全盲の白鳥さんと美術館を訪れて鑑賞するという話である。
作者を始め、何人かが、一緒に、あるいは交代で、白鳥さんに付き添い(アテンドという表現が用いられている)美術品について、白鳥さんに説明し、白鳥さんが質問して、更に答えるというやり取りが書かれている。読み始めると、すぐに、実際に理解が深まっていくのは、説明を受ける白鳥さんというよりは、説明しているほうだということが分かってくる。そして、普段何気なくみている、あるいは見落としていることに気づき、更に違う見方も出てきて、理解が深くなることを実感する、そういう話である。もちろん、白鳥さんは、もちろん受けた解説とやり取りで、自分なりのイメージを形成しているのだろうが、その厳密な姿は、解説者たちにもわからないし、読者にもわからない。そして、近くの美術館だけではなく、遠くまで出かけて、寺の仏像なども同じように鑑賞していく。具体的には、いろいろな作品のやり取りが書かれているので、興味のある人はぜひ実際に読んでほしいが、晴眼者の認識が、全盲の白鳥さんとのやり取りで、深化したり、訂正されるのは、やはり、なるほどと思わせる。