東京・福岡でコロナ関連で罰則付き義務化?

 新型コロナウィルス対策として、都道府県単位で罰則付きの措置をとろうという動きがある。欧米などの罰則付き措置が、日本でとれないために、対策がとりにくいということは、従来から言われていたが、他方で、罰則なしでも、国民の自発的努力で欧米以上の効果をあげているから不要だという見解もある。菅内閣は、新型コロナウィルス対策が最大急務であるといいながら、経済活性化のための政策を重視して、コロナ対策は、ほとんどスルーしている感じだから、結局地方がやらねばならないという機運になっているのだろうか。
 最初の動きは、東京だった。
 まず10月段階では、陽性が判明したあとに外出して、他人に感染させた場合には、罰金を科すという案が検討されていた。現在は、陽性になっても強制的な入院などはなく、むしろ、家庭での待機が奨励されているから、行動の規制はほとんどできない。買い物にはいく必要があるだろうから、外出を全面的に禁止することもできない。それをするためには、ホテルや研修所などに収容するしかないだろう。春先に、陽性となった男性が、繁華街に出て、店に入り、「俺はコロナだ」と叫んで回ったという事件があった。ただし、この事例とは、異なる。以下記事を引用しよう。

 
罰則つきの条例を都議会で提案へ
「一個一個に罰を科すより、罰のある条例で自制を促していきたい」
こう話すのは都議会最大会派、都民ファーストの会の伊藤悠都議だ。次の都議会定例会で、新型コロナウイルスについて全国初の罰則付きの条例を議員提案として出す、という。
具体的には新型コロナウイルスに感染した人が、
「就業制限・外出しないことに従わないで、よって、一定人数以上の他人に感染させたときは、行政罰(5万円以下の過料)を科す」
「事業者が特措法24条9項または45条2項に基づく知事の休業要請・時短要請に従わないで、よって、一定人数以上の感染を生じさせたときは、行政罰(5万円以下の過料)。但し、ガイドライン遵守の場合除く」
「事業者が、特措法24条9項の要請に従わないで、かつ、ガイドライン遵守も怠っている場合に、知事は、感染の予防のため、事業者名等を公表できる」
などとなっているが、簡単にいうと
・感染がわかった後に出歩いて一定人数を感染させたら罰金
・休業要請や時短要請に応じず、ガイドラインも守らなかった事業者のところでクラスターが起きたら罰金
・要請(特措法24条9項による)に従わずガイドラインも守ってなかったら事業者名公表 ということだ。
 
 この提案は潰れたようだが、感染させたということを証明するだけで、かなりの時間とエネルギーを必要とするはずであり、保険所に余計な負担を強いるだけだろう。罰則というのは、ある禁止された行動をとった時点で成立するようにしなければ、実行不可能である。外出禁止が決められていれば、外出している人間は、特別な事情を説明できなければ、違反と認定できる。しかし、感染させた、ということを対象とすれば、それを証明しなければならない。ガイドラインを守っていたかどうかも、証明は簡単ではないはずだ。もともと、規則として無理がある。無理があることしか考えられないとしたら、議員としては失格だろう。
 
 福岡では、感染経路調査に応じなかったり、虚偽の申告をした場合に罰金を科すという案があると報道された。日頃、日本の法令では、義務と罰則の関係が実にいいかげんだと感じているが、これもその例にもれないと思う。罰とは、一般的にいって、ある違法な行動をした場合に、科されるものであって、不作為に対する罰は、よほどのことがない限りは科されない。
 福岡の場合には、例えば、夜の街にいって、そこで感染したと本人が思っている場合、感染経路の調査で、夜の街にいったことを隠す事例が少なからずあったということが理由になっているようだ。しかし、夜の町には行っていないと当人が述べて、それが嘘だということを証明するのは、かなりの時間とエネルギー、人材投入が必要である。本当にそんなことをして、罰金を取ったり、あるいは、証言をさせようというのだろうか。更に、調査をする人が、「夜の町に行きましたか?」と、わざわざ質問するのだろうか。実際に行っていたとしても、行かなかったと答える人は、いくらでもいるだろうし、その虚偽申告をわざわざ暴くために、資源を投入する意味があるとは思えない。
 こうした調査は、クラスターを潰すという、当初からのコロナ対策によるものだが、私は、この対策が正しいとは思えないのである。ごく少数の感染しかない時点では、クラスター追求は有効だが、感染数が多くなれば、所詮不可能な対応なのである。無理してクラスターつぶしの方策をとっているために、保健所は疲弊していて、本来の業務が阻害されていることは、ずっと言われているのに、何故今更こんな提案が準備されるのだろうか。以下記事の引用である。
 
