春学期の研究内容 子どもの遊び

・今までの研究内容

これまで、「子どもの遊び」をテーマにして研究してきた。中間論文では、都市化に伴う地域コミュニティの希薄化から、自然にコミュニケーション能力や規範意識を育む機会が減少しているとした。

そうした地域環境での変化の一つとして、子どもの「遊び」を考えた。現在、子どもの遊び方は昔と比べて大きく変わっており、それは大まかに述べると、外遊びが減り、ゲームをはじめとする室内系の遊びが増えたということであった。研究を進める中で、児童期の遊びは人間が成長するうえでの人格形成にかかわりを持っているということがわかった。そこで私は、近年変化しつつある子どもの遊びが、近年みられる子どもの人間関係における様々な問題に関連しているのではないかと仮説を立てた。つまり、現代の「遊び」が子どもたちの人格や人間関係にどのような問題を生むのか、解決策としてはどのようなものが考えられるのかということに焦点を当ててきたといえる。

しかし、また研究を進めていくうちに、現代の子どもの遊びには問題点ばかりではなく、メリットも存在しているのではないかという考えに達した。というのも、中間発表において新たに気づかされたことがあったからである。私は当初、現代の子どもの遊びには三間(時間・空間・仲間)がなくなっていると主張し、それによって生じる問題点を挙げてきた。ところがその際の議論で、現代の子どもは環境が変わったなりにそれに順応した遊びを展開しているのではないか、という意見が出た。たしかに私は、現代の子どもの遊びに目を向けるとき、はじめから問題点のみに着目していた。一方で昔の子ども遊びを美化しすぎてしまっていたというか、遊びの系統にも様々なものがあったり、今と昔では遊びの定義にも違いがあったりするにも関わらず、それを見落としていたことに気付いたのである。

そこで私はいったん原点に回帰し、そもそも「遊び」とは何か、ということを考える必要があるとした。そして、遊びの種類・系統についても研究し、それらが昔、現在ではそれぞれどのように行われてきたか、現代遊びのデメリットだけではなく、子どもに与える効果はどのようなものが考えられるかということについて知ることを新たな課題とし、研究を再開した。

ここまでが、私が春学期に取り組んだ研究内容であり、夏休み以降はこれらの内容をもとに研究を進めた。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。