環境としての人間ー 家庭と学校ー夏休みにおこなったこと

春学期に引き続き、本を読んで知識を深めること、友人へのインタビューに努めた。

文献を参考にしながらインタビューの質問を考えたり、インタビューの回答と文献を照らし合わせたりした。

まず、インタビューの内容をまとめておきたい。()内は、質問事項、回答を受けての感想である。

友人をAさんとする。

・小学生の頃、父親の仕事の都合上で海外で2年間過ごしている。日本人学校に通っていた。予め帰国すると分かっていたため、海外での暮らしに、あまり抵抗はなかったそう。

・英語も公用語、学校ではレベル別に分けられた英語の授業もあったらしい。海外に行く前に、単に入会したらもらえるぬいぐるみが欲しいがために始めた英語教室に通い続けたこと。お父さんも英語を話すことができる。(幼い頃から、これらの英語との密接なつながりが、Aさんの英語力へ強く影響しているのではないかと考える。)

・海外では、夏に近所の友だちとプールで遊んだが、友だちというより家族と過ごす時間の方が多かったそうだ。

・(習い事は?)今までの習い事は英語教室と太鼓の2つだけ。(思いの外、少ないという印象を受けた。)兄弟揃って自分のやりたい事を少しやっただけで、あとは自由に遊んだり自分で勉強したりしていた。Aさんの始めた英語教室に関しても、お母さんは無理やりではなく、やりたいというものをやらせるようにしていた。お父さんも海外に行くかもと思っていたので丁度良いと感じたぐらいだったそう(親が習い事をさせるというより、子どもの意見を尊重していると伺える。)

・(勉強しなさいと言わない代わりに何か他の言葉がけはあったか。)「宿題した?」くらい。兄弟がいて、比べられることがあったから負けたくなくて自分から進んで勉強したと思う。(兄弟で競争することで、自ら勉強する姿勢ができいる。「勉強しなさい」「宿題しなさい」など叱る様子もあまり見受けられないように感じる。)

・(お手伝いはどんなことをしていたか?また、お手伝いを継続するために心がけていたことはあるか。)

お皿洗い・お風呂掃除・洗濯物たたみ・掃除機がけ等。手伝うとお小遣いが貯まって、その合計ポイントで月末にまとめてお小遣いをもらっていた。心がけは特にないが、小さい頃から自分で何かに取り組み、その代わりにお金をもらうといった、社会の仕組みを学んでいたのではないかと気づいた。(お手伝いをさせ、それをどう続けるようにするか工夫は大切だと思う。月ごとにポイントが貯まる工夫は、楽しみながら、また達成感も実感できる。Aさん自身、社会の仕組みを学んでいたことに気づいていて、その通りだと思った。)

・(お父さん、お母さんが何かに打ち込んでいた事はあったか?また、それに影響されて、自分んも好きになった事はあったか?)お父さんは反面教師だったかもしれない。お母さんは料理をしたり、ミシンをしたり結構家庭的なことをするのが好きそうだった。だから、お菓子作りや手芸をするのが好きになった。(Aさんの家庭的、器用なところはお母さんからの影響もあると分かった。子どもは親を見て育つともいえる。一方、見習いたくないなと思うことも、自分はこうなりたくない等、ある意味自分を変えるきっかけになり得るとも知った。)

 

伸びる子どもが育つ家庭環境・子育てとは …

文献やインタビューから考察する。

生活面

ある一冊の本で、アメリカ人のダイアナ・バウムリンド博士による「子育てスタイル」が紹介されていた。子育てを民主的タイプ、許容タイプ、独裁・権威主義タイプ、無関心タイプの4つの子育てスタイルに分けられている。民主的タイプは、子どもに対する受容度・サポート度と子どもへの要求度・コントロール度が高い。民主的タイプで育つ子どもは、社会的スキルや自尊感情が高く、優秀な学力、情緒の安定しやすいといった調査結果があるそうだ。民主的タイプの特性には、子どもの行動や達成感に関する親の期待度が高く、親が子どもの指導・監督する程度が強いことから、独裁・権力主義タイプにも当てはまる。だが、独裁・権力主義タイプに加えて、子どもに関するきまりや要求を決める際、子どもの意見や気持ちに耳を傾け、柔軟な姿勢でそれらを取り入れるということが特性のポイントである。日常生活における言動が、親だけ子どもだけの一方通行ではなく、親と子の双方な関係が大事だと改めて気づいた。どのタイプに比較的当てはまるか考え、バランスを保てるように、親は接し方を変えなくてはならないのかもしれない。  親が子どもの才能を望んでさせる一つに習い事がある。最終的な決定は「取り組む」子どもにある。本当に子どもがやってみたい、子どもの意欲が育てられる環境を整えることが親の役目である。  お手伝いに関して、ただやらせる、いつもお金を渡すだけでなく、家の人の役に立った、喜んでもらえたという実感が大切である。  食習慣も家族の絆を深める上で、とても重要である。家族みんなで囲む食事、語り合うことで、疲れがとれたり、変化に気付けたりする。幼い頃に、様々な味に親しむことも、好き嫌いをせずに何でも食べる子になるともいえる。  おじいちゃん・おばあちゃんがいることで親に余裕がもてる。兄弟がいることで、学校の悩みが打ち消される、人間関係を知る大事な勉強になり得る。  家族の良さや在り方を見直し、効果的でより良い家族との時間、関わり方を考えていかなければならないと思う。

