立憲民主党小西議員と高市大臣のやり取りとなっている、総務省の行政文書を全文読んでみた。もっとも、繰り返しが多く、その異同にはさして意味が感じられなかったので、ざっと読んだということだが。総務省のホームページにいくと、簡単に入手できるので、興味のある人は、実物をみるといいのではないだろうか。官庁と官邸は、こういうやりとりをしているのか、と理解できるが、なんと無駄なことに労力と時間をさいているのだろうと、逆に感心してしまう。
話題になっているのことは、放送法の政治的中立として、ある番組では、一方の政治的立場のみを取り上げ、他の番組で、他の立場をとりあげれば、中立と認定できるのか、あるいは、特定のひとつの番組内で、ひとつの立場しか取り上げていない場合にも、中立を侵しているとみるとか、という問題を、延々とやっているわけだ。つまり、ある番組が、政府与党からみて、偏向番組だというだけでは、放送局の番組全体としてバランスをとっているということになると、その番組に圧力をかけること学校できないから、ひとつの番組だけで、バランスがとれていないときには、中立を侵している認定する、つまり、圧力をかけて「是正」させることができる、そういう目論見をなんとか通したい官邸と、総務省のやりとりが、何度も字句修正されながら、圧力を感じさせていくプロセスとみてよい。
そして、主に話題になっているのが、サンデーモーニングと報道ステーションだ。サンデーモーニングは今でも基本変わらないが、古館キャスターだった時代の報道ステーションで、現在は相当雰囲気が変わっており、意味圧力の効果があったと解釈できる。テレビ朝日上層部が、屈したということだろう。
読んでみて、感じたことがふたつある。
ひとつは、高市総務大臣(当時)と安倍首相の電話のやり取りが、生々しく再現されているかのような報道があったが、そんなものはまったくなく、以下のように記述されているだけだ。
・ 政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話(日時不明)。
・ 総理からは、「今までの放送法の解釈がおかしい」旨の発言。
実際に問題意識を持っている番組を複数例示?(サンデーモーニング他)
・ 国会答弁の時期については、総理から、「一連のものが終わってから」との
ご発言があったとのこと。
高市大臣は、これがデッチあげだとしているのだとすると、要するに、この件での電話を一切していないということなのだろう。しかし、これだけ総理補佐官が、総務省に働きかけ、かなり詳細に検討しているのに、担当大臣である高市氏が、総理とまったく連絡をとっていないなどということは、かなり無理がある。電話くらいしているのではないか、と一般国民として考えるのだが。そして、電話なり対面でじっくり話しているのが、当然だと思う。それを、電話のやりとりなどしていない、でっちあげだ、と答弁するほうが不自然だろう。それとも事実と違うというのは、他の部分のことなのだろうか。総務省も、高市氏も具体的に事実違うという部分を指摘していないので、よくわからない。
もうひとつは、礒崎補佐官という人の高圧的な姿勢に驚いた。総務省の局長に対して次のように怒鳴りつけているようだ。
「何を言っているのか分かっているのか。これは高度に政治的な話。官房長官に話すかどうかは俺か決める話。局長ごとくが言う話では無い。総理が(官房長官に相談しろと)仰るなら勿論話をする。この件は俺と総理が二人で決める話。」
「官房長官に役所から話すことは構わない。しかし、俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃ済まないぞ。首が飛ぶぞ。もうここにも来ることができないからな。」
このあと、「今日は怒らない」などといっているが、十分に怒っている。
つまり、全体として、礒崎補佐官が、安倍首相の意向をうけて、なんとか、番組単独の中立性を問えるようにしたいと、繰り返し圧力をかけていたらしいことが、よくわかる。そして、その高圧的な姿勢も。
話題になっているサンデーモーニングだが、ここ数年は、ほとんどスポーツコーナーしか見ない。「風をよむ」などで語られている内容と、私の考えは比較的近いのだが、この文書で語られているように、立場の同じ人が、順番に意見を開陳しているだけで、意見が違わないから、掘りさげることもなく、実につまらないのだ。そんな意見なら、聞くまでもなく、自分で十分に考えているよ、という感じだ。だから、見るのは時間の無駄と思ってしまう。それに比べて、スポーツコーナーは、ゲスト間で意見が違うことがあり、けっこう面白いのだ。上原になって、かなりつまらなくなったが。
しかし、政治的圧力をかけることについては、もちろん、反対である。
では、この文書を読んで、放送における「政治的中立」をどう考えるか。それは次回にしたい。