2021年4月7日の毎日新聞に、少々びっくりする記事が出ていた。「48億円かけたのに一度も使わず 感染者用に改修の五輪警官宿舎」という記事である。東京オリンピック・パラリンピック用の警察官仮設宿舎がコロナのための軽症者向け滞在施設に改修されていたのに、一度も使われることなく元の姿に戻ることがわかったという記事だ。昨年4月に改修され、また今回元に戻すための改修で、合計48億円かかっているのだそうだ。元々、オリンピックが開催されれば、警備のために大量の警察官が必要となり、全国から応援を求めるために、警察官のための宿泊施設を仮設住宅として、数カ所建設していたという。オリンピックが延期になって、当面使わなくなり、かつコロナ感染が拡大してきたので、隔離施設として使用するための改修をしたわけだ。ところが、一度も使われることがなかったという。ひとつには、ホテルを優先したためと、それでも余裕があったからだと、この記事のなかで都の職員は説明している。しかも、この記事によると、ホテルの入所者がもっとも多かったのが1100人で、それでも確保した質数の半分強は使っていなかったというのだ。
しかし、第二波、第三波当時の報道では、ホテル等の施設が足りないので、入室できず、仕方なく自宅待機になっている感染者が多数いると、ほぼ連日のように報道されていた時期がある。念のために、最近はピーク時よりは大分感染者数も減っているし、医療体制も逼迫していないと報道されているというので、どの程度待機者がいるのか調べてみた。東京都のホームページにでていた。https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
4月6日現在で、入院が1555人、宿泊療養が794人、自宅療養が549人、入院・療養調整中754人となっている。自宅療養が、特に心配ないという状態であると、仮に考えたとしても、調整中が754人もいる。これは、明らかにピーク時よりは、ずっと少ない数値のはずである。ということは、明らかに、最低宿泊療養が必要な人が700人もいて、ピーク時はもっと多数いたということではないか。にもかかわらず、このわざわざ多額の改修費を使って、宿泊療養のための施設にしたものを、まったく使わなかったというのだ。しかも、その説明が、ホテルで十分で、更にホテルすらも空いていたというのだ。そんなことは、まったく信じることができない。
念のために、昨年4月、第一波のときの記事を見てみよう。2020年4月16日の文春オンラインの記事である。『「小池都知事が発表する数字には嘘がある」田中良・杉並区長が“医療崩壊”の現場から怒りの告発 大量の自宅待機者の実態が闇に隠されている』がそれだ。https://bunshun.jp/articles/-/37284
都は自宅待機の数字を明らかにせず、対策をとっていないという批判を現職区長が告発している記事だ。実際には、当時、自宅待機中に容体が急変して死亡してしまった事例が、いくつか報告されていた。(現在は明らかにしている)
陽性になると原則全員入院という措置に、無理があったことは、当時から指摘されていたから、十全な対応が難しかったことは理解できる。しかし、実際に改修した施設をつくって、収容力を確保したにもかかわらず、そして、大量の自宅待機者、調整中の患者たちがいるにもかかわらず、それをまったく利用しないというのは、どういうことなのか。これはさすがに呆れてしまう。