教育行政学ノート(2)子どもは何故学校にいくのか

 教育行政学は、通常、義務教育、あるいは「教育権」から入る。しかし、教育学としての教育行政学の構想のために、もうひとつ前の問いから入ろう。義務教育とか、教育権という概念は、やはり、教育の外からみている、あるいは外部的存在である。そこで、問いは次のようになる。

Q 我々は、子どもたちは、何故学校に行くのか? 現在の大きな学校教育上の問題である「不登校」を考察するとき、「何故学校に行かないのか」「何故学校に行けないのか」という問いをたてて、答えを見いだそうとする。しかし、不登校は、通常前の段階とて登校していた事実がある。学校に行っていたのに、行かなくなる、あるいは行けなくなるわけである。したがって、まずは、学校に行っていた時期の「行っていた理由」をきちんと理解しておくことが必要だろう。不登校は、その「学校に行っていた理由」が揺らいだ、あるいは消えてしまったが、その原因であると考えられる。

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イギリスの若者がメンタルヘルスの改善を求めて活動

 イギリスの10代の若者たちが、グループを作って、メンタル・ヘルスを必要としている若者へのサポートを、確実に実行させるための働きかけをしたという記事の紹介です。Mental health The students who helped themselves when support was too slow comingというThe Guardian2019.2.12の記事で、作者はLouise Tickleです。

 イギリス全土かどうかはわかりませんが、ここで紹介されている地域は、Cumbriaという地方で、元々医療・福祉体制が遅れていると思われます。イギリスに限らず、先進国のほとんどでは、若者たちは、試験競争にさらされ、常に誰かと比較され、いい評価をえないと上級への進学に不利になり、人生そのものがやりにくくなるというストレスをかかえながら生きることを余儀なくされます。もちろん、そのことによって、誰もが精神的な疾患をかかえるわけではありませんが、どこでもサポートを必要とする若者が増加しています。それだけではなく、この記事では、治療を申請したのに、ウェイティング・リストに載せられて、3カ月も待たされ、そのうちに、すっかり参ってしまった若者が紹介されています。彼女はそのために学校にいくことができなくなりました。いろいろなことを真剣に受けとめながら生活していれば、誰でもそうした危機に陥る危険があると、彼女は述べています。

 そんななかで、何人かの若者が集まって、We Willというグループを作り、精神的な問題を抱えている若者に、サポートをするように働きかける活動を始めます。集会を開き、そこで強調されたことは、今の若者が生きている世の中は、古い世代が若者だったときとは違うのだ、ということです。まずは試験の圧力、そして、ソーシャル・メディアの中毒的な関わりからくるストレスです。

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教育行政学ノート(1)教育学と教育行政学

大学での講義は、新年度が最後になる。教育行政学も当然最後だが、テキストをかなり書き直したいと考え、ノートという形で書きためていきたい。最も、新年度には間に合わないので、これまでのテキストと併用する予定である。


1 教育行政学のように、ふたつの学問領域が併記されている場合、どちらの領域に属する学問なのかが問題となる。教育学として、行政分野を扱うのか、行政学の対象領域が教育であるのか。これは単なる言葉の遊びではなく、学問の性格を決めるほどの重要性をもっている。 教育学の分野として、行政の教育的あり方を追求する学問と考えるならば、制度としての教育、あるいは学校の管理・運営・行政が、教育者や学習者の活動を促進するようなあり方を考えることが課題となる。他方、行政学としての対象が教育であるならば、それぞれの対象の固有性よりは、行政としての効率性、有効性のありかたを課題とするだろう。 例をあげてその違いを考えてみよう。

Q1 教科書を選ぶのは誰がよいか。日々の教育計画を立案するのは誰がよいか。

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道徳教育教材分析を始めるにあたって

 私自身は、道徳教育を「教科」として、あるいは毎週特定の時間を使った「特設道徳」は必要だと思っていない。1958年に、道徳が時間設定されたときに起きた論争でいえば、道徳は教育全体のなかで行われるもので、教科としては、国語や社会のなかで、そして広く学校行事などで行われるものだと考えている。さあこれから道徳を勉強しましょう、などといって、道徳が身につくとは思えないのである。

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