各紙にロシアのミサイルがポーランドに着弾し、二人が死亡したと報じられている。一番初めにみた記事が、ゼレンスキーの報告だったので、ゼレンスキーがNATOを引き込む発言かと思ったが、いろいろとみていると、たくさんの記事が出ているし、バイデンがポーランド支援を明言したというので、事実なのだろう。ロシアは例によってとぼけているが、状況からみれば、ロシア以外にミサイルをポーランドに打ち込む国はありえない。ウクライナ全土に100発のミサイルを打ち込んだというので、そのうちの一発が、誤ってポーランドに着弾したのだろう。ロシアがポーランドを攻撃することは、現時点では考えられないし、その危険性はわかっているはずだ。
このことでわかるのは、ロシアは確かに精密誘導できるミサイルが枯渇しているらしいということだ。精密誘導可能なら、ウクライナの国境を超えて、隣国ポーランドに撃ち込むなどということは起きるはずがない。かなりロシアとしては、慌てているのではないだろうか。
NATO加盟国への攻撃は、NATO全体への攻撃とみなすというのが、NATOの原則だから、ポーランドにミサイルが撃ち込まれて死亡者が出たとなれば、NATOとしては、当然対応策をとらざるをえない。ゼレンスキーは、これを機会にNATOが実際に参戦してくれることを願っているに違いない。ヒトラーに攻撃され、困難な状況に置かれていたイギリスのチャーチルは、日本が真珠湾を攻撃したという報をきいて、これで助かったと叫んだという話がある。しかし、真珠湾攻撃は、日本の意図的なアメリカへの攻撃であるが、今回のロシアのミサイルは、意図的であると考えるのは無理がある。だから、ゼレンスキーが「これで助かった」と願っても、その通りになる可能性は、ロシアの出方に左右されると思われる。
では、ロシアはどうでるのだろう。
ひとつは、それはウクライナの偽装であるとつっぱねることだ。しかし、ポーランド政府は、調査の上、ロシアのミサイルであることを公式に発表しているのだから、それは国際的には通用しないだろうし、NATOを納得させることはできないだろう。それにロシアの嘘は、これまで国際社会の知るところであり、西側でロシアのいいわけを信じる人はほとんどいない。
もうひとつは、ロシアがミスをしたことを認め、その被害については補償するとして、低姿勢に徹し、NATOが参戦しないように工作することだ。
理屈上は、ポーランドがウクライナを強力に援助しているから、援助への警告としたやったと開き直ることである。しかし、これはNATOを怒らせることになり、ロシアといえども、NATOと戦争すればどうなるのかはわかるから、この対応はとらないに違いない。
現在、ロシア政府として、第一か第二でいくか、かなり揉めているのではないかと思うのだ。ロシアはやっていない、ウクライナがやったのだ、と言いはれば、NATOとしては、証拠をつきつけることはできるが、ロシアが認めなければ、対応をとりにくい。しかし、その証拠をもって、NATOへの攻撃とみなすことはできるから、ロシアとしての危険度も高い。
第二の方策、ミスだったと認めて、補償することを約束したら、NATOとしては、ロシアへの武力の反撃はやりにくくなる。その代わり、補償をつり上げて、莫大な賠償を課す、あるいは、ウクライナ攻撃で起きたことなのだから、ウクライナへの攻撃をやめろ、というような要求をすることもありうるだろう。ゼレンスキーとしては、せめてそれをやってほしいと思っているに違いない。
現在ロシア政府内部でも、今後どうするかについて、かなり意見が分かれていると言われている。この事件の処理についても、激論がかわされているに違いない。どちらになるかは、私にはとうていわからないが、いずれにせよ、ウクライナ戦争が新たな段階に入ることは間違いない。ロシアがより凶暴性を発揮して、本格戦争に拡大するか、勝ち目がないことを悟って、撤退への準備を始めるのか。いずれにせよ、ロシアに勝ち目はないことは間違いないし、ロシアの敗北を早める必要がある。