大谷翔平と佐々木朗希

 大谷翔平と佐々木朗希がまったく逆の様相で話題をよんでいる。佐々木朗希は、メジャー挑戦した時点で、日本では多くの批判があり、日本できちんと活躍できなかった選手がアメリカのメジャーで通用するわけがない、そのうち怪我して休むだろうというような批判が主だった。そして、現時点ではその通りになっている。看板の160キロを超える速球はまったく影を潜め、コントロールも悪い。何度目かのマイナーでの登板の映像をみたが、ほとんどの速球が大きく右にそれてしまい完全なボールになっていた。メジャーのボールはすべるというが、いまの時点で慣れていないわけではないだろう。あれでは、メジャーで通用するようになるためには、基礎体力からの改造が必要なのではないかと感じた。
 すくなくとも日本では、大きな力を発揮していたのだから、自分なりの自信があったのだろうが、コーチなどの助言にはあまり耳を傾けなかったという。その結果として、強い身体をつくるためのトレーニングをとくに嫌っていたというのだ。それは、入団当時とアメリカにいった当時の体つきをみれば、ほとんど変わらないようにしかみえない点に現われている。大谷翔平は、高校時代、日ハム時代、そしてメジャーでの活躍後の体つきはまったくちがっている。力感溢れる身体になっていることが誰の目にも明らかだろう。関連の専門家に積極的にアドバイスを求め、それによって食事内容を改善し、トレーニング内容を決めて確実に実行した結果のようだ。それに対して、佐々木は、身体に痛みがでるとすぐに休むというのは、日本でもアメリカでも変わらない。
 他方、大谷翔平は、まったく違うのだが、そのことによって、現在大きな試練に立たされているようだ。大谷翔平は、相当体調が悪くても、試合に出場するという強い意志を貫いて、監督も説得してしまう。そして、この間、体調が悪かったにもかかわらず、試合に出続け、結局、医師によるストップがかかってしまった。ロバーツ監督は、休ませようとしたが、翔平が出るというので出場させた、というようなことが、今回だけではなく、いままでに何度かあった。昨年のワールドシリーズで肩の脱臼があったときにも、休まなかった。
 しかし、こういうことをやっていると、結局選手寿命を短くしてしまうし、チームにも迷惑をかけるのではないかと思うのである。今年は、昨年のような活躍はできない、と私は最初から思っていた。その理由は簡単で、結婚して家庭をもち、子どもが生れたからである。それまでの大谷翔平は、生活すべてを野球に注ぎ、練習と必要な食事と睡眠以外のことをほとんどやっていなかったといわれている。ニューヨーク遠征のときに、ニューヨーク見物など一切せず、ホテルにこもって、寝ていたというのは、大きな話題になった。そういうストイックな生活によって、二刀流という誰にもまねのできないことをやってのけているわけだ。しかし、子どもができれば、そうはいかない。子どもの相手は好きなようだし、おそらく、そのことによって必要な睡眠が削られているにちがいない。とすれば、昨年のような活躍はできないという予想になったわけだ。そして、責任感の強さからくる、体調がわるくても出場ということで、結局、今回倒れてしまったようだ。監督その他の経営陣の問題もある。フリーマンは大谷翔平を休ませるぜきだ、と監督に進言していたようだが、監督も、定期的に大谷を休ませる必要があったのだ。最終決定権は監督になるはずなのに、疲労があきらかにたまっている大谷を、ずっと使い続けていたのは、私には信じられなかった。まだまだ大谷翔平については、予期せぬことが起きそうだ。心配である。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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