今回、私は、重度の知的障害を持つ生徒の給料を上げるために、学校で行うことができる教育方法はあるのかということを研究したいと思い、このテーマを選んだ。 一つ目になぜ、知的障害者かというと、知的障害者は障害者の中で一番人数が多いということが挙げられる。就業率はほかの障害の人よりも高いとされているが、年齢階層別就業率 の平均は半分程度である。20歳は7割であるが、年齢を重ねるごとに、就業率は少しずつ低くなる。この最初の七割を継続すると、いいのではないだろか、と考える。 二つ目に給料が一般的な企業でも低く、また、就労移行、生活介護などはさらに低いという現状がある。これは、一日の仕事の量、時間が少なめや販売を行っているところでは物が売りきれない、などが考えられる。 三つ目に、少しでもお金が増えれば、家族への金銭的負担が軽減されるのではないか、と考えられる。現在は、国や地方自治体により、障害者への金銭的援助は行われている。児童生徒であれば、学用品や給食費 などの金銭的援助、18歳以降は障害者年金などにより、お金が貰うことができる。また身体障害者であれば、車いすを購入するときの補助など、障害によって、その援助は異なっている。また、これは地方自治体によっても異なってくる。障害者はある市では、市営の交通機関は無料である、など、地方自治体の財政事情によって異なっている。 国の財政事情、地方自治体の財政事情、によって障害者への援助は変わってくる。このことから、高齢者が増えている今、障害者への援助はよくならない可能性が高い。また、金額も減ることはあっても、増えることはないと考えられる。しかし、今は消費税が上がる予定、また物価自体が上がってきているということを考えると、同じ金額を受け取っていても、手元に残る金額が少なくなるのではないか、と考えられる。そうすると、今の高齢者の一部は貧困に陥っているが、その下の世代は年金が貰えるかわからない、もらえても金額が低いと考えられ、現在障害児の親、若い障害者の親はほかの親よりも生活が困難になるのではないだろうか、と考えられる。 また障害者の平均寿命が延びている、ということが聞いたことある。以前は階段が上がれなくなる前に、なくなることが多かったが、いまは階段で上がるのが困難になる年齢まで生きるため、二階に住んでいた障害者が困っている、ということを聞いたことがある。 高齢者が増加、障害児が増加、高齢者で障害を持つ方が増えている、しかし、労働者人口が減る、ということから、今は成立していても20年後、40年後がどうなるかはわからないだろう。 四つ目に障害児の生まれる数が増えている、ということが挙げられる。高齢者出産により、染色体異常をもつ障害児が生まれる確率が高い、医療の進歩により、以前であれば生き延びることができなかった子供が生き延びることができるようになった。しかし、同時に障害を持つことがある、ということが考えられる。晩婚化、高齢出産は女性も大学を出る割合が高くなった、また給料が安いことから安定した生活を送るまで結婚しないなどにより、これからも続いてくだろうと考えられる。そうすると、これから障害児が増える可能性があると考えると、これから障害者にも社会でなにかできるように今から働きかけができるといいのではないか、と考える。また、今回例に挙げた高齢出産は割合が高くなる、というものであり、高齢出産だから必ずしも障害を持つ子どもが生まれるとは限らない。若くても、妊娠中の過度なストレスや食生活による妊娠中毒症、大気汚染など環境ホルモンの影響も原因 となる。しかしどの原因と挙げられるものも現代生活には非常に密接なものである。 障害者への給料、賃金は総じて安い。学校という教育の場であるが、仕事につなげるために、何か行えることはあるのだろうかということである。 この研究のために、生活介護の施設で働いている職員の方、また特別支援学校(知的障害)の学校での進路担当の教員の方へのアンケート、また教員の方へのアンケートを行った。 (1)施設・作業所側から ① 生活介護とは そもそも生活介護とは何か。厚生労働省の障害福祉サービスの内容ではこのように定められている。 障害者支援施設その他の以下に掲げる便宜を適切に供与することができる施設において、入浴、排せつ及び食事等の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他必要な援助を要する障害者であって、常時介護を要するものにつき、主として昼間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の身体機能又は生活能力の向上のために必要な援助を行います。 