感染経路調査、拒否なら罰金 福岡県議会が異例の条例案
朝日新聞社
2020/11/20 07:00
 新型コロナウイルスなど新たな感染症への対策を進めるため、福岡県議会は、感染者に感染経路などの調査に応じることを義務付ける条例案を超党派でまとめた。12月の定例会に議員提案する。厚生労働省は同様の条例は「聞いたことがない」としている。
 条例案では、感染の原因となった行動や経路を特定するため、感染者に県の調査に応じることを義務付ける。正当な理由なく拒否したり、虚偽の報告をしたりすれば5万円以下の過料を科す。新型コロナの調査をめぐっては、福岡・中洲のキャバクラ店で感染が起きた際、感染者が店名を明かさず濃厚接触者の特定が難航した。
 さらに国の緊急事態宣言より先に県が独自の「特別警戒宣言」を出せるようにし、県民や事業者に感染対策の徹底を求めるという。事業者とは、協力金などを支払った上で時短営業などについて協定を結び、違反した場合の罰則も協定に盛り込むとしている。
 条例案には、人と動物の「人獣共通感染症」に適切に対処するための「ワンヘルス(ひとつの健康)」の理念を進めることも盛り込んだ。月内にもパブリックコメントで意見を募る。
 
 報告で虚偽をすると刑事罰となるというのは、どんな場合があるのだろうか。国会ですら、証人喚問の場合には偽証罪があるが、参考人の場合には偽証罪はないのだ。つまり、参考人なら、国会で嘘をいったり、あるいは証言を拒否しても、罰せられることはないのだ。それから、調査に応じないとか、虚偽の報告をした、ということは、どこで認定されるのか。そのこともあいまいである。保健所の担当者が調査にきて、質問をしたところ、回答したくないといったら、直ちに、罰金が決定されるのか。それとも、そうした質問への回答拒否をしたら、どこかに呼び出されて、そこで改めて拒否すると、罰せられるのか。いずれにしても、かなり無理筋ではないだろうか。
 
 東京は更に、PCR検査についての罰則付き義務化を考えているという。伝染性で病気の重さが深刻であるような場合には、強制的な入院措置が可能になっているのだから、コロナの位置づけによるかも知れないが、ただ、少し前までは、医師が検査の必要性を認めているのに、保健所が検査を認めなかったような事例がたくさんあったにもかかわらず、今度は、検査を拒んだからといって罰するというのは、いかにも説得力がないように思われる。以下記事の引用。
 
新型コロナウイルスの全国の新規感染者は19日、2,386人と過去最多を更新し、2日連続で2,000人を超えた。
東京では初めて500人を超え、534人にのぼったほか、大阪や愛知など8つの都道府県で過去最多となっている。
そんな中、東京都では、保健所からPCR検査を求められて拒否した場合、
罰則を科すことを盛り込んだ条例案の提出に向けて、協議が進んでいることがFNNの取材でわかった。
関係者によると、東京都議会最大会派の都民ファーストの会が新型コロナウイルスの新たな感染予防対策として、
濃厚接触者などが保健所から検査を求められた場合、応じることを義務づける条例案を12月、都議会に提出する方向で調整が進められているという。
保健所が検査を求めても、数日間隔離されたり、仕事に支障をきたすおそれがあるなどから検査を受けない人がいて、
問題になっていることを受けたもので、条例案では、検査を求められた人が、2日以内に検査を受けなかった場合、罰則として5万円以下の過料を科すとしている。
 
 上にも書いたが、これまで政府(当然自治体も)は、PCR検査を、症状が出ている者、感染者と濃厚接触した者に限定して、非常に限定してきた。欧米などと桁数が違う検査数しかなかった。そのために、いろいろな弊害や遅れが出ている。そのことはまた別に書くとしても、そういう限定された不十分な検査しかしていないにもかかわらず、検査を拒否したから罰金を科すというのは、どういう神経をしているのかと思う。確かに、検査は重要だろう。しかし、コロナ差別がある状況のなかで、望まない検査を強制されることは、避けたいというのも自然な感情である。逆に、コロナ陽性だと差別されるような事態を克服するためには、大規模な検査をすることのほうが効果的であるように思われる。市中感染を正確に把握し、陽性者の生活をわけるような仕組みを作っていくことで、感染の拡大を防ぎ、かつ、安全に経済活動ができるようにするほうが、コロナ対策と経済の両立をする上で有効なことは、合理的に説明できる。またそうすれば、コロナに感染することは、特別なことではなく、その人の責任でもないことが理解されていくに違いない。
 罰則でPCR検査を受けさせるのではなく、むしろ、安全のために誰でも受けられるようにすることが必要である。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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