目でわかる表にしてまとめたい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。