【対象者】 地域や入所施設において、安定した生活を営むため、常時介護等の支援が必要な者として次に掲げる者 (1) 障害程度区分が区分3(障害者支援施設に入所する場合は区分4)以上である者 (2) 年齢が50歳以上の場合は、障害程度区分が区分2(障害者支援施設に入所する場合は区分3)以上である者 (3) 生活介護と施設入所支援との利用の組み合わせを希望する者であって、障害程度区分が区分4(50歳以上の者は区分3)より低い者で、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画を作成する手続きを経た上で、利用の組み合わせが必要な場合に、市町村の判断で認められた者 [1] 障害者自立支援法の施行時の身体・知的の旧法施設(通所施設も含む。)の利用者(特定旧法受給者) [2] 法施行後に旧法施設に入所し、継続して入所している者 [3] 平成24年4月の改正児童福祉法の施行の際に障害児施設(指定医療機関を含む)に入所している者 [4] 新規の入所希望者(障害程度区分1以上の者) 生活介護は働くというよりも、日常生活の支援、身体機能、生活能力の向上というものである。給料、工賃をあげるのではなく、支援を行う場と考えると、この研究は間違っているのではないか、と考えたが、生活介護の場であっても、何らかの製作、販売を行う、ポスティングを行うなどにより、工賃を得ている、という場もある。 ② 生活介護の職員にアンケートを行った理由 知的障害者の就業形態で授産施設・作業所等が59.1%である。身体障害者は約6%、精神障害者は約37% と知的障害者と比べると、低い値ということから、生活介護などの授産施設・作業所には知的障害者が高い割合でいるのではないかと。 また重度の障害を持つ人の多くは生活介護に行くことが多いので、今回の研究対象である重度の知的障害者が多くいるのではないか、ということで、生活介護の授産施設・作業所等にアンケートを行った。 ③ アンケート結果 学校で行っている教育が就労の場で行っているかという質問に対し、多くの方がはい、と答えている。人とのかかわり方や挨拶などが身についている、支援方法が同じであれば、学校以外の場でも落ち着いて行動ができる、集団生活に慣れている、規則正しい生活を送るという点が挙げられ、学校の教育で身に付けたことが卒業後でも行えることが多く、高評価であった。しかし、就労の場ではあまり、という声も少ないがあった。 学校で行ってほしいというものではソーシャルスキルトレーニングを行い、地域社会に出ていく機会を増やす、またコミュニケーション能力やスムーズな行動の切り替えができる、自傷他害ではなく自己表現ができるようになるといいという声もあった。 工賃を上げるためには複数の作業ができること、商品の価値を上げることができるような商品、また職員がつきっきりではなく、一人でできる、社会の理解ということが挙げられた。 また、情報が少ない、ということが多くあげられた。障害者にいる身近な職員には、障害者の情報が十分に届いていないことが挙げられた。 ④ アンケート結果を受けて この生活介護の施設にいる障害の方が年齢層がわからないため、養護学校時代なのか、特別支援学校時代なのか、わからないという問題点がある。しかし、多くは生活習慣をしっかり身につけていることを望まれていることがわかった。生活習慣は障害の状態によって、個人差があるため、一定の水準をつける、ということは不可能であるため、非常に難しい問題である。同じ重度の知的障害判定されても、自傷がある子もいれば、強いこだわりを持つ子がいるなど、同じ状態の子はほとんどいないからである。そのため、職員の方が望まれていることは、限界があるのではないか、と考えられる。 また一つの意見であったが、社会の理解、というものがあった。障害に対する理解、というものは低い、といえる。今は共生社会が謳われていることもあり、特別支援学級を学校に併設する、またクラスに学習障害の児童生徒がいるなど、障害を持つ子どもはかなり身近にいるという社会である。知識として教えられるのではなく、実生活に何らかの困り感を持つ子とかかわりによって、これから障害者への理解は進まるのではないか、ということも考えられる。 しかしながら、障害者が働く作業所などを建設するとなると、地域住民からは反対されることが多いということが挙げられる。 NHKニュースおはよう日本では障害者ホームの設置に“壁”という特集が組まれていた。 反対する理由としては“女性の後を付け回したりしないか”“ギャーとか、動物的な声が聞こえる”“地価など、資産価値が下がる”。このような反対理由を掲げる人のほとんど障害者に身近に接したことがない人だという。反対運動は5年の間にだいたい60件あり、36件が設置断念、予定地変更となったという。 ケアホーム運営のNPO 秦靖枝さん「インターネットで、すごくいろいろ出る。 突然に突き飛ばすとか、叩くとか、噛みつく。 不安感とか、分からないことに対する恐怖心、それが絶対、どんどん悪い方にエスカレートしていくのだと思う。」 