Ⅰはじめに
学校の教育の現場において特別活動は、「よりよい人間関係の形成」を育てる授業としてなくてはならない教科の一つであると言える。また、その内容が道徳と結びついている。特別活動と道徳が深く密接している点として、「総合的な学習の時間及び特別活動における道徳教育と密接に関連を図りながら、計画的、発展的な指導によってこれを補充、深化、総合し、道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め、道徳的実践力を育成するもの」という目標からも見られる。つまり日本においては、道徳の時間などに、資料や読み物を通して考えてたり話し合ったりしたことを、特別活動の学級活動や集団活動で実践して振り返り、「なすことにより学ぶ」道筋が成り立っていることがわかる。
では、外国ではこのような特別活動・道徳の取り組み、指導方法はどういったものだろうか。日本を基準として示唆していこうと考える。
Ⅱ研究内容
主に、教育の先進国といえる「フィンランド」に注目し、日本の特別活動の目標や内容などを比較、考察する。
なお、上記に挙げたフィンランドは「OECD学習到達度調査(PISA)」という国際的な生徒の学習到達度調査のことで、主に「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」によるテストの結果が平均的に高かったため、取り上げることとした。
日本におけるPISAの順位は2012年度において「数学的リテラシー」…7位、「読解力」…4位、「科学的リテラシー」…4位であった。
Ⅲ研究結果
まず、フィンランドの国を挙げての教育に対する考え方に注目する。フィンランドは7歳〜16歳までが義務教育であり、授業料、通学時の交通機関、給食、教科書や学用品等が全て無償化されている。また、学級は20人以下でPISAを実施した国々の中で最も年間の授業数が少ない。すべての教師を大学院で養成し修士号取得を義務とし優秀な人材が集まるため、社会的地位・信頼が高い。このように大学院での教師を専門とした養成をおこなっているのはヨーロッパの中でフィンランドのみである。
教育の理念としては、「社会主義的学習概念」をあげている。つまり、知識を教え込むのみならず、その知識を自分のものとし、社会進出時にどのように生かすか、使いこなせるか、自ら追求していく教育を行っていることが考えられる。
結果的に述べると、フィンランドには「特別活動」という授業は存在しない。しかし、「アヤトゥス・カルタ」という「マインドマップ形式」のノート手法が国語の授業で取り上げられていた。マインドマップ形式とは、連想ゲームのようにあるメインテーマから考えられる事柄を次々と地図のように書き足していく脳の思考を引き出す技法である。これにより、思考が整理され、記憶力が高まることはもちろん、「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」が飛躍的に向上するという。このマインドマップにより、子供達の「道徳的価値」が養われているのではないかと感じた。
Ⅳまとめ
今回はフィンランドに注目したが「特別活動」における資料が僅少であり、まだまだ研究の余地があった。しかし、教育に対する理念や考え方などを知るきっかけにもなり、多くの学びがあった。さらにフィンランドの教育について研究していくとともに、他国における「特別活動」の指導法についても取り上げていきたいと考える。
Ⅴ引用文献
阿部 敬信(2015),「小学校の教育課程における特別活動の意義と課題」別府大学短期大学部紀要
秋山 麗子(2014),「特別活動を中心にした小学校の学級集団形成に関する研究」関西学院大学教育学論究
トニー・ブザン著・近田美季子監訳(2008),「マインドマップ超入門」ディスカバー・トゥィワン
藤村宜之、鈴木豪(2015)「フィンランドの児童の思考に影響を及ぼす環境要因の検討 : フィンランドの教師の授業観の分析」東京大学大学院教育学研究科紀要
米澤 利明(2010)「求められる学力と教員養成―フィンランドとの比較を通して―」教育デザイン研究
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1344310.htm
https://www.tfu.ac.jp/liaison/edu/navi_PDF/navi06-03.pdf
http://www.ne.jp/asahi/harmas/biocosmos/finland.html