春学期にやってきたこと
私は今年度の共通テーマが「環境・環境としての人間」に決まって、近年注目されるようになった「子どもの貧困」を個別のテーマに設定することにした。しかし、もともと大学生になるまではこの問題について考えたことがなく、大学の授業で「子どもの貧困」について扱われた時に経済的に困窮し、衣食住に困り一日一日を生きていくことがやっとである人の存在を知り衝撃を受けた。私は将来教員を目指していて、学校には様々な家庭環境で生活してきた子どもがいる。その子どもたちが異なる家庭環境に生まれたことによってたくさんの苦労を強いられ、経済的な理由によって将来に希望が持てなくなるような状況を防ぎたいと思うようになった。貧困問題は誰にでも起こりうる可能性があるが抜け出すことが難しく、様々な面で影響を及ぼす。今後子どもの貧困をテーマに設定し研究することでその改善策を見つけていきたいと考える。
春学期にはまず子どもの貧困についての実態をつかみ、少しでも子どもの貧困の支援に関わる人たちにインタビューを行いたいと考えた。まず、日本の現時点での子どもがいる貧困家庭への公的な政策にはどのようなものがあるかを調べることから始めた。そして分かったことを、以下にまとめた。
・子どもの貧困対策の推進に関する法律の制定・施行(平成26年1月17日施行)。
・上の法律に基づき、各都道府県で子どもの貧困対策計画を作成することが努力義務とされている。
・国や地方公共団体には就学援助や奨学金、児童扶養手当、児童手当、ひとり親家庭等医療費助成金、子育て世帯臨時特例給付金などの制度がある。
研究を始めてから今まで知らなかった制度の存在についても知ることができた。各都道府県での貧困対策計画を調べてみると、努力義務とされながらも計画作成に乗り出している都道府県は多く、例えば埼玉県であれば26年7月に既存の「次世代育成支援対策推進行動計画」と「子ども・子育て支援事業支援計画」、「母子家庭及び寡婦自立促進計画」に「子どもの貧困対策推進計画」がまとめられた形になっている。そこには子どもの貧困対策法に規定される教育支援・生活支援・保護者の就労支援が追加項目とされており今後の対応策を示している。いくつか内容を抜粋すると、「ひとり親世帯への支援の充実」として子育てや生活への支援・就学支援や養育費の確保・自立に向けた経済的支援、相談員による生活相談など今までに行われてきた活動に加え、親の就業支援にも力が入れられるようになった。さらに「貧困の状態にある子どもへの支援」として高校進学及び中退防止を目的とした学習支援が積極的に取り入れられるようになっている。他にも貧困家庭の多くに母子家庭があることを注視して、子育て中の女性でも働きやすい環境を整えるようにすることも計画に盛り込まれた。
しかし、このような法律や各種の子どもを貧困から救うための制度ができているのにも関わらず子どもの貧困問題はなかなか改善されてきていない。私が春学期のうちにこれらの政策がうまく機能していかない原因として考えたのが、各都道府県で貧困対策計画が作られているものの、具体的な目標数値であったり支援を受けるための方法が十分に周知されていなかったりすることである。子どもの貧困の問題は最近メディアで取り上げられるようになったが、実際に貧困の家庭はそのことを周りに隠そうとすることもあり、プライベートなことにもなるのであまり踏み込んだ調査を行えないことが課題にある。そのため現在どのくらいの家庭が貧困家庭に当てはまり支援が必要とされているか、今後何パーセント減らしていこうとするかを具体的に目標として挙げられていないことが問題の障害になってしまっていると考える。また、援助を受けるにも様々な書類の提出が必要となってくるが、貧困家庭ではその親も貧困家庭で十分な教育を受けてこられなかった場合もあるので、書類を準備する段階で戸惑ってしまうこともあると考える。
さらに、春学期には他の自治体についてもどのような計画が立てられているかを調べた。三重県・京都府・鳥取県についてインターネット上で調べ、学校への福祉の専門家やソーシャルワーカーの効果的な配置、学習支援、進学支援、就学前の子どもも含めたライフステージに応じた子どもへの支援、子どもの居場所づくりなど様々な支援を計画していることが分かった。
参考
子どもの貧困対策の推進に関する法律について
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25HO064.html
http://www.saitama-support.jp/nav/375-2/1459-2
http://law.end-childpoverty.jp/newsclips/