このことから、健常者と言われる人たちへの障害に関する理解、知識、などが不足していると考えられ、そのような人をはじめとして、障害者が働く作業所で何かを買うということをする人は少ないのではないだろうか、と考えられる。工賃を上げるためには、障害児の教育も必要かもしれない。しかし、それよりも私たち、健常者と言われる人たちと障害者の双方の理解が必要なものなのではないだろうか、と考えられる。 また情報が少ないということから、学校側から貰う情報が十分でない、施設側での情報共有が不十分、また親などのかかわりが薄いため、情報を得られない、と考えられる。教育とは異なるが、情報が共有できるように、制度が整備されてきている。これが、しっかりと行われていく必要があると考える。 (2)特別支援学校側から ①特別支援学校について 今回は二校の特別支援学校にインタビュー、アンケートをお願いした。ともに知的障害児が通う学校であり、小学部から高等部まである学校である。 学校教育法施行令22条の3では、特別支援学校の対象となる障害の程度を定められている。 ① 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの ② 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの しかしながら、学校によって、重度の児童生徒が多いところ、軽度の児童生徒が多いところなど学校で異なっている。今回インタビューした特別支援学校は、重度の知的障害児が多い学校、アンケートを行った特別支援学校は、軽度から重度までいるという学校である。 また生徒数はインタビューを行った特別支援学校は全学部合わせて120名程度、アンケートを行った特別支援学校は全学部合わせて200 名程度である。 ② インタビューまとめ 学校では日常生活で必要なことを身に付けるために、日常生活の指導で毎日行っている。あいさつや声掛け、順番を守るなどのマナー、まとまって歩くなどの集団行動は、毎日行い、定着させるということを行っている。また、日常生活とは別に、グループに分かれ、各目標に合わせて、日常生活から抽出したものを行っている。この目標は保護者との相談などにより決定している。 また授業でパズルをするなどのいろんな体験を行い、休み時間をひとりで過ごす時にできることを増やす、好きなことができる、卒業後の余暇活動に生かすようにしている、ということである。 また集中力を高めるために特性を探る、何であったら集中してくれるか、座っていてくれるか、ということを探している。 またつまづいていることを改善し、より安定するために行い、毎日できることが卒業後でもできるようにしていくことを日常生活の指導で行っている。 また、卒業後は進学、就労はほとんどおらず、多くが生活介護などであるということであった。生活介護では、いろんな活動を行っている、また制度上はどこでも行くことができる、ということである。しかし、一日のプログラムに乗れる人はプログラムがはっきりしているところ、その場の集団適応できるか、本人にあっているか、またどのように通うのか、ということを親、生徒などと何度も話し合って決めていく。例えば、バスで通えるのか、親の送迎か、施設側の送迎か、ということが挙げられる。このような環境によって条件を狭められてしまうことはあるが、基本的に本人や親などと相談し、適応できるところに行くこととしている。 つまり工賃などで、行き先決めて目標とするのではなく、卒業後どこで本人の力を活かせるのかということを判断しているという。そのため、高校二年、三年には体験、現場実習を行い、適応できるか、を見て折り合いがつくまで、本人に合う場所を見つけていく、ということである。 つまり、学校では就労にむけての教育は学校では行わない、ということであった。いかに、卒業後、適応できるか、そのために、日常生活を身に付けるのか、ということであった。また、障害の状態によって、さまざまである。自分で着脱できる子もいれば、難しい子もいる。その子に合わせて、日常生活の指導を行い、学校でその能力を最大限行っているということであった。 また高等部から日常生活の基礎からを身につけるのは困難である。小学部からの積み重ねの完成を高等部で行っているということである。 高等部では作業の時間がある。これは学校によって何を行うかは異なるが、この学校では農園、紙工芸、手工芸、工芸、環境に分かれている。農園では作物を育て、文化祭で販売を行う、また工芸品も販売を行っている。環境は缶をつぶすなど環境整備を行っている。これは実習につなげるためではなく、社会性、柔軟性を養うためで行っている。 また卒業後の作業所などとは、学校にもよるが、情報提供を行っている。しかし、職員まで届いているかまではわからない、という事だった。 ③ アンケートまとめ 掃除を行う、生活のゲームを行いルールを学ぶ、排泄、あいさつなど日常生活のことを定着するために行っている。まあ、そのようなことをとおして卒業後の進路のための土台作りを行っている、自分の意思を伝える、人とかかわる、待つ、情緒の安定コントロールをすることなどを行い、進路の幅を広げるようにしているということである。 また工賃を上げるためには、社会と障害者をつなぐコーディネーター的な人、環境がもっと増えないと、生活全体の自立度を上げるなどが挙げられた。 また工賃をあげるための教育は、いろんなことができるように、普段の生活がスムーズに勧められるような力をつける、ということが挙げられていたが、多くの教員の方はない、ということであった。 ④ インタビューアンケートを受けて 工賃を上げるための教育はあるのか、ということであったがそもそも教育の場ではそのようなことが考えられていないことがわかった。工賃はあくまで結果としてついてくるものであり、工賃のためになにかするということはないということであった。 しかし、この学校ででも児童生徒数は増えているが、作業所などはなかなか増えていないという現状を考えると、これから卒業後に適応できる作業所を探すということが、いまよりも困難になるのではないかと考えられる。 高等部では日常の生活の完成を目指しているということで、日常生活の定着を目指していると考えられる小学部にアンケートを行った。小学部であっても、日常生活の指導が卒業後にも適応できるように、という考えがあるのがわかった。小学部時代から毎日行うことで、定着したものが、その後の施設でも、行えているということが言われていた。卒業後にも適応できるように、というものは、しっかりと適応できている。ただ、情緒のコントロールなどは小学部から行っていても、卒業後までに身に付けられるかどうか、というのは難しいだろう。健常児と言われる子でも、コントロールをするのは難しいように考えられるので、これはできると理想、というものであると考える。 そして、ここでも挙げられたのが、社会とのことである。特別支援学校の児童生徒はそのまま作業所に行くことが多く、社会とのつながりが薄いと考えられる。 中間的なまとめ 工賃を上げるためには、ということで研究を始めたが、自分の浅はかなことがよく分かった。 工賃を上げる、ということは学校で行える教育法はとくにないのではないか、と考えられる。学校では、生活習慣を身につける、ということを行い、作業所などで、工賃を上げられるようにしていくのがいいのだろう。 また、障害児への教育を、というよりも、健常者と言われる人々への障害者などの理解を勧めることが必要だと考える。 これには、障害者が働ける場を増やすということが必要だからだ。今までは障害者は大人数をどこか郊外など人とは離れた生活を強いられていた。しかし、今は地域で暮らそうという考えがある。その証拠に、私の住んでいる地域には、住宅街の中に軽度の障害を持つ人々が働く作業所がある。しかし、これには反対運動がある。この状態では障害児が増えている現状に対応できないのではないか、と考えられる。障害児の理解をすること、そして、障害者の作業所を増やして、卒業後の行く先を増やすことと同時に、その作業所での買い物を行うようになると、工賃はあがるのではないだろうか、と考えた。
参考・引用文献
平成25年度版 障害者白書(全体版) 第一編 第1章 第4節 1.就業の状況(http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h25hakusho/zenbun/h1_01_04_01.html)
特別支援学校への就学奨励に関する法律第2条第1項
発達障害の総合情報 知的障害に関して 8割は原因不明の知的障害(http://www.vastra.org/19_2/19_2_1.html)
厚生労働省 政策について 福祉・介護 障害者福祉 障害福祉サービス等 障害福祉サービスの内容(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/naiyou.html)
内閣府 平成25年度版 障害者白書(全体版) 第1編 第1章 第4節1.就業の状況 図表1-21 1-22 1-23 (http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h25hakusho/zenbun/h1_01_04_01.ht
NHKニュースおはよう日本 特集まるごと「障害者ホームの設置に‟壁‟ 2014年1月26日(http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2014/01/0126.html)
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