人間の尊厳とは何か、そのことを考える上で代表されるのはハンナ・アレントの“人間の条件”だ。
仕事・労働・活動の中で、マルクスが最も“労働”をメインとした“マルクス主義”をハンナは批判し、三つの基本的な人間の活動力(仕事・労働・活動)の中で、唯一人間的なものは“活動”であると述べた。
なぜなら、仕事・労働は生命維持と密接に関係しているので、人間だけでなく他の生物も共通して行っているのに対し、活動は多様性に富んでいて直接的には生命維持とかかわらないので、より人間的な行動だからだ。
このようにハンナが述べた人間の条件を、太田先生は「多様性かつ平等で個人を表現できること」と要約した。
このことから、人間の尊厳は、憲法二十五条の生存権
“すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。”
よりも、憲法十一条
“国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。”
憲法十三条
“すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。”
といった基本的人権の尊重と重なると考える。
よって、店員の“人間の尊厳”が保たれている状態とは、店員である前に一人の人間であるので客と店員の立場関係が平等であり、「郷に入っては郷に従え」ではないが客が店側の行動やきまりを尊重できることだと考える。
だからこそ、横柄な態度は“平等さ”を欠き、自分の価値観を押し付けるような理不尽な要求は“多様性”を認めていないという点で“人間の尊厳”を侵しているのだ。
これまでのことを踏まえて、これからは「クレームと苦情の違い」や「どのようなクレームがあったか」、「客と店員の立場関係の認識」などをアンケートから読み取っていきたい。