厚労省職員処分への違和感

 飲食店に時短要請が出ているのに、23名もの人数で送別会を深夜までやっていたということで、職員が処分されるそうだ。
 加藤官房長官は、「国民のみなさんに大人数の会食を控えるよう呼びかけをした中で、コロナ対策を担う同省でこうした事案が行われたことは大変遺憾だ」と述べたそうだ。(朝日新聞2021.3.30)
 三浦瑠麗氏のように、同情を表現している人もいるが、(中スポ2021.3.31)多くは、非難している。もちろん、同情する気持ちはないし、呆れるという感じだが、ここにきて、処分という展開になっている。自民党世耕参院幹事長は、「政府においては国民目線で納得のいく厳正な処分をしていただくよう強くお願いする」と述べ、二階幹事長も「しっかり反省して対処してもらいたい」と述べた。(毎日新聞2021.3.30) そして、どうやら課長が更迭されるという動きになっている。そして、ほとんどのメディアでは処分当然という声が高い。

 
 しかし、これにはどうも違和感が残る。緊急事態宣言がなくなったのだから、一般市民の行動規制という点では、要請というレベルでもなくなっているのではないか。出ているのは、飲食店に対する時短要請だ。緊急事態宣言解除の前から、人出は多くなっており、花見客などは、夜まででている。そういうなかで、宴会など多く行われているのではないだろうか。実際に送別会をしてから、発覚するまで日数がたっているのも、妙な気がする。
 もちろん、公務員には、信用失墜行為をしてはならないという法的規定がある。おそらく、これを適用するのだろう。確かに、信用失墜行為だろう。だから、処分するべきではないということをいいたいわけではない。
 ただ、私がもっとも違和感を感じるのは、では何故菅首相は、処分されなかったのかということだ。それこそ、自分たちでつくった会食自粛の国民に対する要請を、自ら破ったわけだ。首相だって公務員なのだから、信用失墜行為をしたことになる。当然罰せられるべきだろう。それにもかかわらず、菅首相を処分すべきだという声はあったろうか。強い非難は当然あったが、処分を主張した大手メディアは、あまり記憶がない。
 もっとも重い責任を追っている公務員が、自分で国民に押しつけたルールを、自分で破ったのだから、これほどの信用失墜行為はないともいえる。
 こうしたルール破りが、処分されることがないのに、もっとずっと責任が軽いはずの職員が処分される。それはあまりに不公平なのではないか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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