ゴーン氏脱出と日本政府の対応

 単に年末年始だったからというのではないように思われる。なんとも、日本政府の反応が鈍いのだ。これは、海外メディアでも指摘されている。とにかく、日本での法的拘束を受けていて、海外渡航を禁じられている被疑者が、無断で出国し、かつ、これから日本と闘うなどと宣言しているにもかかわらず、政府としての見解をまったく出していない。少なくとも、検察は、公式表明ができるはずであるし、また、出入国を管理している当局は、これが犯罪であると、「世界に向けて」発信すべきものだろうと思う。これから、確実にゴーン氏は情報戦をしかけてくるし、また、日本の司法に対する批判は国内外に強い(私も一部批判的だ)のだから、対応を間違えれば、日本の司法の評価はどんどん低下していかざるをえない。
 しかし、何故か政府は何も語っていない。
 だからか、日本政府にとって、ゴーン氏の逃亡は都合がいいことだったのではないか、ひょっとして、助けていたかも知れない、などというコメントもある。 “ゴーン氏脱出と日本政府の対応” の続きを読む

ネルソンスのニューイヤーコンサート

 恒例のニューイヤーコンサートを聴いた。
 初登場のネルソンスが独特の服装で指揮をして、ときに踊るように、また、わずかな指先だけの合図を送ったり、はたまたオケに委ねたり、多様な指揮ぶりを見せてくれた。最初のインタビューで10年間のウィーンフィルとの仕事があったので、練習などがやりやすかったと語っていたように、相互の信頼が深いことが感じられた。ラトビア出身だから、ウィーン音楽をバックボーンに育った人ではない。ウィーンの民族音楽ともいうべきウィンナワルツを指揮することは、決してやさしくないが、小沢とは違って、ウィーン流にやろうとする姿勢が明確だったように思う。小沢は、ウィーン方言ともいうべき慣習は、ほとんど無視して、楽譜に書いてあるとおりにやるのだという指揮をして、ウィーンフィルを怒らせてしまったが、若いころから国際的に活躍しているし、また、なんといってもヨーロッパ出身なので、小沢とは違うのだろう。(ウィーン以外にいけば、小沢流は多数派だが)
 しかし、それでも、やはり、違和感が感じられるところが散見された。 “ネルソンスのニューイヤーコンサート” の続きを読む

ナルシスト国家になりつつある日本

 12月29日付けで、渡邊裕子氏(ニューヨーク在住)執筆の「メガネ禁止、伊藤詩織さん、小泉環境相…2019年海外メディアは日本をどう報じたか」という非常に優れた文章が掲載されている。ぜひ多くの人に読んでほしいと思う。
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/メガネ禁止、伊藤詩織さん、小泉環境相…2019年海外メディアは日本をどう報じたか/ar-BBYqC3j?ocid=spartandhp

 ただ、全面的に賛成なわけではなく、より多面的な見方が必要であると感じる部分もあるので、そういう点も含めて紹介しよう。
 執筆の基本姿勢として、日本に帰国するたびに、「日本はすごい」と外国人からみられていることを紹介するテレビ番組が増えたことに驚いている。日本人は、どう見られているかを気にするのに、日本のメディアしか見ない人が圧倒的である。外国の報道をみればわかるのだが、かなり辛口に言われることが多くなっているのだ。こうした観点から、辛口に論評されていることを、外国のメディアによって、いくつか紹介している文章である。
 最初に、あるジョークが紹介されている。

ある教授が、「象についてのレポートを書きなさい」という宿題を出した。ドイツ人は「象の存在についての哲学的考察」、アメリカ人は「象を使ってできるビジネス」、中国人は「象の料理の仕方」、フランス人は「象の性生活について」というレポートを書いてきた。日本人は?というと、「日本人は象をどう見ているか。象は日本人をどう見ているか」だ……というオチだった。 “ナルシスト国家になりつつある日本” の続きを読む