勉強・学習面

勉強が面白い、もっと勉強したい、やればできるといった、勉強や学習に対する意欲や認識を変えることが学力向上につながる。しかし、成績を上げて親を喜ばせるため、宿題をしないとお母さんに叱られるから等、親の配慮や親との良い関係が目的となってはいないか。また、親も子どもへの強い期待あるいは強制的になっていないか。楽しさのない勉強は、単にこなしているにすぎず、長続きしない。「好きこそものの上手なれ」ということわざにある通り、好きな事、得意な科目ほど楽しく、頭にも入りやすい。勉強をやらされている感を子どもに持たせるより、「学ぶことは楽しい」と大人が伝えていく必要がある。読んだ本のほどんどに、「家庭の雰囲気・親自身が変わること」と述べられていた。子どもは親の言葉より「行動」で伝えることこそ、最も説得力があると分かった。親が家庭教師のようにつきっきりで勉強を教えなくても、勉強に意欲が持てるようになるとも知った。資格取得を目指した勉強、料理、ガーデニング、読書等の趣味に打ち込んで、楽しそうに勉強している姿を見せて示すことが大切である。たしかに、真剣に取り組む親の様子から影響を受け、子どもにも打ち込む姿勢が身につくと共感できる。しかし、例えば料理と学校の宿題とでは取り組む対象が異なり、集中力の継続できない、勉強とは別の事に気が散ってしまうともいえるだろう。そこで、友人Aさんのような兄弟、競争相手がいることでやる気につながると考えられる。もっとよくなりたい、一番になりたいと思う気持ち、競争意識も家庭学習をする上で良い要素だと思う。極端な偏見はせずに兄弟で競争させる、何分で解けるかなど時間との競争を与える、勉強時間を記録させて昨日の自分と比較させる等の競争心も、集中力を高めるといえる。同時に、自信を持たせることが大切である。子どもの意見を聞く、成果に褒める等の接し方、言葉がけによる違いも、子どもが自信を持てるか持てないかに関わってくる。「あなたは頭が悪いのだから、人一倍勉強しなくてはだめよ。」と叱ってばかりでは、プライドが否定され、頑張れる気は起きない。  Aさんお母さんは「宿題した?」と聞くくらいで、学校の宿題・勉強がノルマであったことが分かった。勉強嫌いになりにくく、基礎的な学力がきちんと身につく。  幼少期での玩具、読み聞かせ、遊び、小中学生でのリビング学習にも効果があると知った。  勉強面での集中力や意欲も、日頃の生活習慣で養われていくと考えられる。

 

反省点・課題

夏休みには、文献の要約が中心に取り組んだ。やはり、実践的な面には届かず、情報が少ないと感じられる。文献を再度まとめる事はもちろん、インタビュー調査は今後進めていく必要性を感じる。また、秋学期には、家庭と学校の「学校」に関しても、調査を始めなくてはならない。

 

参考文献

・子どもが育つ条件ー家族心理学から考えるー 著/柏木恵子 (岩波新書)

・勉強ができる子の育て方 著/江藤真紀(株 ディスカバァー・トゥエンティワン)

・子どものヤル気にさせる 親はここが違う! 著/松永暢史 (株式会社グラフ社)

・自立した子に育てる 著/中山み登り (朝日メディアインターナショナル株式会社)

・DAN教授の家族のこころゼミ 著/団士郎教授 校成出版社)

・「子どもの力」を信じて、伸ばす 著/中村佳子(三笠書房)

・海外で育つ子どもの心理と教育 著/栗原祐司 森真佐子(金子書房)

〔新装版]子どものほめ方・叱り方 伸びる力が育つ44のヒント 著/浜尾実(PHP研究所)

これらの文献は今後も参考にしていく。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。