ガーシーと林外相 ネット社会における国会のあり方

 ガーシー議員が帰国せず、求められた国会での陳謝をしなかったことで、除名という処分にいこうとしている。つまり、国会議員は、日本にいて、国会審議に出席しなければならないという前提での処分である。常識的には、審議に参加しなければ、国民の付託に応えているとはいえないだろう。
 他方、まったく逆の事態が最近起きていたことも注意すべきだ。それは、林外相が、G20の外相会議に、国会出席を理由に欠席していたことだ。しかも、国会での林外相の答弁は1分にも満たないものだった。1分未満のために、世界の顰蹙をかってしまったのは、問題ではないかという批判があふれた。
 つまり、一方は国会を欠席していることによって、他方は国会出席を優先したことによって批判されているのだ。もっとも、ガーシーという人を、私はあまり知らないし、彼のyoutubeなどはみたことがないので、逮捕される危険とか、そういう事態についてはまったく理解していない。だから、そういうことはまったく切り捨てて、国会出席の問題、あるいは、国会議員とは何をするものなのか、という点にのみ絞って、しかも、ネット社会でそれを考えてみたいのである。

 
 前は、ガーシー議員が、国会に出席しないのは、議員としての義務を果していないと単純に考えていたのだが、高橋洋一氏が、ガーシー氏は、国会議員としての活動をまったくしていないわけではないと解説していたのを聞いて、多少違う角度から考えてみる必要を感じたわけだ。
 高橋氏の説では、国会議員がやる仕事は3つあるという。
・議員立法の法案を提出する
・国会で質問をする
・質問趣意書提出する
以上だ。(もちろん、政党に属しているから、支持者からの要求を受けとめて政策化するというようなことはあるが、それは議員としての活動とは違うレベルであるともいえるので、ここでは省く)質問趣意書というのは、国会の本会議や委員会で、質問する時間を割り当てられていなくてとも、政府に対して、ある政策について質問書をだすことができて、それに対しては、関係官庁からの回答があるというものだ。そして、それはかなりの量提出されているのだという。
 小西議員の高市追求をきっかけに、小西議員のホームページをみたのだが、確かに、質問趣意書とその回答が掲載されていて、報道はされないが、かなりの活動をしているのだということがわかった。
 高橋氏によれば、ガーシー議員は、この質問趣意書を提出していて、その回答も引き出しているというのだ。だから、3つの仕事のうち、1つはそれなりにこなしている。ところが、3つのどれもやっていない、つまり、国会に出席はしているが、議員でなければできない政策的活動を、まったくしていない議員が、たくさんいるという。そうした議員に比べれば、ガーシー議員は、まだ議員としての活動をやっているからましだというのが、高橋洋一氏の評価だった。
 
 さて、この林外相とガーシー議員の批判されている点は、ネットでの参加を可能にすれば、両方とも解決することに気付くだろう。
 林外相は、重要国際会議であるG20に出席して、国会での答弁が必要なときには、オンラインで答弁するように設定すれば、万事解決したではないか。また、ガーシー議員も、オンラインで国会の審議に参加することが認められれば、問題がない。議員立法をするのは、それなりの経験と積み重ねが必要だから、新人議員としては、そこまで至らなくても仕方ないだろう。とすれは、ガーシー議員が、外国にいながら、国会議員としての義務を果たすことは、オンライン参加を認めれば可能になる。
 コロナで、在宅ワークが普及したことを考えれば、国会でも、在宅参加、あるいは遠方からのネット参加を認めるべきではなかろうか。そうすれば、地方や外国にでかけて行なう重要な仕事を、国会開会中でも無理なく遂行できる。国会開会中は、審議場所に縛りつけることのほうが、よほど、マイナス面が大きいのではないだろうか。
 国会は、社会の未来を構築するための審議をする場なのだから、ネット社会にふさわしい形での活動形態に移行していく必要がある。
 
 テレビでも、コロナによって、ずいぶん解説番組やワイドショーが変わった。アメリカのCNNなどでは、何人かのコメンテイターが参加して議論がなされるが、ほとんどは遠隔からの参加だ。これは、ずっと前からそうで、CNNはアトランタに本社があり、当然そこに解説者を集合させることはできないから、遠隔参加にならざるをえない。その代わり、全国にいる適切な人材を活用することができる。日本のテレビはどうしてそうしないのかと、ずっと思っていた。必ずスタジオに来てもらって参加している。それが、コロナによって、どうしてもオンライン参加を採用せざるをえなくなった。コロナ終息で元に戻ることが多いが、しかし、一部はオンライン参加が多少なりとも残っている。
 オンライン参加のメリットは、参加者にとっては、交通時間を省けること、局側では、大都市在住の人だけではなく、多彩な人材の活用が可能になることなど、利点が大きい。
 せっかく、コロナでネット活用が進んだのだから、国会もそうすべきなのだ。
 
 ガーシー問題と林問題を、単純に個別に切り離されたこととしてではなく、両方にかかわる問題の解決を考えていくべきである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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