安倍元首相銃撃考察16 山上の起訴が決定したが

 安倍元首相を殺害した犯人とされる山上の起訴が決まったと報道されている。その前に、山上の鑑定留置の延期措置がとられ、いつまでの延期なのかは、検察と弁護側の駆け引きで二転三転したが、まだ、鑑定留置が終了していない段階での「起訴」という決定は、いかにもおかしな感じを与える。この事件の司法側の対応は、疑問だらけなのだが、またひとつおかしな行為が加わったという感じだ。
 そもそも、鑑定留置は、容疑者に責任能力があるかどうかを鑑定するために、取り調べも中止して、鑑定を行うものである。だから、鑑定留置の途中では、責任能力があるかどうかは、判断できないはずである。まして、この山上の鑑定留置は、通常弁護団からの要請で行われるのに対して、検察自らの判断である。弁護側から、責任能力の有無の鑑定が要請されていないにもかかわらず、検察が率先して、しかも例外的に長期の鑑定を決定して実施していたものである。11月に期限が切れたときに、検察は更に延期を要請していた。つまり、結果がまだ十分に出ていないことを意味しているはずである。にもかかわらず、責任能力があると判断して、起訴を決定したというのだ。もちろん実際に起訴するのは、鑑定留置が開けたあとであるのだが。

 検察は、おそらく、山上裁判が始まると、様々な議論が起こって、できるだけ遅らせたいのだろう。2月までの延長を要請したのは、統一教会の解散命令に対する結論がでるに違いない、そこで、統一教会論議は終息するので、裁判を開始しても、議論が別の方向にいくことは避けられると踏んだに違いない。
 
 では、何故それほど山上の裁判を遅らせたいのか。それは、虚偽の裁判になるからだと、私は考えている。何度も書いたように、山上が真犯人だとは、とうてい思えない。当然、それを検察は知っている。まだ、統一教会の議論が済んでおらず、人々の関心が収まらないうちは、できるだけ裁判をしたくないのに違いない。しかし、来年の春には、裁判が始まると思われる。私が最も注目するのは、弁護側が無罪を主張するかどうかだ。山上が、自家製の拳銃で撃ったことは、映像が残っているから疑いようがない。しかし、そこに実弾が入っていたかどうかは、実はわからないし、疑問もたくさん出されている。また実際にパチンコ弾のようなものが入っていたとしても、素人が撃ってあたるものではない、という見解もある。
 ただし、山上が犯人ではないとすると、誰なのか、どのような組織が山上を活用しつつ、実行したのか、という極めて困難な問題が出てくる。そして、検察やメディアがその点の追求をしていない以上、真相は、おそらく永久にわからない可能性が高い。しかし、想像することはできる。捜査、調査能力のある組織が、それをしない以上、個人は、想像するしかない。そこで、いつか主張されている、あるいは主張されていなくても、ありうる考えを、再度検討してみよう。
 
 まず前提として、安倍元首相殺害を実行するために必要な条件を確認しておく。
・安倍元首相の行動予定を迅速・正確に把握できること
・当日の警備を緩くし、更にその後の捜査をあいまいにできること。
・裁判を方向付けられること。
・山上のような利用可能な人物を探し、活用できること。
・射撃の名手を配置できること。
 これらの条件は「すべてが揃って」いなければならない、すべてが必要条件である。従って、中国・ロシアなどの外国の組織は除外される。検察や警察を動かすことができるとは思えないからである。条件が揃っているといえるのは、日本国内では「検察」、国外ではアメリカであり、おそらく、どんなに想像をたくましくしても、これ以外にはありえないと思う。
 検察も推定の対象になるのは、検察は長年安倍首相に押さえつけられてきたし、検事総長人事まで、検察の意に沿わない人物を押しつけられそうになった。ぎりぎりのところで、防いだが、重要な犯罪捜査を妨害されつづけてきた。安倍元首相が殺害されたあと、検察ははっきりとわかるほどに、その姿勢が変化した。統一教会への攻撃を開始したし、東京オリンピックの汚職に、大々的に手をつけた。警察庁高官の家族が、統一教会の信者になって、周囲に被害を及ぼしたとき、警察・検察は組織をあげて、統一教会の摘発に乗り出そうとしたが、それを妨害して不可能にさせたのが、当時の安倍首相であったことは、周知の通りである。また、オリンピック関連で、検察に検挙されて、もっとも汚職の中心だとされている高橋氏は、「オリンピックの仕事を引き受けると、大抵逮捕されるから」と、オリンピックの仕事をやりたくなかったのを、安倍首相が「絶対に逮捕させないから大丈夫」と身の安全を保障して、オリンピック開催と運営の実質的な中心人物になったことは、広く報道されていた。
 このことでわかるように、安倍元首相の死去によって、検察は重しがとれ、自由に活動できるようになったのである。最も得をしたのが犯人、ということからすれば、検察は可能性が否定できない。
 
 アメリカといっても、一枚岩ではない。実際に、アメリカ政府を本気で怒らせてしまった日本の首相は、引きずり降ろされることがある。エネルギー自立を図った田中角栄や、アメリカ抜きの東アジア共同体構想を打ち出した鳩山由紀夫は、アメリカの支持を失って、党内の勢力争いの形で失脚することになったと言われている。
 安倍晋三氏は、首相を辞任したが、自民党内で最大の権力をもっていたことは間違いない。だから、否定的な意味でも、アメリカにとっては、無視できない存在であったし、必要ならば退けることもありえた存在だろう。
 ひとつの説は、日米同盟の強化といいつつ、実はアメリカから独立していこうという姿勢を強めていたので、アメリカの逆鱗に触れたというものだ。「戦後フレームからの脱却」とは、サンフランシスコ体制からの脱却だから、日本の対米従属を脱却して、アメリカと、敵対はしないが対等になることをめざしていたと解釈することはできる。しかし、本当に対米従属から脱するための強い決意をもって、政策を実施していたようには、私には見えない。決して、アメリカの利益を害するような政策はとらなかったのではないだろうか。
 しかし、安倍氏はトランプとは協調できたが、オバマやバイデンとは、トランプのようにはいかなかった。特に、プーチンとの関係をみれば、バイデンにとっては、安倍氏は問題だと見ていた可能性はある。トランプ支持者からみれば、トランプが大統領だったら、プーチンによるウクライナ侵略はなかったと思っているに違いない。そして、プーチンと「共通の未来をみつめていた」安倍氏は、危険でもある。そして、アメリカで内部分裂して、やっかいものになっている統一教会と、密接な関係にある。統一教会はトランプと関係が不快。ウクライナ戦争を、ある意味、引き起こしたともいえるバイデン政権にとって、安倍晋三という政治家は、トランプとの関わりを含めて、取り除くほうがよいと考えた可能性はある。
 
 では、日本の検察やアメリカが、黒幕なのだろうか。これまで何度か書いたように、そのようには、やはり思えないのである。検察はそこまで根性があるだろうか。また、アメリカにとって、安倍氏はまだまだ利用価値があったのではないか。
 ここまで読んだ人には、ぜひこの先を自身で考えてほしいと思う。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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